Season4
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瀬呂「やっぱエンデヴァーがトップか~!」
上鳴「轟~、喜んでる?!」
轟「え、ああ...」
緑谷「風舞さん」
『ん?』
緑谷「ウィンドリアってなんか雰囲気変わった気がするんだけど、何かあったのかな?」
『あー...んーと、やっぱ神野の事も、死穢八斎會との戦いもプロとして結構思うところ色々あったみたいで...』
緑谷「そっか...そうだよね。それに、どちらも風舞さんに実害があった以上プロヒーローとしてだけじゃなく、親としても思うところあるだろうし」
『うん』
ビルボチャートの中継が終わり、轟と莉紗はクラスメイト達からそれぞれ親の事で話題を振られ続けていた。
少し前ならば2人ともそれに気分を害していただろうが今はそんな事もなく、むしろ2人ともトップヒーローの親に対して思うことがあり何か考えこんでるようだった。
ビルボチャートの熱が落ち着いていくと各自ロードワークに出たり、部屋に戻ったり共有スペースで雑談したりと好きな事をして過ごした。
砂藤が現在進行形で焼いているシフォンケーキを食べるために共有スペースに残っている女子や1部男子。
莉紗は砂藤の手伝いをしていた。
『そっか、ヨーグルト使ったらこんなに変わるんだ』
砂藤「おう、ホットケーキとかでもこれ使えるんだぜ」
ケーキを焼くコツを教えて貰いながらケーキ作りを手伝っている莉紗。
談話スペースの方で何やら騒がしくなりそちらに視線を向けると皆がテレビにかじりついていた。
焼きあがったシフォンケーキをカットし皿に乗せ談話スペースに運んでる時、莉紗の目に衝撃の光景が映った。
切島「あれって...脳無じゃねぇか」
上鳴「でもよ、エンデヴァーいるなら大丈夫だって」
場所は福岡県らしいが、脳無とエンデヴァーが交戦している映像だった。
エンデヴァーが赫灼熱拳ヘルスパイダーを放つも脳無には全く効いていないようだった。
気づけばホークスも合流し共同戦線を張っている。
皆がテレビに釘付けになっていると莉紗が突如エレベーターに走った。
麗日「莉紗ちゃん?!」
瀬呂「轟呼びに行ったんじゃね?」
芦戸「あ、そっか」
『(おじさま、あの表情...熱がかなりこもってきてるんじゃ...)』
チンと言う音ともにエレベーターのドアが開くと走り出しノックもせずに轟の部屋のドアを勢いよく開けた莉紗。
轟「莉紗?」
突然入ってきた莉紗を見て轟が立ち上がり近付くと莉紗が轟の腕を掴んだ。
『来て!』
轟「お、おい!」
轟の返事も聞かずに掴んだ腕を引き走り出すと轟を連れて共有スペースに戻って来た莉紗。
轟「どうしたんだよ」
『エンデヴァーが戦ってる』
轟「え?」
莉紗が真剣な表情で見つめるテレビに視線をやるとエンデヴァーが必死な形相で脳無と戦っていた。
『冷却、追いついてないよね...アレ』
轟「ああ...」
すると、これまで以上に炎の火力と勢いをあげたエンデヴァー。
両手両足を大の字に開き、自身の前方一帯に強力な熱線を放射するプロミネンスバーンを放った。
脳無に直撃したはずだったが、脳無の残骸から腕が伸び鋭い杭のように形状が変わった。ソレはエンデヴァーの左目を貫いた。
その光景に轟も言葉をなくした。
脳無の前に倒れるエンデヴァー。
そんなエンデヴァーを見て轟はいつかの彼の言葉を思い出した。
「お前が胸を張れるヒーローになる。父はNo.1ヒーロー...最も偉大な男であると」
轟「クッ....」
幼少期の辛かった日々や父に抱き続けてきた自分の思いと、今戦う父の姿を見ている中で感じる自分の思い。
それらの感情達のギャップに葛藤を感じ困惑する轟。
そんな轟の気持ちを知ってか、知らずか。莉紗は轟の腕を掴んでいた手をそっと離し、ギュッと手を握った。
すると、轟もまた縋るように莉紗の手を握りしめた。
テレビの向こう側では、倒れたエンデヴァーが再び立ち上がった。
そして、次の獲物を探そうとしていた脳無を止めようと再び全身の熱をあげ始めた。
冷の見舞いの帰り道の車内で、中継を見ていた冬美達もまた、エンデヴァーの戦う姿に色々な思いを抱えた。
夏雄「何してんだあいつ。敵わねぇなら増援待てよ。自分が1番分かってんだろ、オールマイトのようにはなれないって。だから早々に諦めて、イカレたんだろ。子供は放ったらかしで、お母さん病むまで追い詰めて...諦めて逃げろよ」
冬美「夏...理解は出来ても納得出来ないって事、あるでしょ?諦めたんじゃないんだよ。あの人は、誰よりも諦めの悪い人なんだよ..」
テレビには恐怖と絶望に脅えた人達が映し出された。街は混乱と化していた。現場を中継するアナウンサーは声を震わせながら現場の状況を伝えていた。
「これが...象徴の、不在...」
轟「..っ、ふざけんな」
エンデヴァーが必死で戦っているものの苦戦を強いられている様子、そしてエンデヴァーの勝利はないと思ったのかアナウンサーが思わず口にした言葉に轟と莉紗は眉をしかめた。
オールマイトのようにはなれない。
自分は平和の象徴にはなれない。
だけど、自分なりにNo.1ヒーローとしてどうあるべきか模索している。
そんなエンデヴァーを知っている。
ヒーローとして、父として、変わろうとしているエンデヴァーの想いを轟ももう知っている。
だからこそ、アナウンサーが何気なくぼやいたその言葉を聞いて轟は悔しそうに表情を歪ませた。
相澤「轟!もう見てたか...」
教師寮で中継を見ていた相澤も轟の心情を案じて様子を見に来た。
エンデヴァーの安否。そして、やはりオールマイトでないとダメなのだと言わんばかりのアナウンサーや人々の反応を見て、A組のクラスメイト達も轟の心情を案じた。
しかし、「適当な事言うなや!」と一同の心配を吹き飛ばすかのような少年の力強い声がテレビの向こうで響いた。
「どこ見てしゃべりおったんや、TV!!」
友人に止められながらカメラに向かって怒りをあらわにする少年。
「見ろや、まだ炎が上がっとるやろうが!!見えとるやろうが...エンデヴァー生きて戦っとるやろうが!!おらんもんの尾っぽ引いて勝手に絶望してんなや!今、俺らの為に..身体張って戦ってんの誰や!見ろやっ!!!」
エンデヴァーが劣勢な中で、誰もがオールマイトという絶対的な象徴の面影を辿り絶望していた最中少年が叫んだ言葉。
その言葉を聞いて、莉紗は握っていた轟の手に力を込めた。
『焦凍くん...エンデヴァー、戦ってるよ。
オールマイトを超えるためじゃ、なくて....っ、ヒーローとして、守るために戦ってるよ』
エンデヴァーの想いを直接聞いている莉紗だからこそ、今エンデヴァーがどんな思いで脳無と戦っているのかが分かる。
オールマイトを超える為に、ただ頂点を目指すためだけに戦ってきた今までとは違う。
ただ強さを求めてきた今までとは違う。
護る者として、ヒーローとして...守る事だけを考えて戦っている。
どんどんと火力を上げていくエンデヴァー。
ホークスの剛翼がエンデヴァーの背中に刺さりホークスのスピードを得たエンデヴァーが脳無を捕らえ能無を焼いている。
にも関わらず、脳無はその風貌を変化させていった。
「エンデヴァーが、戦っています..!身をよじり、あがきながら..戦っています!!」
『おじさま...頑張って...』
轟「グッ...」
自分に告げたエンデヴァーの言葉。
ビルボチャートの壇上でたった一言発した言葉。
そして、その覚悟。
「俺を、見ていてくれ」
その覚悟が画面の向こうで戦っているエンデヴァーの姿から痛いほどに伝わってきて轟は左手を握りしめた。
一瞬の炎を纏って...。
轟「親父...見てるぞ..見てるぞ..!!」
エンデヴァーと能無は周囲の建物も人も巻き込まないほどの遥か上空に上がっていった。
そこで、エンデヴァーはこれまで見せたこともないほどに火力をあげていった。そして..
バァァン
上空でまるで爆発が起こったかのように真っ赤に光りその後、炎が隕石のように勢いよく地面に落下していった。
そして、炎が消えるとそこには満身創痍になりながらも右腕を高く掲げたエンデヴァーが立っていた。
「エンデヴァースタンディング!!!立っています!!腕を高々と突き上げて!!」
現場のアナウンサーも逃げまどっていた人々もスタンディングポーズを掲げるエンデヴァーに歓喜の声をあげた。
『っ...』
ボロボロではあるがエンデヴァーが無事だった事に莉紗が安堵から腰を抜かし座り込んだと同時に轟も安心し力が抜けたのか床にしゃがみこんだ。
そんな2人の元にクラスメイト達が駆け寄った。
莉紗が隣に視線をやると轟が自身を落ち着かせるように大きく息を吐いているのが見えた。
-莉紗side-
テレビでは、アナウンサーがその場にいた人々に取材をしエンデヴァーの勝利を称える声が絶えず流れていた。
満身創痍ではあるけれどおじさまが無事でよかった。
正直肝が冷えたけどその戦う姿は勇ましく、さすがはプロでNo.1と言わざるを得ない。
焦凍くんの様子を見るとどうやらおじさまの姿に心動かされたみたい。
安心して腰を抜かして座り込んだ私と同じように焦凍くんも力が抜けたのかしゃがみこんでしまった。
焦凍くんの腕をギュッと掴むと、焦凍くんが私を見た。
『おじさま、無事でよかったね』
焦凍「あぁ...」
きっと今焦凍くんは自分の抱いた気持ちにすごく戸惑ってると思う。
以前の焦凍くんなら、エンデヴァーが無事と知ってここまで安心するなんて事なかっただろうから。
皆も「良かったね」と焦凍くんに言葉をかけている中、テーブルに置いてあった私のスマホが鳴った。
画面を見るとそこには"冬ちゃん"の名前。
『もしもし』
焦凍くんをちらりと見たけど、気持ちを落ち着かせるために俯いたままの焦凍くんは私の視線には気づかず私は電話に出た。
【あ、莉紗ちゃん。焦凍電話に出ないんだけど近くにいる?】
『あ、部屋に置いてきてるのかも。今共有スペースでテレビ見てたから。ここにいるよ、替わるね』
私はスマホを耳から離すと焦凍くんにスマホを差し出した。
焦凍「?」
『冬ちゃん』
焦凍くんは私のスマホを受け取り耳に当てて、冬ちゃんと話し始めた。
麗日「冬ちゃん?」
『あ、轟くんのお姉さん』
皆の疑問が解決したらしく、なるほどという表情を浮かべていた。
それと同時に焦凍くんも話し終わったらしく通話を終了させ私にスマホを戻した。
焦凍「先生、親父の所に行くらしく今から迎えに来るので風舞連れて外出してもいいですか?」
『え、私も?』
焦凍「おばさんが迎えにきて親父んトコ連れてってくれるって」
エンデヴァーは福岡市内の病院に搬送されるはず。
万が一に備え、母さんが護衛もかねて同行するって事だと思う。
『あぁ..そういう事』
相澤「ウィンドリアさんが来るならやむを得ないな。あの人の事だ...どうせ無理やり連れてくだろうしな」
『先生...前から思ってたんだけど昔うちの母となんかあった...?』
相澤「いや、気にするな」
いや、すっごく気になるんだけど。
先生話す気なさそうだし聞くだけ無駄そう。
相澤「今日戻るのは難しいだろ。今日は自宅かもしくは向こうに泊まってこい。外泊許可書は事後提出で構わん。出かける準備して来い」
お互い部屋に戻り1泊の準備をして共有スペースに戻るとちょうど良く冬ちゃんから連絡があった。皆にちょっと行ってくるね、と伝えて私達は寮を出た。
『焦凍くん、大丈夫?』
焦凍「何がだ?」
『ちょっと参ってない?』
そう聞くと、焦凍くんは口をつぐんだ。
焦凍「いや...色々と混乱してるだけだ」
『...そっか』
焦凍くんが言いたい事を理解した私はそれ以上は何も聞かなかった。
焦凍「お前..」
『ん?』
焦凍「親父と...」
焦凍くんが何か私に言いたそうにした時、「焦凍ー!莉紗ちゃーん!」と助手席から顔を出してこっちに手を振ってる冬ちゃんが叫んでいた。
焦凍「姉さん、声デカい」
車に近付き冬ちゃんに端的に一言告げた焦凍くんに冬ちゃんが苦笑いした。
冬美「あ、ごめんごめん」
車の後部座席を開けて乗り込むと夏くんがいた。
『夏くん..?』
夏雄「久しぶり、莉紗ちゃん」
焦凍「..夏兄もいんのか?」
これからエンデヴァーの元に行こうというメンバーの中に夏くんがいたのが意外だったのか焦凍くんも目を丸くして車の中を覗き込んだ。
夏雄「姉ちゃんが来いってうるさくてさ」
冬美「あんたも一応家族でしょ?」
夏雄「一応って何だよ、一応って」
楓子「ほら、早く乗ってよ〜?」
焦凍「おばさん、わざわざすいません」
車が走り出すや否や焦凍くんが運転してる母さんに話しかけた。
楓子「気にしなくていいの、炎司くんが療養してる間はうちもエンデヴァー事務所のサポート入るからその話もしなきゃだし」
『サポート?』
楓子「グルーガン事務所とエンデヴァー事務所は相互協定結んでるからね。人手が足りないときは人員を貸し合うし、万が一に所長が倒れたら相手の所長が一時的に事務所を預かる事になってるの。だから普段からお互いの事務所について逐一把握し合ってるのよあの二人」
同じヒーロー同士、そして雄英時代の友人という事で日頃交流があるのは知っていたけど、そこまで深い繋がりがあるとは思わなかったからただただ驚いた私達。
焦凍「知らなかった」
楓子「まあ、ただグルーガンが今日重要会議があって離れられないから私が代わりに話しに行くんだけどね」
冬美「でもおばさまが来てくれて助かりましたっ!」
楓子「勝ったとはいえただの賊にこてんぱんに追い詰められて苦虫を噛む炎司くんの顔も見てみたいしね〜」
夏雄「(楓子おばさんって腹黒かったんだな...)」
冬美「(お父さんにそんな事言えるほど仲良いんだなぁ)」
『(母さんってそういう人だったんだな...)』
焦凍「(莉紗の性格、おばさん似だったんだな)」
病院に辿り着いた5人。
手術時の麻酔が効いているらしくエンデヴァーはまだ眠っていた。
医者の話では命に別状はなく回復を待つだけとの事。
左目の傷も、痕は残るが幸い眼球は傷ついておらず視力も問題ないだろうという事だった。
夏くんを送り届けたあと、学童と保育園にそれぞれ梨央と寛太を迎えに行って今日はお互い実家に帰る事にしたけど親がエンデヴァー事務所のサポートの為に今日は泊まり込みをしなければならないそうで、私は梨央と寛太を連れて轟家に泊まることにした。
冬美「お風呂湧いてるからどっちか先入っておいで」
焦凍「莉紗、寛太入れるから先にいいか?」
『いいの?』
焦凍「おう。寛太、風呂入るぞ」
寛太「やった!しょーとくんとちゃっぽ!」
当たり前のように寛太をお風呂に入れに連れていった焦凍くんに、久しぶりの焦凍くんとのお風呂に大喜びの寛太。
『うちの親、明日帰って来れるんだろうか』
冬美「大丈夫!明日は私早く帰れるから任せて!」
『ありがとう。ホントに冬ちゃんには足向けて寝れないや』
冬美「ふふ、でも悪いけど莉紗ちゃん。寛ちゃんと焦凍がお風呂入ってる間にご飯支度手伝ってもらっていい?」
『うん、もちろん。梨央、宿題は?』
梨央「学童で終わらせてきたよー」
そう言ってランドセルからノートを出してこちらに見せてきた梨央。
冬美「さすが梨央ちゃん!」
『私とは出来が違うわ。じゃあ寛太上がったら着替えとかお願いね』
梨央「うん!」
寛太を梨央に任せて、冬美と2人で食事の準備に取り掛かった莉紗。
『おじさま、無事で良かったね』
莉紗は玉ねぎをみじん切りしながら、隣で肉を炒めている冬美に話題を切り出した。
冬美「うん、ホント心臓止まるかと思ったよ...」
しかしそう話す横顔は安心した表情というよりどこか切なげで、もの悲しそうな表情。莉紗は冬美の心の内が気になった。
冬美「お父さんが、家族を見ようとしてるの...歩み寄ろうと」
『うん...そうだね』
冬美「うちも、家族になれるかな」
『冬ちゃん...』
冬美が妹の梨央と同じように普通の家族に憧れている事を知っているが故に、冬美の言葉に胸が締め付けられる様な思いになった莉紗だが、1つ確信している事もあった。
『うちも、さ』
冬美「ん?」
『少しずつだけど、普通の家族になれてきてると思うんだ』
冬美「うん...そうだね」
『向こうもまだ私の顔色伺ってるし、私もまだ咀嚼出来ない部分もあるんだけど...でも、普通の会話が出来るようになったのは進歩かなって』
莉紗の用事で自宅に帰った時。
莉紗が親と何でもない会話をしているのを見て梨央が笑って聞いているところを莉紗は見た。
母親と莉紗に梨央の好きな男の子の話題を出され、照れくさそうにしながらも嬉しそうに話す梨央。
そんな妹を見て、勇気を出して忌み嫌ってきた親たちと向き合った事で、少なくとも自分が守るべき大切な妹を笑顔にすることが出来た事に莉紗は、報われたような気がしていた。
冬美「莉紗ちゃん..」
『焦凍くんも今、父親としてだけじゃない。ヒーローとしてのエンデヴァーを見ようとしてる。過去と向き合おうとしてるおじさまの想いにちゃんと気づいてる。じゃなきゃ、職場体験もおじさまの所に行かないよ』
冬美「..うん、焦凍が会いに行くようになってお母さんも笑うようになった」
『だから、きっと大丈夫だよ。冬ちゃんの想いはちゃんと形になる日が来る』
冬美「莉紗ちゃん..ありがと。
さすが、莉紗ちゃんはヒーローだね!」
**
寛太と焦凍くんがお風呂から上がってきた後、私も残りの食事の支度を冬ちゃんに任せて梨央とお風呂に入った。
5人で食事を取り、「しょーとくんと遊ぶ!」と駄々をこねる寛太を焦凍くんと梨央がなだめながら寝室に連れて行き寝かせてくれた。
『完全に私不要になってきてるな』
久しぶりに会っても"ねねちゃん"の"ね"の字も出さなかった寛太。焦凍くんに懐き過ぎて参った。あのワガママぼんずをいつも相手してもらって焦凍くんに申し訳ない気持ちが沸いてくる。
冬美「ふふ、でも普段は"ねねちゃん、ねねちゃん"って言ってるよ?」
『そうなの?』
冬美「うん、この前もね。私がお迎え行った時に、莉紗ちゃんいつ帰ってくるか聞いてきたから理由聞いたらね?家族の顔を書くって言うの保育園でやってたらしくて"ねねちゃんかいた!"って楽しそうに話してたんだ。まだ貰ってない?」
『うん、忘れてるねあの子』
冬美「そうだね、明日私さりげなく言ってみるね」
『ありがとう、冬ちゃん。あーあ、自分の幼少期の頃からホント...轟家にはお世話になりっぱなしで頭上がらない』
2人で談笑していると居間に焦凍くんが戻ってきた。
『あ、もう寝たの?』
焦凍「ああ、案外すぐ」
『ごめんね、ありがと』
焦凍「気にすんな。それよりお前今日の課題終わったのか?」
課題...。課題...
『...あーっ!』
冬美「バタバタして忘れちゃったんだね」
焦凍「教えてやるから来い」
『焦凍くんは終わったの?』
焦凍「ああ、寮に帰ってすぐ終わらせた」
『さすが...』
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轟家の私の部屋に置いてあった通学バッグを取りに行ってから焦凍くんの部屋に行き、向かい合わせになって私の課題に取り掛かる。
焦凍くんが教えてくれなかったら正直夜なべしても終わらなかった。
『ごめんね、焦凍くん』
焦凍「別に気にすんな。つーか、お前。最近俺に遠慮してんだろ」
焦凍くんが何を指摘しているのか分からなかった私は首をかしげて焦凍くんを見た。
『遠慮?』
焦凍「最近勉強聞きに来ねぇから。よく爆豪に聞いてねぇか?」
確かに焦凍くんの言う通り、最近は焦凍くんに勉強聞きに行くのは控えていた。
距離を置きたくて別れて、ただのクラスメイトになったのにも関わらずいの一番に焦凍くんに聞きに行くのはどうかと思って前の席の爆豪や後ろの席の緑谷に聞いている。
ヤオモモにも聞きに行ってたけどヤオモモの所まで行くとあからさまに焦凍くんをスルーしてるみたいで少し罪悪感が沸いてくる事に気づいてからはヤオモモの所にも行かなくなった。
『ああ..それは、まあ。一応..』
焦凍「一応じゃねぇ。そういう遠慮はすんな、幼馴染だろ」
表情を変える事なくそう言う焦凍くん。焦凍くんは恋人でいることと幼馴染でいることは別だと思っているんだ。
確かに別れたからって元の幼馴染という関係に戻っただけ。
だけど、私達の間にあった恋愛感情は幼馴染として築き上げた関係性の上にあるもので。
それを分かったうえで、単に幼馴染に戻るだけとは私には言えない。
『焦凍くんが離れようって言った理由はさ。私達が悪く言えば依存し合っちゃうからでしょ』
焦凍「....俺は、何かあるといつもお前を逃げ道に使っちまう。いつまでも弱いままだ」
そう言って自分の左手を見つめて眉根を寄せた焦凍くん。
そうか...。焦凍くんは、自分が強くなれてない。成長してないと思ってるんだ。
『私、焦凍くんが私を逃げ道に使ってると思った事一度もないよ。だって、焦凍くん。ちゃんと自分で乗り越えてるじゃん』
焦凍「え」
『左を使うようになって、冷さんに会いに行って、おじさまと向き合うようにエンデヴァー事務所に職場体験に行って。ちゃんと、自分の血や過去と向き合ってる。自分の弱さをちゃんと受け入れてるでしょ』
和解しても頑なに親の事務所にはいかない。そこだけは断固としても譲らない私。
少なくともそんな私よりは焦凍くんの方がよっぽど色んなものと向き合って、色んなものを見ようとしている。
『それに、私もそうだから』
焦凍「何がだ?」
『私も、焦凍くんに頼りがちだから...』
焦凍くんだけじゃない。
私も焦凍くんに依存してる部分がある。
焦凍くんに頼ってしまい、拠り所にしている節がある。
だから私も、決意したんだ。
焦凍くんが私を迎えに来るまで、私も強くなるって。
『私も、成長する。強くなるから。だから、それまでお互いを見ないようにしよう』
焦凍「莉紗...わかった」
自分の血と向き合う為に。
過去の自分を乗り越える為に。
そして、強くなるために。
幼い頃、共に語り合った夢を守りかなえるために。
→Next Season