Season5
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鏡野反奈。ヒーロー名、ミラージュ。個性"鏡"
その能力は、手にした鏡で放射攻撃を反射、または吸収すること。
吸収した攻撃は任意のタイミングで解放することが出来る。
今現在分かってる事はこれだけ。
不確定要素はまだ多い。
①反射や吸収出来る威力に上限はあるのか。
②それらの動作を連続で行う場合インターバルはあるのか。
③吸収した攻撃は、いくつストックしておけるのか。
何度か行ったA・Bでの合同授業では、あまり前に出ることはなくいつもチームの後ろにいるイメージだ。仲間のピンチの時に咄嗟に前に出て相手の攻撃を反射する所しか見た事がなかった。
反射が出来るのも放射攻撃の個性を持つ相手のみで、力を発揮出来る対戦相手はかなり限られてしまう。
だけど、逆に言えば放射攻撃を持つ相手がいればそれだけで仲間のピンチから流れを十分に自分達に引き寄せる事が出来る可能性もある。
下手すれば1番化ける個性だ。
私と焦凍くんと爆豪と上鳴と常闇なんかで範囲攻撃に定評のあるメンバーが集まったチームなんかだと成す術ないかもしれない。
依然として膠着状態が続いている私と鏡野。
私が風をむやみに出しても、反射して跳ね返してくるか吸収して自分の武器にするかのどちらかだ。
攻めるにしても不確定要素を払う為にまずは、実験その1だ。
『これならどう!』
そう決意した私は、体育祭で見せた超広範囲突風を起こした。
当然向こうは鏡で吸収してくるはず。
そこにすかさず威力重視の竜巻を起こす。
『竜巻旋風陣!』
広範囲突風を吸収してる最中に飛んできた竜巻を見て、鏡野は突風の吸収をやめたと思ったらすかさず向かって来た竜巻を真正面から吸収して再び身を隠した。
不確定要素③、ストック出来るのは1つじゃない。
そして、②に関してはインターバルがあるかないかははっきりしないけど少なくとも今見ていた限りでは1秒以内に再吸収が出来る。
敵の個性を観察、分析していると外からは大きなエンジン音が聞こえる。飯田、超必出したかな。
なら、飯田はとりあえず心配いらない。
コンクリ―ト壁なら壊そうと思えば壊せるけど、隠れて鏡野の視界が狭くなってるうちに一旦仲間のヘルプでもするか。
『隠れてるだけじゃケリつかないよ!』
再び突風を起こした隙に、尾白と対峙している回原に向かって細い粘着糸を伸ばした。
尾白に果敢に攻め入ってる回原は私の粘着糸に気づかず、奴の身体に粘着糸を巻き付ける事に成功した。
それを引き上げようとしたら逆に引かれる感覚があり、自分まで引きずられそうだったから粘着糸を切ると目では見えなかったが何かがものすごい速さで移動しているのが分かった。
きっと飯田も回原を捕獲したんだ。
なら、私が現状で出来るサポートはここまでだ。
鏡野をなんとかして、早く焦凍くんや障子の所に向かわないと。
『あんたもそうだと思うけど、私も早く仲間のサポートに行きたいから。膠着状態でいるわけにいかないの。隠れるだけじゃなくて戦おうよ』
鏡野「敵いそうにもない相手と対峙した場合、仲間の足を引っ張らない為にも捕まらないように逃げて回避しているのも策の1つです」
『敵いそうにも、って...プロヒーローになったら敵いそうにもない相手と戦わなきゃいけない時だってあるんじゃない?』
鏡野「そうかもしれない。けど、戦う為にまずは手駒を集めるのも戦略の1つなので」
『手駒、ね』
私の風を吸収しまくってストック増やしてるって事?
とどのつまりそれは自発的な攻撃が出来ないからそうしてる可能性が一番高い。
『そっちの戦略をわざわざ話してくれてどうもありがとう!』
私は鏡野が隠れている壁に向かって走っていくと辺りに突風が吹いた。吹き飛ばされそうになった私はダッシュウィンドで踏ん張り壁に太目の粘着糸を粘着させ一気に縮め距離を詰め、壁に向かって拳を突き立てた。
コンクリート壁が破壊されると鏡野が吸収した私の竜巻を解放してきたようで竜巻が襲って来た。
おそらくそう来ると思っていた私は事前に後方にある柱に粘着糸巻き付けていたから、粘着糸を短くし竜巻に巻き込まれるのは回避した。
さっき吸収した私の竜巻、のはず...だけど、何かおかしい。
『威力が、上がってる?』
鏡野「私の鏡は、攻撃を吸収した後鏡の中でエネルギーを増幅させることで威力を上げて解放することが出来る」
ご丁寧に解説してくれて...。
聞けば聞くほどチートなその能力。
だけどまだ、解明出来ていない不確定要素がある。
一体どのくらいの威力まで吸収出来るのか..その上限はあるのか。
それを確かめる為に、電柱をも飛ばす勢いがあるコントロール無視の威力任せな竜巻を鏡野に向かって飛ばした。
だけど、鏡は難なくその突風を吸収した。威力の上限はないわけね。何度も言いたい。チートめ!
だけど、さっき突風の吸収を一旦やめた後に竜巻を吸収していた。
時間制限か、一回辺りの吸収容量があるのか、同時に異なる放射攻撃を吸収することが出来ないのか。
もしかして、そう思わせる為のフェイクかもしれない。
鏡野「随分力づくで攻めてくるんですね」
そう、彼女の言うように私は今この狭い空間の中。様々な形状の竜巻、範囲突風....持ちうる技や形態を次々と発して攻め立ててみる。
これだけの猛攻に対応していれば必ず現れるはず。
『見つけた!』
次々と間髪入れずに襲い掛かってくる攻撃に対して回避と吸収を行う彼女は私の手元を見ていない。
姿を現した彼女の隙。私は粘着糸を飛ばして彼女の身体に巻き付けた。
鏡野「!?」
『捕まえた』
鏡ごとぐるぐる巻きにしてやれば手も足も出ないはず。
粘着糸を引き壁にぶつけてやるとウッ..という声をあげた鏡野。
鏡野「もっと効率的に戦う慎重な人だと思ってたけど、手荒な戦い方もするんですね」
『そりゃ、なりふり構ってられない時もあるからね!』
今度は竜巻に閉じ込めて最高到達点に達した所で竜巻を解除し地面に叩きつけると気を失った鏡野。
『悪いね』
鏡野を風で浮かせ、次にどこに向かうべきか考えた。
焦凍くんの助太刀に行くべき?でも、障子は?索敵の障子が欠けるのはチームにとって大打撃だ。けど、飯田はどうしてる?
浮遊し辺りを見渡しながらどこかに進みながら自分がどう動けばいいか考えていると皮膚に生暖かい空気を感じた。
焦凍くん...?
そう思って探してみると、少し右に外れた所に炎が上がってるのが見えた。
個性から考えれば焦凍くんの炎には間違いないはず。
そっちに近づいていくと、その炎の中を歩く人の影が見えた。
だけどその影は明らかに焦凍くんじゃない。
『予想はしていたけど、予想以上に平然と炎の中を..』
氷も炎も効かないならステゴロ勝負。焦凍くんが鉄哲に敵うはずない。骨抜がまだ残っているとするなら焦凍くんが投獄されたら不利になる。鏡野は気を失っているけど、目を覚ましたら...どうする、加勢するべきか。
目を閉じて今自分がどうすべきか、考えた。
その時、遠くからエンジン音が聞こえた。
飯田「風舞くん!」
『飯田!彼女の投獄頼んだ!』
粘着糸でぐるぐる巻きにした鏡野を飯田に預けた。
飯田「任された!君は?」
『轟くんの加勢に行く!』
飯田「分かった!」
**
『とりあえず鉄哲と炎ごと竜巻に閉じ込めよう』
飯田と別れ、どう加勢するか試行錯誤しながら進む私。視界の向こうで炎が漂っていてそこから生温い空気が伝わってくる。
もうすぐそこ..竜巻を出そうと右腕を構えたその時...
『っ!熱気が...火力が、上がった?』
先ほどとは比べ物にならない程の熱い空気が流れ込んでくる。
近づけば近づくほどに息苦しくなってくる。
『この火力...おじさまと、同じ....』
近づける範囲まで近づくと、「あちぃー!」という鉄哲の声が聞こえてきた。
幼少期はまだ火力調整の出来ない焦凍くんやおじさまと特訓したり、雄英に入ってからも焦凍くんと訓練したりしてるから耐熱体質じゃない私も、多少熱さに耐性が出来てるからここまで来れたけど...。
火力が今まで見たこともないほどの熱量まで急激に上がったって事は、上げざるを得なかった...つまり追い込まれていたって事だ。
ひとまず、鉄哲を離さない事には焦凍くんも体勢を立て直せないだろうから一旦鉄哲を竜巻で離そう。
そう思って、右腕を構えると背後から今まさに繰り出そうとしていた竜巻が私に向かって来た。
すぐさま上空に浮遊して避け、竜巻が来た方に目を向けると遠くで光が反射した。
『まさか...』
鏡野「鉄哲くんの邪魔はさせません」
目を覚ましてあのぐるぐる巻きの粘着糸から脱出して飯田を振り切ってきた...?
骨抜の邪魔が入ったのかもしれない。
いや、そんな事はひとまずどうでも良い。
ここで、彼女が乱入して来ると焦凍くんの加勢に行けない。
『もう目覚ましちゃったの?』
鏡野「あんな情けない終わり方でチームの皆を負けさせるのは申し訳ないですから」
さっき散々吸収していた私の突風を飛ばしてきた鏡野。
上空に向かってダッシュウィンドを放ち避けた。
すると後方の方で炎が大きく煽られた音が聞こえた。
そうだ...!
浮遊しながら焦凍くん達の元に向かうとこの熱気の中、鏡野も当然のように追ってくる。
あわよくば焦凍くんの炎を吸収しようとか考えているかもしれない。
焦凍くん達を視界に捉えられる所まで近づき私が竜巻を出そうとすると、鏡野も私に向かって竜巻を飛ばしてきた。
『そんなにストック使って大丈夫?』
鏡野「大丈夫です。さっきたくさんストックさせてもらったんで」
私が竜巻を出すとその竜巻を吸収し、向こうも竜巻を放ってくる。
私は放たれた竜巻の回転に合わせて、再び竜巻をぶつける。
2つの竜巻の渦が1つに絡み合い更に勢いを増した。
そして、その竜巻に突風をぶつけてやると進路を変えスピードを急速に上げた。あっという間に鏡野の元に辿りつくと彼女を渦の中に巻き込み上空に放り投げた。
すぐに粘着糸を飛ばして彼女を拘束すると、彼女の腹部に拳を突き立てた。
鏡野「うっ!!...そ..そんな....」
『悪いね、威力だけだと思ったら大間違い。風の扱いなら貴方と私じゃ年季が違うから』
鏡野は悔しそうに表情を歪ませると静かに気を失った。
とは、言ったもののあれに対応されてたらさすがにやばかったけど。近くのパイプに粘着糸でくくりつけて座らせておいた。
私は再び焦凍くんの放つ炎の元に向かった。
くらくらしそうな程の燃え上がる炎。
吸う空気もまるで喉を焼くように痛い。
耐熱とはいえ....この中であの二人何分いるんだ。
ボーっとしてくる意識を何とか保ちながら、炎の中から聞こえてくる二人の会話や物音に耳を澄まし2人のいる位置を把握した。
鉄哲「どうした!!すっトロイぜ、轟ぃー!!」
轟「っ、お前も鈍くなってんぞ!」
すっトロイ?焦凍くん、まさか...動きが鈍くなってるの?
何かがきっかけで急に炎の火力が上がったから、コスチュームの冷却機能が身体にこもった熱量に追いついてない?
『焦凍くん!』
お腹から声を張り上げ焦凍くんの名前を呼んだ。
『氷結で固定して!』
焦凍くんなら多くを語らなくてもこれだけで私がどうしようとしているのか分かってくれるはず。
その期待通り、炎の中に一瞬だけ氷結が見えた。
私はその場所に向かって渾身の竜巻を放った。
炎と共に鉄哲を巻き込んだ竜巻は横に広く広がっていく。
粘着糸の粘度は熱に弱い。この熱量だと瞬間的に消えるけど、糸だけは数秒残るはず。
粘着糸を飛ばし鉄哲に巻き付け竜巻を解除するとキーンという音と共に地面に勢いよく落下した鉄哲。
鉄哲「がぁっ!!」
このまま炎の中から引きずり出して粘着糸を巻き付けようとしたその時。辺り一面炎の海だったその景色が一転。
全ての炎が焦凍くんの拳に吸収されていった。
まさか、そんなはずは....。
『赫灼...?』
炎が集約されたその拳を鉄哲に放とうとした焦凍くん。
轟「!?」
『?!』
急に足元が沈み、まさかと思い辺りを見ると骨抜がいて地面を柔化していた。焦凍くんも私も体勢を崩して地面に沈んでいく。
固められると思い足元に竜巻を出し柔化した地面から這い出て焦凍くんを助け出そうとしたその時、その時ガラガラという音が聞こえた。何かと思ったその瞬間、折れた配管が焦凍くんの後頚部に倒れてきた。
『焦凍くん!!』
その衝撃で気を失った焦凍くん。
骨抜「固める」
そうはさせない、とすぐに助け出そうとした私よりも先に飯田がやってきてマッドマンに一太刀入れた後に焦凍くんを救出した。
『飯田!』
飯田「救助が先決!!」
飯田はそう言って焦凍くんを抱えたままその場を走り出した。
私もどちらかを捕獲しよう。
骨抜は個性で粘着糸での捕獲も意味を成さない。なら、満身創痍の鉄哲の方が投獄出来る可能性はある。そう思って鉄哲に粘着糸を巻き付けた。
骨抜「鉄哲これ倒せー!!」
そう骨抜が叫ぶと鉄哲が粘着糸で拘束されたまま立ち上がると走り出し高いタワーのような建物に頭突きをした。タワーは飯田に向かって倒れていき、私はすぐに救助する為にダッシュウィンドで走り出すもその瞬間、背後から鉄哲に体当たりをされ体勢を崩した。立て直そうとするものの柔らかいものが身体に覆いかぶさった瞬間身体が身動き取れなくなってしまった。
どうやら骨抜が瞬時にタワーがあたる瞬間に柔化し、その後またすぐに解除したらしく、私も飯田もどうすることも出来なくなった。鉄哲も骨抜も最後の力を振り絞っていたのか2人共気を失っている。鏡野も気を失ったまま。ここにもう行動出来る人は誰もいない。尾白と障子は2人共無事かな。回原は飯田が投獄しに行ってくれたはずだから向こうは後、角取だけか...。
そう思っていた所に角取と障子が現れた。
角取が角で骨抜と鉄哲、そして焦凍くんを持ち上げ去っていこうとした。それはまずい...。
私は粘着糸を角取に向かって伸ばした。骨抜に粘着糸を巻き付け指で引き自分の手元に寄せた。
角取「Oh,but!マズいですネ!!」
そう言って角取は焦凍くんと鉄哲抱えて障子の触手も届かない上空まで浮遊した。
『障子、尾白は?!』
障子「投獄された!」
なら、今のカウントは1:1。
浮遊移動と言えど2人抱えた状態だと重量からかそれほど角取の移動スピードは速くなかった。歩幅のアドバンテージがある分障子なら追いつけそうだった。いや、むしろ追いつかれると思ったから角取は上空に逃げ込んで、おそらくそのままタイムアップを狙ったんだ。
個性の仕様や体格差から考えてもガチンコで角取が障子を捕獲して投獄するのも残り時間を考えると難しい。
と、なると私と飯田はここから出ることも出す事も出来ない以上、角取が焦凍くんを投獄することを優先すれば私が捕獲中の骨抜を障子に渡して障子が投獄しにいく。そうすれば2:2で引き分け。
『障子!骨抜投獄して!』
障子「だが、轟が角取に...」
『轟くんを投獄しに行くなら障子も骨抜を投獄しに行ける。反対に、障子が骨抜を投獄しに行ったなら角取も敗北を避けるために轟くんを投獄しに行かなきゃならない。それなら、悪くて引き分け。A組の負けはない。時間が余れば角取か鉄哲を捕獲出来る可能性もある』
角取「随分と卑怯な手、使いマースネ」
『空中で終了ブザー鳴るの待とうとした奴がよく言う』
角取「Sorry.テンタコル、ウィンディ!皆を負けさせるノハ、嫌デスので!」
『...こっちだって同じだよ』
そして、少しの沈黙が過ぎ終了のブザーが鳴った。
障子「飯田、風舞。大丈夫か?」
飯田「ああ、すまない..助けられなかった」
『.............』
何も出来なかったなぁ。
20分の間、私何してたんだろう。
気絶した焦凍くん達は担架で保健室に運ばれた。
私と飯田は救助ロボットによって救助された。
尾白は尾に傷が、飯田は足をねん挫したらしく2人とも保健室に行った。
観覧席に戻って来た私と障子、そしてB組の回原、角取、鏡野の5人。
障子「風舞、おつかれ。惜しかったな」
『お疲れ。惜しい、かな』
障子「最後のお前の判断は正しかった。だが、俺には思いつきもしなかった発想だ。あの状況で勝つではなく負けない選択を考えたのは」
『皆頑張ったのに、負けさせるのイヤだなって。でも...それって私だけじゃなかったよ』
勝ちが全てじゃない。鏡野も、角取も...チームを負けさせない為に力も頭も使って戦ってた。多分それはきっと骨抜も鉄哲もそうだ。
最後の力を振り絞って、チームを負けさせない為の精一杯を尽くしたんだ。
B組はB組でブラキンから講評を受け、私と障子も相澤先生の前に立った。
私の隣で相澤先生からの評価とアドバイスを受けてる障子。
相澤「そして、風舞。今日のお前は迷いが多かった。その一瞬の迷いが自分や仲間を危険にさらす事を覚えておけ」
『....はい』
指摘されたことがその通り過ぎてぐうの音も出ない私。
確かに今日は判断に迷う事が多かった。
相澤「けど、その迷いはお前の中に色んな選択肢が増えているって事でもあるんだろうが」
『え』
相澤「戦いの世界では勝つ事が全てじゃない。勝てなくても仲間や民間の人の安否を最優先にするべき時もある。そういう点で言えば最後のお前の判断は最善だった。期末でのお前の課題も克服したようだしな」
相澤先生のその言葉に、私は期末試験の最中に相澤先生に言われた言葉を思い出した。
相澤「お前にその気はなくても俺から見りゃただのイエスマンだ。
ヒーローになってもずっとあいつの側にくっついて轟のイエスマンでいるつもりか?」
相澤「期末から今日までのお前を見て、その場にあった自分の立ち位置や役割を理解した行動は取れている。とりあえず及第点ってところだ。けど、ここで満足するなよ」
期末で相澤先生に指摘されて初めて気づいた事。
自分の焦凍くんへの色んな想いのせいで知らないうちに焦凍くんのイエスマンになっていた。
だから気づけた。考えられるようになった。
自分が何をすべきで、自分がどう立ち振る舞うか。
まさかこんな風に評価してもらえると思ってなかった...。
『っ、はい』
講評が終わりそれぞれクラスの元に合流した。
第3試合でも、焦凍くんの炎の熱でカメラが壊れたことや損壊が著しかったためステージを変更するために休憩という名のインターバルが出来た。
葉隠「莉紗ちゃん、お疲れさま!惜しかったね~」
『ありがと』
何かはしたけど、チームが勝つ為に何も出来なかった。
たくさん考えたけど、その中で最善は導き出せなかった。
でも、相澤先生の言う通り。
色んな経験を経て出来る事、そして取るべき選択肢が私の中にたくさん増えた。今日はその中の1つを選択する為に迷った。
自分がどうしたら良いか分からずにいた以前とは違う。
また、課題が出来た。絶えず課題を克服し、乗り越えていく。
それが、プルスウルトラだ。
今の私は自信を持って焦凍くんに言える。
だから、焦凍くんが仮免を取ったら私も伝えるよ。
一緒にヒーローになろうって。
焦凍くんを支えられるヒーローになってみせるって。
そう心の中で1人思っている所に、すっかり傷が治っている鏡野が目に入った。
『鏡野、大丈夫?ごめんね、荒っぽく攻めって』
鏡野「あ、いえ。ヒーローの勝負に怪我は付き物です」
そう言って、にっこりと笑った鏡野。
鏡野「あの..解放した攻撃をそのまま利用されたのは初めてだったんで勉強になりました。また、戦ってくれますか?」
『もちろん、またやろうね』
骨抜「どう?ウチの反奈、中々手ごわかったっしょ?」
治癒を終え戻ってきていたらしい骨抜が、鏡野の頭に手をポンと乗せて誇らしげに聞いてきた。
『え?うん?』
ふと鏡野を見ると頬を赤くして俯いている。
あー、そういう事なのね。
回原「出たよ、柔造のリア充モード」
泡瀬「戦闘訓練の後は絶対これだもんな」
なるほど、B組公認のカップルってわけね。
芦戸「え、何々?2人そういう関係なの?!」
小森「戦闘訓練終わると骨抜。必ずうちの彼女スゴイでしょ!って反奈ちゃんの事上げまくるノコ」
芦戸「アオハル~!」
葉隠「鏡野ちゃん!今度恋バナ聞かせてよ~!」
鏡野「え、あ、あの....///」
上鳴「あーあ、推薦入学のエリート同士でカップルって。リア充中のリア充じゃん」
峰田「でもよ、うちのクラスにもいるじゃん?リア充中のリア充」
その峰田の言葉に皆の視線が私の方に向いた。
『.....何か?』
峰田「リア充ばっ..ぐぇっ!!」
言い終わる前に峰田の首根っこを粘着糸で締め上げてやった。
分かってるよ、爆発しろって言おうとしたんでしょ。
『お前を太平洋に沈めてやろうか...?』
峰田「ず、ずいまぜ~ん...」
つーか、リア充じゃねぇし。ふざけんなぶどう野郎。
いつの間にかA組とB組の一部が混じり合って騒がしくなってきた所に観覧台の移動のアナウンスが流れた。
観覧台が動くこと数分。ステージに到着し、次のチームが準備を始めた。皆がモニターが見やすいように前の方に移動していった中後方に1人残った私。
轟「莉紗」
後ろから名前を呼ばれ振り返ると焦凍くんが立っていた。
『焦凍くん、大丈夫?』
轟「ああ、もう全部治してもらった」
そう言って自分の首に手を当てたり腕をまくったりして見せる焦凍くん。
『そっか』
轟「...莉紗」
『ん?』
轟「悪かった」
突然焦凍くんの口から飛び出した謝罪の言葉。
何故私にその言葉が告げられたのか分からずに私は眉をしかめた。
『何の事?』
轟「せっかくお前がチャンス作ってくれたのに、気失っちまって」
なるほどね、私が作ったチャンスを活かせず勝てなかった事を悔やんでいるんだ。
『仕方ないでしょ、事故なんだし』
轟「あと....ありがとな」
『え?』
轟「自分の発した熱で、意識飛びそうだった。けど、お前の声で踏ん張れたから。また、助けられちまったな」
『またって...そんな助けてなくない?チーム一緒になったこと滅多にないし』
轟「戦闘訓練じゃなくても、いつも助けられてる」
『...............』
轟「そういや昔、言ってくれてたよな。助けてあげるって」
『え?』
轟「お前のおかげで前に進めたこと、昔からたくさんあったからな。
だから、ありがとな」
『っ...!』
何も出来なかったと思う私に、焦凍くんは悪いと言った。
助けられなかったと思った私に、ありがとうと言ってくれた。
助けられていたのは、前に進む背中を押してもらってたのは...私の方なのに。
焦凍くんは、自信のない私にいつも"ありがとう"の言葉をくれる。
出来なかったとくよくよしてる時間はないんだ。
くよくよ悩む時間があるなら、前を見なきゃ。
焦凍くんにも、皆にも置いて行かれないように。
『それよりさ』
轟「なんだ?」
『いつの間に赫灼習得してたの?まさか独学?』
轟「あー...あれは、わかんねぇけど。あの瞬間何故か出来た」
『.......え、たまたま?』
轟「ああ、たまたま」
天性のセンス?
それとも火事場のバカ力?
ホントに焦凍くんって....。
『....ふふ』
轟「どうした?」
『じゃあ習得のコツ、おじさまに聞いてみなきゃね。泣いて喜ぶだろうね~』
轟「...............」
突如むすっとした顔をして、その場を離れてしまった焦凍くん。
でもね、知ってるよ。
その首に、当てた左手。まんざらじゃない時の癖だよね。
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