Season5
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『みてー!こせい、だせたー!』
「スッゲー!莉紗!やるじゃん!」
『あんがと!』
目が覚めて窓の外を見るとまだ薄暗かった。ふと時計に目をやると起きるには大分早い時間だし、もう一度眠りにつくには時間が足りない。
どちらにせよ、何故か目が冴え切ってしまっている現状に二度寝の選択肢はなく身体をゆっくり起こした。
何となくスマホで動画を見たりネットサーフィンをしたりして時間を潰してから朝の準備に取り掛かった。
共有スペースに降りたけど、まだ時間が早いせいか誰もいなくて静かな空間が目の前に広がる。
ポットに湯を入れスイッチを入れ沸かしている間に自分の分の朝食を作ることにした。
出来上がった熱々の料理と温かいお茶で朝食を取りながら考える事は今朝の夢のこと。とても懐かしい夢を見ていた。
どうして今更あんな夢を見たのか分からない。どうして急にあの人の夢なんか...。
燈矢、兄...。
**
いつも焦凍くんとやってる放課後の個性の特訓。
今日は、緑谷が焦凍くんにお願いしたい事があるとかで私はトレーニングルームを借りて1人で特訓していた。
少し考え事に更けたい事もあったしちょうど良かった。
私の頭を悩ますのは個性検査の時に医者に言われた事。
"59も反応が出てるなら発現していてもおかしくないんだけれど..."
検査の結果、私の身体は既に火を扱っていてもおかしくない状態にある。
だけど実際のところ私は火を使えない。一体どういう事なんだろう。
気づいてないだけで、既に火を使う前兆はあるって事かな。
そう言えば、おばあちゃんが空気中の水分を集める事が出来てる私は熱を産み出す事は出来てるはずだって言ってた。一体私は火を出さずにどうやって熱を産生してるんだろう。
そもそも、この自然の個性はどういう原理で火を出すの?
あぁ、おばあちゃんに聞けば良かったなー。
「誰?」
誰かの声が聞こえ顔を上げると見た事のある顔が...。
『どっかで見た事...』
記憶を遡り思い出されるのは雄英体育祭の事。
『確か雄英体育祭で緑谷と戦ってた、えっと...』
心操「あぁ、名前?心操。心操人志」
『あ、それだ。確か洗脳だっけ?中々のチート個性だったからインパクトあって記憶には残ってる』
確か尾白や青山が操られたって言ってた。実際緑谷も初戦で最終的に破りはしてたけど操られてたみたいだったし中々の強個性だと思う。
心操「ヒーロー科に覚えてて貰えてんなら光栄だよ」
『謙虚だねぇ。他のヒーロー科差し置いて決勝残ったからもっと有頂天になってると思ってた』
心操「皮肉?」
『ううん、マジで。だってその個性なら優勝してても全然おかしくなかったし』
「そう?あの時は初見だったからそう見えただけで。個性がわかったらあんな風には..」
『そうなの?じゃあ個性の発動条件って何?』
て、クラスメイトでもないし仲が良いわけでもない。メリットもないのにわざわざ教えるわけない「俺の問いかけに答える」
『うわ、教えてくれた』
心操「あんたが聞いてきたんでしょ」
『いや、まあそうなんだけど。まさか本当に教えてくれるとは...。
って、問いかけに答えるだけ?え...それだけ?』
心操「それだけ」
『超チートじゃない?』
心操「そう?初見殺しにはなるけど2回目からは通用しないし」
『まあ確かにタイマン勝負だと戦術に悩むね。でもそうじゃなきゃかなり強いサポート個性じゃない?』
心操「サポート個性?」
『うん。ほら某探偵アニメのアイテムみたいな変声機とかで声真似ちゃえば個性の特質分かってても判別付かなきゃ意味ないし。こっちの陽動作戦にも幅が広がる上、敵の連携も崩せるよ』
心操「変声機...」
『奇襲をかける場面でも大いに貢献出来る個性だと思う』
心操「へぇ、さすがヒーロー科だ。俺が思い悩んでた悩みをこんなにすぐ解決に導いてくれるなんて」
『悩んでたの?』
心操「この個性でどう戦えばいいかずっと探してた」
そう話す心操の表情は悩んでいたと言うよりも何かを追い求める強い決意を秘めたような表情だった。
『そっか。じゃあ役に立てたのかな?良かったよ。体育祭の時に言ってたヒーローになるってやつ。今でも追いかけて頑張ってんだね』
心操「まあね。ずっとヴィラン向きだって言われてたこの個性でも、誰かのために使うことが出来るヒーローになれるって証明したいから」
『ヴィラン向き?』
心操「そう、悪い事し放題な個性だからずっとそう言われて来た」
今度は悔しそうな顔で話す心操。
そっか、心操は個性の事で色々と心ない事言われて来たんだ。
『それ言ったらどんな個性も悪い事出来るよ』
心操「え?」
『私の個性だって加減しなきゃいくらでも人を痛みつけることが出来るし悪用しようと思えば色々出来るよ。他のヒーロー科の皆の個性だってそう』
私の個性だけじゃない。緑谷の個性だってそうだ。爆豪の爆破も焦凍くんの半冷半燃も上鳴の放電だって、人を簡単に傷つける事ができるし一歩加減を間違えれば殺してしまうかもしれない。ヤオモモに至っては戦争兵器創造しちゃうんだから。洗脳で悪さし放題なら、響香や障子の個性は盗聴や覗き見し放題だし透の個性は不法侵入し放題だ。
『個性が善悪を決めるんじゃなくてさ、その個性をその人がどう使おうとするかが重要なんじゃない?』
心操「どう使おうとするか...」
『その個性を人の為に使いたいって思える心操は、ちゃんとヒーローだって私は思うよ』
ヒーローを目指す理由は人それぞれだ。地位や名誉の為、社会貢献の為、お金の為、家族や大切な人の為...。
だけどどんな理由であってもその根底には皆多かれ少なかれ自分以外の何かの為、と言う想いが根底にある。
どんなにヴィラン向きだと蔑まれても真っ直ぐヒーローを目指して来た心操は私達ヒーロー科と何一つ変わりない。
心操「サンキュ、風舞」
『何で私の名前、知ってるの?』
心操「あんた結構有名人じゃん。神野事件関連でも名前出てたし、体育祭でも女子唯一のベスト4だから結構話題になってたよ」
『目立ってたかー...』
普通科唯一の決勝トーナメント進出者の心操よりは影薄いと思ってたけどな。やっぱ試合数多かったからかなー。
心操「嫌なの?」
『目立つの好きじゃない』
心操「存在感派手なヒーローになろうとしてる人が何言ってんの?」
何かどっかでも言われた気がする..デジャブってやつか。
『目立たなくてもヒーローは出来るし』
心操「いや、時には目立つ事もあるでしょ」
それから少し話しをして私は寮に戻った。心操は授業が終わった後にその日空いてるトレーニング場でヒーローを目指すべく鍛錬しているらしい。
体育祭の時よりもガタイ良くなってたのはそのせいか。
ライバルはヒーロー科だけじゃないってね。油断してたら今度こそ足元救われそう。負けてられないや。
**
私は"火"の発現に関しては一旦切り離して"風"の個性での新技開発を進めることにした。
汎用性があり使い方によっては制圧力も機動力もあるこの個性を使っていく上で私の欠点であった打破力。
それを補うべく開発した旋風拳。
拳に螺旋状の風を纏わせるその技は攻撃力としては実戦において申し分なかったがどちらかと言えば貫通力に特化したもので、パワー系相手にはとても通用しそうにはなかった。
だから私は何とか打撃力を備えた技が開発出来ないかと仮免試験の後から考えていた。
そしてヒントになったのは死穢八歳會との戦い。土積との戦いで偶然出来、治崎を止める為に土壇場でやったあれ。思い返した感じ竜巻の渦を圧縮して球状にしたような感じだった。
まるで手のひらサイズの風船の中で風が他方向に乱回転していた。
その破壊力は私の想像を超えるものだった。
アレを安定発動出来るように訓練して必殺技として完成させれば弱点だった打撃力をカバー出来る。
そう考えた私は、夜な夜な1人で特訓を続けたけどそううまくは行かなかった。
『はぁ...また失敗か』
1回目はたまたま出来た、2回目はやろうと思って出来た。
だから習得自体はそれほど難しくはないと思っていたのに火事場の馬鹿力とか言うやつだったみたいで何度挑戦しても球状に圧縮することが出来ない。圧縮を試みても風船が割れるようにパンと渦が散ってしまうだけだった。
特訓は続けるけど、現状攻撃バリエーションを増やす為に"土"の個性伸ばしにシフトを変えた方が良さそうかな。
**
葉隠「ついにこの時が来たー!!ワクワクするねー!」
『透、テンション高...』
耳郎「葉隠、寒くないの?」
葉隠「めっちゃ寒ーい!」
耳郎「根性だね...」
芦戸「私も冬仕様ー!かっこいいでしょうがぁっ!!」
八百万「ええ!」
まだ冬真っ只中のこの季節。
皆のコスチュームも冬仕様になっていて、かく言う私も防寒対策に元々のコスチュームの上にフリース素材のボレロを羽織下には伸縮性のあるかつ防水、耐熱仕様の黒タイツを履くようにした。
皆でコスチュームについてワイワイと話しをしていた時。
物間「おいおい、まあ随分とたるんだ空気じゃないか。僕らを舐めているのかい?」
B組がゾロゾロとやってきてセンターでは物間が何だかごちゃごちゃ言っている。
切島「来たな!ワクワクしてんだよ!」
物間「フッ、そうかい。でも残念。波は今確実に僕らに来ているんだよ。
さあA組!!今日こそ白黒つけようか!!」
と、アホみたいに叫び始めた物間はどこからか紙を取り出して見せて来た。
物間「ねぇ見てよこのアンケート!!文化祭で取ったんだけどさあ!!A組のLIVEと僕らの超ハイクオリティ演劇どちらが良かったか!見える〜?2票差で、僕らの勝利だったんだよねぇ!!入学時から続く君達の悪目立ちが変わりつつあるのさー!」
『2票差って、ほぼ差ないし』
物間「そして今日!A組vsB組!初めての合同戦闘訓練!僕らが..ぐぉっ」
相澤「黙れ」
興奮し過ぎて狂乱してる物間を殴ろうとした一佳よりも先に相澤先生の捕縛布が物間を黙らせた。
ブラド「今回特別参加者がいます」
相澤「しょーもない姿をあまり見せないでくれ」
先生達の言葉に疑問符を浮かべる私たち。
八百万「特別参加者?」
爆豪「倒す」
上鳴「女の子?!」
鉄・切「「一緒に頑張ろぜ!」」
そして先生達の後ろから足音が聞こえ現れたのは最近見た顔だった。
『あ』
相澤「ヒーロー科編入を希望してる、普通科C組。心操人志くんだ」
緑谷「ヒーロー科に編入を希望...!!」
青山「会話すると洗脳されちゃうんだよね?」
尾白「初見殺し...」
峰田「でもよー、緑谷解いてたよな?」
緑谷「正直、マグレ破りだけどね」
サポートアイテムなのか首には相澤先生と同じ捕縛布、そして首にはマスクのようなものをつけている。
相澤「心操、一言挨拶を」
心操「心操人志です。何名かは既に体育祭とかで接したけれど拳を交えたら友達とかそんなスポーツマンシップ掲げられるような気持ちの良い人間じゃありません。俺はもう何十歩も出遅れてる。悪いけど必死です。俺は立派なヒーローになって俺の個性を人の為に使いたい。この場のみんなが越えるべき壁です。馴れ合うつもりはありません。よろしくお願いします」
心操の想像以上の気迫のこもった挨拶にみんなが拍手をした。
私もこの前会った時と全然違う心操の顔つきに思わず手を叩いた。
麗日「おぉ〜、ギラついてる!」
常闇「引き締まる」
瀬呂「初期ろきくんを見ているようだぜ」
轟「そうか?」
『あの気迫とまた違う気もするけど...』
物間「良いね、彼」
ブラド「今回はA組とB組の対抗戦!舞台はここ、運動場γの一角!双方4人、または5人組を作り1チームずつ戦って貰う!」
初めてのAB戦闘訓練にワクワクするのを隠せない様子の周囲。
取陰「4.5人1チーム?楽しそうだね」
小森「楽しそう!」
宍田「心操を加えると43名。このハンパはどう解決するんでしょうか?」
ブラド「心操は今回2回参加させる。A組チーム、B組チームそれぞれに1回ずつ。つまり5試合中2試合は5対4ないし5対5の訓練となる」
葉隠「そんな!4人が不利じゃん!」
ブラド「ほぼ経験のない心操をチームの中に組み込む方が不利だ。5人チームは数的有利も得られるが、ハンデもある。今回の状況設定は、ヴィラングループを包囲し確保に動くヒーロー!お互いがお互いをヴィランと認識しろ!4人捕まえた方が勝利となる」
ヴィラン役とヒーロー役で分けるのじゃなくてお互いがヒーローになりきり、相手をヴィランだと認識する。
小森「ヴィランも組織化してるっていうもんね」
鉄哲「シンプルで良いぜ!」
飯田「うぉぉ!!ヒーローであり、相手にとってはヴィラン!?どちらになりければ良いんだ!」
八百万「ヒーローでよろしいかと」
...ホント役から入るよなー、飯田って。
ブラド「双方の陣営には激カワ据え置きプリズンを設置。相手を投獄した時点で捕まえた判定になる」
上鳴「緊張感よ!」
4人全員投獄させたら強制終了で勝ちか。あれ、でも5人チームは1人多いから...。
『あー、ハンデってそういうことか』
上鳴「え?何が?」
宍田「自陣近くで戦闘不能に陥らせるのが最も効果的。しかし、そう上手くはいかんですな」
爆豪「4人全員捕まえた方...そういう事かよ」
上鳴「え?!」
相澤「ああ、慣れないメンバーを入れる事。そして5人チームでも4人捕らえられたら負けって事にする」
心操の入った5人チームは数的有利だけど、心操がどこまでヒーロー科の戦闘についていけるか。その心操の戦闘力、適応力によってはむしろ早々に1人分の確保を相手にさせてしまいリードを取られる可能性がある。
それを心操はいかに差を埋められるか、そしてチームメイトは心操のフォローを出来るかという事だ。
爆豪「お荷物抱えて戦えってか。クソだな」
上鳴「酷ぇ言い方やめなよ!汗」
心操「良いよ、事実だし」
上鳴「徳の高さで何歩も先行かれてるよ!!」
そして、先生達が持ち上げたのはA組用とB組用のチーム分けの為のくじ引きBOX。出席番号順に引いていくことになった。私が引いた数字は3番。
轟「何番だった?」
『3だよ』
轟「お。一緒のチームだな」
『お、期末以来だね』
私のチームは焦凍くんと飯田、尾白、それに障子。
接近戦に強い尾白に、索敵能力に優れた障子、機動力抜群の飯田に攻防一体強個性の焦凍くん。
チーム編成のお手本かの如く非常にバランスが良いチームになった。
心操はA組は梅雨ちゃん率いる1番、B組は物間率いる5番のチームに決まったらしく上鳴や物間に絡まれている。
『やほ』
挨拶を終えた心操の元に行き後ろから声をかけふと見ると心操は口元をマスクで覆っていた。
『サポートアイテム?』
心操「そう、あんたの助言のおかげで戦い方が見い出せたから」
『そっか、役に立って良かった。チームも違うし対戦もないけど心操の戦い楽しみにしてる』
心操「ハードル上げるのやめてくれる?」
『ハハ、お互い頑張ろうね』
心操「うん、よろしく」
私も心操との挨拶を終えてA組のみんなが密集してる付近に戻ると焦凍くんがやってきた。
轟「知り合いか?」
『ん?放課後特訓してる時にたまたま会ってね』
そう説明すると、焦凍くんは何やら言葉を残したような複雑そうな表情を浮かべていた。
轟「...そうか」
『どうかした?』
轟「いや、仲良さそうだったから」
『え、そう?』
焦凍くんの様子が気になるところだけど、授業は待ったなし。
あっという間に戦闘訓練開始の時間となった。
1組目はA組チームは梅雨ちゃん、上鳴、切島、口田、そして心操。
B組チームは円場、宍田、鱗、塩崎。
ブラド「スタートは自陣からだ!制限時間は20分」
相澤「時間内に決着の付かない場合は残り人数の多い方を勝ちとする」
ブラド「それでは、スタート!!」
緑谷「風舞さん、この試合どう見る?」
『ん〜。しいていうならA組は不利だよね。宍田の嗅覚がある以上、範囲攻撃持ちの上鳴をどう攻撃に活かすかが鍵になると思うけど上鳴も果たして通用するかどうか...』
麗日「何でなん?」
『上鳴は体育祭で塩崎の個性の前になす術なかったし。もちろん、実力云々だけじゃないし上鳴も個性伸ばしはしてきてるけど相性が最悪なのは間違いなくてそこをどうカバーするか...』
緑谷「上鳴くんの放電は完全にシャットアウトされてたし、B組もそれを分かってるはず。それに上鳴くんの範囲攻撃が1番厄介なはずだから塩崎さんは上鳴くんからの攻撃を阻止する為に動くはずだしね」
『うん。あとA組チームであるとすれば心操がどう生きるか、だ』
モニターを眺めながらこれからの試合の流れをみんなで予想していた中、先に動き出したのはB組だった。
宍田がA組陣地に突然現れ梅雨ちゃんと切島を掴みコンクリート壁に向かって投げつけた。
口田や心操が近くにいる故に放電で一網打尽にする事が難しく対処に迷う上鳴の側で宍田の背後から現れた円場のエアープリズンの中に口田が閉じ込められた。
そして宍田が両手を上げ上鳴と心操を潰しに入るかと思いきや突然脱力し、微動だに動かなくなった。
『あー、そういう事』
芦戸「何々?」
『心操が宍田を洗脳したんだよ。さっきの円場の声は心操が変声機で円場の声を真似て発した言葉。つまり、宍田は心操の言葉に応答してしまったことになって洗脳の餌食になった』
そっくりそのまま採用してくれたわけね。今回は敵にならなくて良かったけど、中々厄介な提案しちゃったかな私。
その後、心操が動き出したもののそれよりも先に円場が個性を発動し心操をエアプリズンに閉じ込め、宍田を叩き起こした。
その隙に上鳴が宍田の懐に入りこんだ。
宍田に掴まれるものの上鳴が個性を放ち、宍田はその電圧に身体が痺れて動けなくなったようだ。
上鳴の接近に気付き間一髪のところで宍田から離れた円場はほんの少しの隙に梅雨ちゃんの舌に巻き取られ梅雨ちゃんは投獄の為にその場を走り出した。
だけど、安心したのは束の間。宍田か再び動き出した。
麗日「上鳴くんの個性が効いてない?!」
『獣化してるから体皮や体毛で効きが不十分だったんだと思う』
緑谷「大丈夫、A組には彼がいる」
『ん、そうだね』
切島がエアプリズンを破壊して閉じ込められていた口田を助け出した。
梅雨ちゃんは2人の横を通り過ぎ激かわプリズンに向かっていった。
そしてその直後宍田がやって来て2人は個性を発動し、宍田を止めようとしたけど宍田が個性を解き人型に戻ったため体格がサイズダウンし2人の間をすり抜け、宍田の手に捕まった。
そして切島だけが塩崎の元に投げ飛ばされ、塩崎の蔓に捕獲され激かわプリズンに投獄された。
麗日「切島くんが捕まった!」
飯田「とはいえ、蛙吹くんも円場くんを捕らえている」
轟「これでイーブン」
『とは、ならないと思うよ』
轟「?」
口田は宍田に口元を抑えられ声を発する事が出来ず個性を使う事が出来ない。
かと言って厄介な洗脳を持つ心操はエアプリズンの中、上鳴は塩崎にマークさせれば怖くない。
司令塔の梅雨ちゃんは円場捕獲中で投獄に向かっている。A組は現在身動き取れない状況下。
『切島が個性を発動してやっと一撃で破壊出来たエアプリズンの強固さを考えると、切島不在となった今心操を脱出させるには時間と労力が必要。現状では梅雨ちゃんも円場を捕獲中だし、口田は宍田の手の中で索敵もかなわない。上鳴1人で何とかしなきゃいけないけど、塩崎はフリー。
鱗はどこに身を隠してるかも不明。仮に梅雨ちゃんが戻っても宍田の鼻で居場所筒抜けな状況下。A組が圧倒的に苦しい場面だよ』
上鳴と投獄を終えた梅雨ちゃんが同時に宍田に攻撃を仕掛けるも宍田の感知の方が早く攻撃を避けるとその場を退き、口田を激かわプリズンに投獄しに行った。
敵が離れていき、上鳴と梅雨ちゃんは敵に攻め入るよりも仲間の救出を優先し、心操を脱出させるために宍田が破壊し転がっていたパイプ管でしばらく殴り続けようやく心操を脱出させることができた。
ブラド「これは両チーム早くも削り合い!
宍田、円場の荒らしが的面!残り人数が同じでも精神的余裕はB組にあるかー!我が教え子の猛撃がついにA組を打ち砕くのかー?!」
物間「いいぞー!僕らのブラキン先生!!」
芦戸「偏向実況やめろー!」
今日は観覧席も賑やかだなぁ。
瀬呂「宍田がやべぇ強くねぇ?」
砂藤「鼻の精度がシャレにならねぇ」
慣れてない心操だと戦闘スピードについていけずに真っ向で仕掛けても出遅れる。
そもそも心操の個性は単一では活きない。
何とか宍田の鼻を掻い潜る事ができれば奇襲をかけたところに心操の個性で敵の連携を崩し、上鳴の個性で一網打尽....て、ところがベストなんだけど。
だけど、そんな時モニターから聞こえて来た声は想定外の言葉だった。
「蛙吹氏が3人。向かって来てる!」
回原「宍田のやつ何言ってんだ?エクトプラズム先生じゃあるまいし..。蛙吹は1人だろ」
B組の人達がそう話す後ろで緑谷と峰田がコソコソと話しているのが聞こえた。そういう事か。
梅雨ちゃんの粘液で、上鳴と心操の匂いを消した。
となると、誰が何処から向かって来てるのか特定出来ない以上心操の個性が活きてくる。
峰田「でもよ、B組はみんな固まってるぜ。上鳴の個性は塩崎に封じられちまうんならA組は攻めようなくねぇか?」
『うん、だからまず抑えなきゃいけないのは塩崎だね』
そして、塩崎が誰かを捕獲した。
その相手は上鳴だった。上鳴が意気揚々と放電をぶっ放そうとしたその時塩崎の蔓が上鳴を捕縛した。
だけど、上鳴は宍田につけていたポインターを狙って放電。
しかし、そのポインターも鱗によって宍田から離され上鳴は想定外となった事態に嘆きをあげながら、塩崎の蔓によって完全に覆い隠された。
そして、上鳴を覆い包んだ球状の蔓を下に下ろした直後塩崎は微動だに動かなくなった。
『かかった』
麗日「塩崎さんを止めた」
『これでB組の方はうかつに声を出せなくなって連携が取りにくくなる』
案の定、鱗がコミュニケーションを取ろうとするものの心操の個性を警戒して宍田は声を発する事なくどこかに向かって走って行った。
そして梅雨ちゃんが塩崎を舌で確保し建物の屋根の上に移動させると梅雨ちゃんの俊敏な動きで鱗に攻め込んでいった。
一方の宍田は心操の居場所を掴んだのか工場の中を破壊しながら進んでいき、対峙した心操と宍田。
宍田が動き出すとそれに合わせて心操も捕縛布を操り天井付近の太い配管に巻き付け力づくで破壊すると宍田の頭部に落とした。
普通であれば気を失ってもおかしくはないが今の宍田は獣モード。
ダメージ0ではないようだが、かろうじて立っていることが出来るようで心操に詰め入る。
宍田の背後から梅雨ちゃんが鱗を投げ飛ばし鱗が宍田に避けろ、と声をかけるもそれすらも心操だと思い込みそのまま心操に突っ込もうとした。
そして宍田の後頭部に鱗の頭部が直撃。2人ともそのまま気を失った。
麗日「やったー!!」
飯田「見事だ!」
峰田「おい、心操やべーだろ。ハンデになってねぇだろ」
『いや、心操の個性は対1や心操単体では活かしにくくその効果も半減する』
緑谷「うん、蛙吹さんや上鳴くんの機転で心操くんが活きた!
蛙吹さんの粘液で匂いを消し居場所を特定させず、変声機で話しかける事によって相手のコミュニケーションと連携を分断。状況さえ整えてしまえば、そこに居るだけで場を支配出来る」
轟「洗脳...思ってた以上に厄介な個性だな」
『ヒーロー科に来たあかつきには中々の要注意人物になりそうだね』
ステージから戻って来た梅雨ちゃん達を自分の前に並べさせた相澤先生。
相澤「第1試合の反省点を述べよ」
切島「相手に喧嘩する気がねぇと、俺の個性は役に立てずれぇ。本番だったら、塩崎に捕まった時点でぶっ殺されてる」
口田「虫達にもっと細やかな指示が出せるようにしないと」
上鳴「俺は良かったっしょ〜?!惚れるっしょ?!良いよ?惚れて〜大丈夫、恋なんてコントロール出来るもんじゃないし〜!」
蛙吹「口田ちゃんと切島ちゃん。2人を失ったこと、誰も欠けることなく勝ちたかったわ..バタバタしちゃった」
心操「捕縛布..教わったことの1割も実践出来なかった。悔しいです」
相澤「いきなり出来たら苦労しない。それを使いこなすのに、俺で6年かかってる。その悔しさを忘れず次もやれ」
心操「はい」
青山「インターンに行ってた2人は、感想がシリアスだね」
瀬呂「そりゃそうだろ。死穢、八歳會だっけ?あの戦いはかなり修羅場だったらしいし、そんだけの実戦を経験すりゃ例え訓練でも心構えっつーかモチベーションも違ってくるんじゃね?」
そうだ、実際あの戦いで多くの人が傷付いて、命を落とした人もいる。これが実戦なら切島と口田は死んでいた。実戦を経験したからこそ動けた点よりも改善点ばかりが頭を占める。
自分もまた然り...私も気を引き締めないと。
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