Season2
name
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
プレゼントマイクのアナウンスの声と共に皆が騎馬を崩していった。
轟「クッソ...」
焦凍くんが騎馬から飛び降りたのを確認して私達も騎馬を崩し、焦凍くんを見ると、悔しそうに表情を顰める焦凍くんがいた。
あの時、焦凍くんは間違いなく炎を出そうとしてた。
けど、この様子だと多分無意識。
つまり緑谷が、思わず炎を出しまうほどに焦凍くんを追い詰めたってことだ。不本意に放たれた左の炎。焦凍くんの今の心情が穏やかでは無いのは間違いない。
マイク「んじゃあ早速上位4チーム見て見ようか!1位轟チーム!!」
八百万「ハァ、勝ちはしましたけど薄氷を踏む思いでしたわ」
飯田「すまない、俺のせいで迷惑をかけた...」
八百万「そんなこと..飯田さんがいなければ私達の勝利はなかったですわ」
マイク「2位爆豪チーム!」
芦戸「あー、もう少しだったのに...」
瀬呂「まあ2位なら上々だって、結果オーライ」
切島「そんなこと思うかよ、あいつが」
爆豪「クソぉー!!!!」
マイク「3位!鉄..あれ?心操チーム?!そして、4位!緑谷チーム!!」
ずっと3位をキープしてた鉄哲チームが気づくと圏外になっていて代わりに3位に組み込んだのは心操という、人のチーム。そのチームには尾白と青山もいた。
そして、1000万ポイントを取られて圏外に落ちたと思っていた緑谷チームは最後に焦凍くんから70ポイントのはちまきを取った際に、うちのチームのポイントのはちまきをダークシャドウが奪い取っていて緑谷チームがなんとか射程圏内に潜り込んだようだ。
轟「(攻撃には使わねぇ、そう決めたはずなのに...気圧された)」
焦凍くんは自分の左手を見つめ何か思っているかと思ったら今度は力いっぱい拳を握った。
轟「いけねぇ..これじゃ、親父の思う通りじゃねぇか..」
戸惑いや焦り、そして強い怒りの入り混じった焦凍くんの様子に見ていられなくなりたまらず声をかけた。
『...轟くん、ご飯食べに行こ』
轟「.......先行ってろ」
『あ、うん...わかった』
焦凍くんは1人でどこかに歩いて行ってしまった。
『焦凍くん....』
離れていく背中を見ることしか出来ない自分。それこそが今の私と焦凍くんの距離なんだと実感させられた。
芦戸「風舞ー!ごはん食べに行こう!」
焦凍くんを見ているところにふと名前を呼ばれ振り返ると女子たちが集まって食堂に行くところに三奈が私を呼んだようだ。
『あ、うん。でもトイレ行ってから行くから先に行っててくれる?』
芦戸「わかった~!」
麗日「莉紗ちゃんの席も取っとくね~」
『ありがと』
皆とそう話して私はトイレに向かった。トイレはまだ混む前だったようですんなりと入れた。個室にこもり、頭を抱えた。
焦凍くんが何を思っていたかはわかる。けど、何て言葉をかけていいのかわからない。
そもそも私に言葉をかけられることを焦凍くんは望んでいないかもしれない。
迷いのような、怒りのような、複雑な思いが絡み合った焦凍くんの様子に私の頭の中もぐるぐると色々な思いが混ざり合った。
そっとしてあげたい気持ち..
放っておけない気持ち...
力になってあげたい気持ち..
そして、頼ってほしい気持ち...
結局、今自分がどうすべきかなんて答えは考えたところで出てくるはずもなくてまずは、思い切って焦凍くんと話をしてみようと思いトイレを飛び出した。
────────
『どこ行ったかな...』
轟を探し回る莉紗。
目立つはずの紅白頭は見当たらず女子たちに用事を思い出したから適当におにぎりで済ませることを伝える為、食堂に行った。食堂内を探すも轟はおらず、昼休憩で誰もいないバックヤードにやってきた。
するとそこに爆豪が何故か立っていた。
『爆豪?』
爆豪が珍しく慌てて近づいてきたと思ったら、口を手で塞がれたもんだから何なんだと怪訝そうに爆豪を見上げる莉紗。
爆豪「静かにしねぇとぶっ殺す」
『..........』
何が何だかよくわからないがとりあえず、頷くと手を離されたその時...
「話しって、何...?」
『!!(この声、緑谷...?誰と話してるんだろう..)』
緑谷「早くしないと..食堂すごい混みそうだし」
轟「気圧された」
『!?(焦凍くん...?)』
自分たちがいる場所を曲がった所に轟と緑谷が話しているのを知った莉紗も爆豪と一緒に静かに話を聞いた。
轟「自分(テメェ)の制約を破っちまうほどによ」
緑谷「..........」
轟「飯田も八百万も、常闇も麗日も...感じてなかった。最後の場面、あの場で俺と...おそらく風舞も気圧された。本気のオールマイトを身近で経験した俺らだけ」
『(確かに...何か、今まで感じたことのない何かを緑谷に感じたのは事実...)』
緑谷「それ..つまり、どういう」
轟「お前に、同様の何かを感じたってことだ」
緑谷「?!」
轟「緑谷、お前....」
緑谷「.........」
『..............』
轟「オールマイトの隠し子かなんかか?」
...............。
緑谷「...え?」
『(........このクソシリアスな場面で、そのレベルの天然ぶっこんでくるのは揺らがないな焦凍くん)』
あまりの衝撃的な発言に莉紗は思わず力が抜け壁に背を預け座り込んでしまった。
轟「どうなんだ」
緑谷「え、や!違うよ!それは..あ、って言ってももしホントに隠し子でも違うっていうから、納得しないと思うけど..でもそんなんじゃなくて!」
轟「そんなんじゃなくて..って言い方は、少なくとも何かしら言えねぇ繋がりがあるってことだな」
緑谷「...........」
轟「俺の親父はエンデヴァー。知ってるよな?万年No.2のヒーロー。
お前がNo.1の何かを持ってるなら、俺は..なおさら勝たなきゃいけねぇ。
親父は極めて上昇志向の強い奴だ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、それだけに生ける伝説のオールマイトが目障りだったらしい。
自分ではオールマイトを超えられねぇ親父は次の策に出た」
緑谷「何の話?轟君..?僕に一体何を言いたいんだ?」
轟「個性婚、知ってるよな?超常が起きてから第2,第3世代間で問題になってたやつ。
自身の個性をより強化して子供に継がせるためだけに配偶者を選び結婚を強いる倫理感の欠落した前時代的発想。
実績と金だけはある男だ。
親父は母の親族を丸め込み、母の個性を手に入れた。俺をオールマイト以上のヒーローに育てあげることで、自身の欲求を満たそうってこった」
緑谷「?!」
『(焦凍くん、何でわざわざ自分のこと緑谷に...?)』
轟「鬱陶しい...そんなクズの道具にはならねぇ。
...記憶の中の母は、いつも泣いてる。
お前の左側が醜いと、母は俺に煮え湯を浴びせた」
自分の左顔面の火傷を手で覆った轟。
轟「だが、奴はそれだけでは終わらなかった。俺がオールマイトを越えられなかった時の保険まで確保しようとしてやがる」
緑谷「..保険?」
轟「.....ざっと話したが、俺がお前に突っかかんのは、見返すためだ。クソ親父の個性なんかなくたって...いや、使わず1番になる事で、奴を完全否定する」
緑谷「.......」
『.........(焦凍、くん...)』
座り込んだ際に体育座りをしていた莉紗は膝を抱えて顔を埋めた。
莉紗には分かってはいたことだった。
彼のその思いを、理解していたつもりだった...
しかし、その思いが彼の無限の可能性を潰しどんどんと彼自身を追い込んでしまっていることにも気づいていた。莉紗は何ともやりきれない思いで2人のやり取りを聞いていた。
隣から向けられる視線にも気づかずに。
轟「オールマイトとの繋がり、言えねぇなら別にいい。お前がオールマイトの何であろうと、俺は右だけでお前の上を行く。時間取らせたな」
轟は緑谷に背を向け歩き出しバックヤードを出ていきながら言った。
その後を緑谷が追いかけ、轟の背中に話始めた。
緑谷「僕は!」
緑谷が話し始めると、轟は振り返りこそしなかったが歩みを止めた。
緑谷「僕はずっと助けられてきた..さっきだってそうだ。僕は、誰かに助けられてここにいる....
オールマイト、彼のようになりたい。そのためには、1番になるくらい強くなきゃいけない。君に比べたら些細な動機かもしれない。でも、僕だって負けられない。僕を助けてくれた人たちに応えるためにも...」
轟「..........」
緑谷「さっき受けた宣戦布告。改めて僕からも...僕も君に勝つ!」
轟「............」
轟は言葉を発することなく、再び緑谷に背中を向けてその場を離れた。
緑谷「と、轟くん!」
轟は名前を呼ばれ、再び足を止めた。
緑谷「聞いていいか分かんないけど。さっき言ってた、保険って..」
轟「........あいつを」
緑谷「...あいつ?」
轟「風舞莉紗」
緑谷「え、風舞さん?」
轟「あいつを、利用すること」
緑谷「え...」
轟「奴は、あいつのことも利用しようとしてる」
緑谷「...君と風舞さんって一体」
轟「幼なじみだ。俺を1番理解してる奴。あいつのことだけは利用させねぇ」
淡々と話していた先程とは違い、轟は怒気のこもった表情で今度こそその場を離れた。
そして緑谷と轟がバックヤードから離れ残された2人。
爆豪「おい、クソアマ」
『なに』
爆豪「お前、今の話し知ってたっつー面だな」
『そんなツラしてる...?』
爆豪「ああ、胸糞悪りぃツラしてやがる」
『.............』
爆豪「テメェ、轟の野郎とどういう関係だ」
『気になる?そんなこと』
爆豪「うるせぇ、気にならねェよ。くたばれや」
結局何が言いたかったのかわからない爆豪は憎まれ口だけ叩いてその場を去っていった。
『...........』
その場から去った爆豪を横目で見ると、莉紗は轟を追うためゆっくり立ち上がり走り出した。
───────
『いた』
轟が行きそうな場所を探し回りようやく見つけた莉紗。
『ご飯食べた?』
轟「いや」
こちらを見ることなく返された言葉。
感情のない声色だが拒絶は感じない。
『...大丈夫?』
轟「何がだ」
『なんかあるなら、聞くよ?』
轟「..お前が聞きたいんだろ。さっき左を使いかけたこと」
『まあ...気にはなるけど無理に聞かないよ。デリケートなことだし』
轟「デリケートか?」
『違うの?』
轟「さあな」
『使いかけた自分に怒ってる?』
轟「....わからねぇ」
『おじさまが見てるから余計に気荒立ったんでしょ』
苦笑いしながらそう問いかける莉紗。
轟「お前、気づいたか?騎馬戦の、最後...緑谷に」
『あー...うん。なんかすごい圧倒されちゃった。なんか、一瞬敵わないかもって本気で思わされるくらい..なんだろう』
先ほど緑谷との話を聞いてしまっていた為何が言いたいかはわかっているが、実際莉紗も轟と同じものを感じたことは事実な為初めて聞くふりをして自分の思ったことを正直に伝えた。
轟「....USJの時の、本気のオールマイトを思い出した」
『...あ、それだ!うん、それすごい分かる。緑谷にそういう素質があるってことかな』
轟「..............」
『....ごはん、食べに行こ?』
轟の視線がようやく莉紗を捉えた。
『そば奢ってあげるからさ。食べて、本戦...お互い頑張ろう!食べなきゃ力湧かないよ』
轟「.......ああ」
自分が彼の為に何が出来るかは正直分からない。
だが、気が荒立っている精神状態の中でも自分を突き放さず自分の言葉を聞いてくれている。
それは、不器用な彼が自分を頼ってくれている証拠だということを知っている。
だから、彼が望めば言葉を...
望まなくても、側にいよう。
彼が自分を必要としなくなる、その日まで...
私は彼を支えるために、守るためにここにいるんだから。
莉紗はそう心の中で強く決心した。
.