Season2
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2人は、ひたすらに帰路を無言で歩き続けた。
特にどこに行くとか相談したわけではないが二人の足は自然と同じ場所に向かっていた。
そう、中学の時に毎日一緒に特訓したあの場所に..
轟「あの時は...悪い」
『何で、謝るの?』
轟「ひでぇ別れ方しただろ」
『別れ方って...カップルじゃないんだから』
轟「..........」
『ショック...だったよ、そりゃ』
莉紗はぽつりぽつりと話始めた。
『だって、記憶にすらない小さい時から一緒にいて、一緒に大きくなって...一緒にいるのが当たり前だったから、会えなくなったのは寂しくて..
だから中学の時、再会できた時は嬉しかった。個性で遊んで怒られてた頃みたいにまた一緒に個性の練習ができて...楽しかったし』
轟「...........」
自分の抱えてた想いを伝えたくてどんどんボリュームの大きくなる声。
『だから、何の前触れもなく拒絶されて...何か事情があるんだって信じたいって気持ちでいっぱいだった...
何か、あるの?』
しかし、信じたいが確信のないその問いかけだけはボソッと呟く程度のボリュームになってしまった。
莉紗の問いに轟も苦悶の表情を浮かべた。
轟「......お前を、傷つけるかもしれねぇと思った」
『どうして?』
轟「中学の時、親父と鉢合わせた後...お前の事、追い出したくせに俺とお前を引き離す必要はなかったっつってた。
お前を利用しようとしてるのが、すぐわかった。
奴は、自分の目的の為なら手段を問わねぇ。
俺の知らねぇ所でまた莉紗が傷つけられるかも...と思って。お前があいつに傷つけられる前にお前から離れた」
轟はあえて、"個性婚"のキーワードは出さなかった。
『そんなん、私の為に焦凍くんに傷つけられたら本末転倒...だけどね』
轟「.....悪りぃ。お前の為に関わるべきじゃないって思っても、やっぱ近くにいると側にいっちまうんだ。俺にとっても、お前は近くに居て当たり前な存在だったから」
『!!
...もう、いいよ。嫌われてるわけじゃないのが分かっただけで十分』
轟「お前の事、嫌ったことなんてねぇよ」
『.....そっか、良かった』
話を終えた二人はお互い、どこか吹っ切れた表情をしていた。
轟「行くぞ」
『ん』
──────
2年半ぶりに轟家にやってきた。
冬美「莉紗ちゃん!!久しぶりー!!」
『冬ちゃん、だぁ....』
久しぶりに会うその姿に感極まり、両手を広げた冬美に莉紗も両手を広げ飛び込んでいった。
轟「........」
二人のその光景を全く気にせず、家の中に入っていった焦凍。
冬美「さ、上がって」
『お邪魔します!』
3人で食卓を囲み、莉紗は久しぶりに食べる冬美の手料理に感激しながらいつもは食べない量の食事量を取った。
そして、夕食後は風呂に入っていけと1番風呂に入れさせられそうになった。
客のくせに1番風呂なんて気が引けたが2人していいから、と言ってくるのでお言葉に甘えることにした。
私は、湯舟につかりながら中学の時に言っていた焦凍くんの言葉を思い出していた。
轟「俺はあいつを許さねぇ。ヒーローにはなるが、戦いで左の力は使わねぇ。それが俺のあいつへの嫌がらせだ」
焦凍くんに炎の個性が出たのは4歳のときのこと。幼かったけどおじさまの喜んでる様子はよく覚えている。
冷さんはあまり喜んでいず、二人の温度差に不思議に思っていた気がする...
おじさまは、昔から焦凍くんをオールマイトを超えるヒーローにすることしか考えていない。
野望は大事だけど、いつも焦凍くんの想いも意志も全てにおいて無い物にしていた。
おじさまと冷さんの結婚...【個性婚】は結婚出来る年齢にもうそろなる私が考えても全く理解が出来なかった。
個性の為に、結婚して子供を産む。
そこに、愛はあるのか...
個性の為だけに産んだ子供の存在意義とは...
冷さんは純粋に焦凍君たちを大切にしていたけど、おじさまは正直私から見ても大切にしていたとは言えない。
焦凍くんと私は同じような家庭環境の境遇でも、その背負ってるものな重さは全く違う...
私には焦凍くんの辛さは計り知れない。
だからこそ.......
お風呂から上がり、焦凍君の部屋に戻ってきた。
焦凍くんは本を読んでいた。
『お風呂先にありがとう』
轟「ああ、じゃあ俺も入ってくる」
そう言って、轟が立ち上がると..
『焦凍君、私と組手して』
轟「..は?」
『私に付き合って』
轟「お前風呂あがったばっかなのにか?」
『うん、いいのいいの』
轟「まあ、いいけど」
轟がいつも特訓している庭に出てきた。
『本気でやってね』
轟「..ああ」
『いくよ』
どちらからともなく、動き出した。
最初に仕掛けたのは轟。
素早い先制の拳を奮ってきた。
『(さすがだ..エンデヴァー仕込みなだけある...
けど!)』
攻撃の手を緩めず攻め続けているはずなのに、なぜかどんどん防戦になっていく轟。
そして..
轟の右手が莉紗の腹部に向かってきたとき...
莉紗はその拳を自分の右手で止め轟の足を外し背負い投げをした。
轟「...っ...ハァハァ......」
『ハァハァ...』
掴んだままだった轟の手を掴み立ち上がらせた莉紗。
轟「相変わらず、組手だけは勝てねぇな」
他の人から見れば表情のあまり変わらない轟の表情も、莉紗から見れば悔しそうな表情に見えて小さく笑った。
『...必死に強くなった。追いつきたくて、守りたくて、力になりたくて。
私、ホントはさ....中学の時。焦凍くんと会わなくなった日からヒーローを目指すの一回やめたんだよ』
轟「.......え」
初めて聞く事実に轟は目を見開いた。
『1年くらいヒーロー目指すのやめて遊んだかな。テニス部のマネージャーとかやってヒーローのこと1回忘れようとした。
けど、ご近所だから姿は見かけるでしょ。焦凍くんを見る度にきっと焦凍くんはいまでもヒーローを目指してるんだろうなって考えてた。そしたら2人でヒーローになろうって言ってた子供の頃を思い出して。気づけば私はまたヒーローを目指してた....』
轟「.............」
『個性ではやっぱ焦凍くんには敵わない...個性自体が強いし、何より焦凍くんは昔から戦闘センスがスゴいから。
けど、追いつきたいから私も個性の特訓頑張った。そして、何か一つでも焦凍君を超えたくて...ずっと組手を磨いてきた』
轟「莉紗...」
『子供の頃から焦凍くんは、私の憧れで....
私のライバルなんだよ』
莉紗の真っすぐな瞳に轟は目を離せなかった。
『焦凍くんと同じ土俵で、ヒーローを目指す。
負けないよ!』
轟「.....ああ」
強い意志を感じる莉紗の言葉に、轟も小さく微笑んだ。
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