Season4
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エン「よし、今日はこれくらいにする」
『はい』
学業と並行のインターン活動は多忙と言うには足りない程に大変ではあるけどその分実りのある経験を積み確実に自分の動きに変化が出てきた事を感じられる。
エン「事件発生から通報、そして犯人確保までの一連の動きがスムーズになり、ムダがなくなってきている。分かるか?先週に比べお前が1人で処理した事件数が倍になっているのが」
そう言ってエンデヴァーが私に見せた書類には、平日のインターン活動の中での先週の私の事件解決数と今週の事件解決数がグラフ化されていた。
平日のインターン活動時間はおおよそ5時間~6時間。その中で、先週の最大解決数は火曜日の5件、アベレージが3.7。
そして、今週の事件解決数の最大が木曜日の11件、アベレージが8.4となっていた。
エン「事件を察知し、動き出すまでの時間の短縮と事件対応中の判断力が向上している証拠だ。しかしまだまだ詰めが甘い部分も多い。心してかかれよ」
『はい』
エンデヴァーのありがたーいお褒めの言葉を聞きながら私の生理的欲求は既に限界に達していた。
『エンデヴァー』
エン「何だ」
『...お腹空いた』
エン「....何が食いたい」
『焼肉』
そして私とエンデヴァーはエンデヴァーおすすめの焼肉屋にやって来た。
『おじさま、極厚牛タン食べていい?』
エン「好きに食え」
『やった、すいません。極厚牛タン3皿と特上カルビ1皿と鶏皮2皿としいたけ、韓国のり、もやしナムルにビビンバ、それからわかめスープください』
エン「..相変わらずよく食うな」
私の注文内容を聞いておじさまは若干引いている気がする。
『お腹空くもん』
エン「まあ、ヒーローはエネルギーの消費量がケタ違いだからな」
『言っとくけど焦凍くんはやせの大食いなんだからね』
エン「焦凍も、よく食べるのか?」
焦凍くんが大食いなのを知らなかったらしいおじさまは私の話しを聞いて目を見開いた。
『めっちゃ食べるよ、ざる蕎麦なんてお腹空いてる時だったら3玉くらい食べてるもん』
エン「そうか...そういえば、だな。補講を見に行ったあと、焦凍は怒ってなかったか?」
心なしか不安気におそるおそる聞いてくるエンデヴァー。最近No.2...実質No.1だけど。その威厳が見えなくなってってるのは身内目だからだろうか..。
『うん、大丈夫』
エン「そうか...」
そんなおじさまの様子を見て、かねがねより聞きたかった事を今聞いてみようと思った私。
『おじさまはさ。焦凍くんとどうなりたいの?』
エン「どう...か。難しい質問だな」
『でも、どうなりたいっていうのがあるから。一生懸命歩み寄ろうとしてるんでしょ?』
エン「..そう、見えるのか?」
私の言葉が意外だったのか、驚いた表情で私を見たおじさま。
『見えるも何もめちゃくちゃあからさまでしょ』
エン「...そうか。どうなりたいかは、正直わからん。と言うより、どうなるのが正解かがわからん..」
相当悩んでいるんだろうな。
おじさまは神妙な面持ちで俯いた。
『...知ってると思うけど。私さ、両親や蒼兄と和解したんだよ』
エン「ああ..寛治から聞いている」
『正直私は今更あの人達とどうなりたいと思って和解しようと思ったわけじゃなくて。梨央が冬ちゃんと同じで、普通の家族に憧れてたから』
エン「............」
『私は会いたくないからずっとあの人達と顔を合わせるのを避けてた。それを梨央はずっと寂しい気持ちを我慢して見てたの。
気づいてたけど、やっぱ顔を合わせたくないから気づかないフリしてた』
エン「...そうか」
おじさまの顔はどこかうしろめたさを感じてるような表情だった。
それは多分梨央の話しを冬ちゃんと重ね合わせてるんだと思う。
そして、自分こそが家族が壊れた原因であるとわかっているが故の表情なんだとも思う。
『私は、梨央の為に家族と和解した。普通に会話出来るくらいにはなった。おじさまは?何の為に家族を治そうと思ってるの?』
エン「............」
『おじさま自身が何の為に家族をやり直そうとしてるのか答えがないと。焦凍くんにも夏くんにも、冷さんにも伝わらないと思う』
エン「俺は、償いたいだけだ。許されたいわけじゃない。償って、あいつらに負わせた傷が消えるわけじゃないという事も分かっている。
ただ.....償いたいんだ」
おじさまのその表情にウソはないように見えた。
昔は本当に酷い人だった。
平気で冷さんにも、焦凍くんにも、他人の私にも手をあげていた。
自分の野望を押し付け、怒鳴り散らしていた。
燈矢兄の事だって...。
いつも私の両親と同じ目をしていた。
少なくとも私は、冷たく見下ろす顔しか見たことがなかった。
だけど、今のおじさまは違う。
あの頃の冷たい表情はどこにもない。
傷つけていただけの手は、もうない。
今のおじさまの手は、多くのものを守ろうとしている。
家族と向き合おうと必死に歩み寄ろうとしている。
私は、自分の両親と和解したからこそおじさまが本気で家族を省みようとしているのがわかる。
自分達に償おうとする両親を見ているからこそ、おじさまが本気で焦凍くんたちに償おうとしているのがわかる。
おじさまは、本気だ。
そんなおじさまを私は、何故か応援したくてたまらなくなった。
『私も協力するから、頑張ってね』
エン「莉紗...ありがとう」
**
11月も下旬に差し掛かった頃..
相澤に呼ばれて職員寮にやってきた緑谷、麗日、切島、蛙吹、莉紗。
相澤「雄英で預かる事になった」
そう相澤が示したのはソファーに座り波動ねじれに髪を結ってもらっている壊理だった。
緑谷「近いうちにまた会えるどころか!!」
切島「よっ!」
麗日「わぁ!壊理ちゃんだ、やったー!」
蛙吹「私、妹を思い出しちゃうわ。よろしくね」
壊理「よろしくお願いします」
『困った事あったら何でも言ってね』
壊理「ありがとうございます!」
初めて会った頃より他人に対し馴染めるようになってきている様子の壊理。
気づけば自然に笑顔も見せるようになっている事に皆が笑った。
緑谷「どういった経緯で?」
相澤「いつまでも病院ってわけにはいかないからな」
相澤が外に出ろ、と教師寮の外に緑谷達を連れ出した。
相澤「壊理ちゃんは親に捨てられたそうだ。血縁に当たる八斎會組長も長い間意識不明のままらしく現状寄り手がない」
『事実上の孤児なわけですね』
通形「そう。そんでね、先生から聞いたかもしれないけど。壊理ちゃんの個性を放出口になってる角」
切島「あ、はい。縮んでて今は大丈夫って聞きました」
通形「わずかながらまた伸び始めてるそうなんだ」
麗日「じゃあ、またああならないように...」
相澤「そういう事だ。で、養護施設じゃなく特別にウチが引き取り先となった。教師寮の空き部屋で監督する。
様子を見て強大すぎる力との付き合い方も模索していく。
検証すべきこともあるし、まあ追々だ」
蛙吹「相澤先生が大変そう」
通形「そこは!休学中でもあり壊理ちゃんとも仲良しなこの俺がいるのさ!!忙しいだろうけどみんなも顔出してよね」
緑・切「「もちろんです!!」」
そしてみんなで壊理の所に戻ろうとすると相澤から来賓があるから寮に戻れと言われ疑問符を浮かべながら寮に戻った5人。
**
常闇「へっくしょい!」
麗日「風邪?大丈夫?」
常闇「いや、息災。我が粘膜が仕事をしたので」
麗日「何それ?」
上鳴「噂されてんじゃね?ファン出来たんじゃね?文化祭の時の八百万と風舞みたいな」
八百万「茶化さないで下さいまし!ありがたい事です!」
『別にありがたくはない』
麗日「常闇くんはとっくにおるんやない?だってあのホークスの所にインターン行っとったんやし」
常闇「いや、ないだろうな。あそこは速すぎるからな」
麗日「?」
皆で好き好きに会話をしていると寮の玄関のドアがノックされた。
マンダレイ「煌めく眼でロックオン!」
ラグドール「猫の手手助けやってくる!」
虎「どこからともなくやってくる!」
ピクシーボブ「キュートにキャットにスティンガー!」
「「「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!」」」」
私服だがお決まりの決めポーズを飾ったワイプシの4人。
飯田「プッシーキャッツ!お久しぶりです!」
マンダレイ「元気そうだね、キティ達」
虎が渡してきた肉球まんじゅうを大喜びで受け取り盛り上がる一部女子's。
虎「あん時は守りきってやれなくてすまなんだ」
爆豪「ほじくり返すんじゃねぇ」
『こら...
気にしないでください。自分達も力不足だったんで』
そう虎に返すとピクシーボブの元に駆け寄った莉紗。
『流ちゃん、怪我大丈夫?』
ピクシー「ん?大丈夫だよん。莉紗も、元気そうで良かったよ」
『うん』
ピクシー「そういえば姉さんから聞いたよ。あんたの個性、姉さんの"風"じゃなくておばあちゃんの個性だったんだって?」
『あー、うん。そうなの。流ちゃん、今度土龍の訓練つけてくれる?』
ピクシー「ん、もちろん!」
障子「どうぞ、中へ」
それぞれの場所で立ち話をしているところに障子が声をかけた。
マンダレイ「あ~、いいの。お構いなく」
虎「B組にも行かなあかんし」
緑谷が同伴していた洸太を見つけ会えた喜びと手紙への感謝を興奮気味に伝えているとマンダレイが緑谷を呼び、洸太の靴を指さした。それは洸太が自分で絶対赤が良いと選んだものだった。
緑谷「お揃いだ!」
洸太「......///」
砂藤「しかし、なんでまた雄英に?」
ピクシー「復帰のご挨拶に来たのよ」
飯田「復帰?!」
八百万「それはおめでとうございます!」
緑谷「ラグドール!復帰したんですか?個性を奪われて活動見合わせだったんじゃ...」
ラグドール「戻ってないよ!」
片手を天に向けて伸ばし、はつらつと言ったラグドールに一同全員疑問符を浮かべた。
ラグドール「あちきは事務仕事で3人をサポートしていくの」
ピクシー「タルタロスから報告は頂くんだけどね。どんな、どれだけの個性を内に秘めているか未だ追及している状況。現状、何もさせないことが奴を抑える唯一の方法らしくてね」
八百万「では、何故このタイミングで復帰を?」
マンダレイ「今度発表されるんだけど、ヒーロービルボードJP下半期。私達411位だったんだ」
それを聞いて緑谷が何か思いついたように呟いた。
緑谷「プッシーキャッツは前回32位でした」
『(緑谷、順位まで覚えてるのね..)』
考える素振りもなくすらすらと言った緑谷に少しだけ引いた莉紗。
切島「なるほど、急落したからか。ファイトっす!」
ラグドール「違うにゃん!全く活動してなかったのにも関わらず3ケタってどういう事?!ってこと!!」
緑・切「「あ...」」
虎「支持率の項目が、我々突出していた」
ピクシー「待ってくれてる人達がいる」
ラグドール「立ち止まってなんかいられにゃい!!」
切島「そういう事かよ...くぅ〜っ、漢だ!ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」
上鳴「うるせぇよ...」
『(ビルボチャート...か)』
芦戸「そういえば下半期まだ発表されてなかったもんね」
常闇「色々あったからな」
尾白「オールマイトがいないビルボチャートランキングかぁ」
今後発表されるであろうランキング結果を想像してみんなで盛り上がっている中、複雑な表情を浮かべる2人がいた。
轟「.........」
『(オールマイトがいない分、繰り上げ順位になるのかな)』
**
そして、数日後。
噂のヒーロービルボチャートJP下半期生中継ではTOP10までのヒーローが急遽登壇する事が発表された。
「No.10!前回9位からワンランクダウン!ドラグーンヒーロー リューキュウ!」
リュー「正直私、今回は見合ってないかな..」
「No.9!綺麗につるつる、CMでお馴染み!洗濯ヒーロー ウォッシュ!」
ウォッシュ「ウォッシュ!」
「NO.8!大躍進、成長止まらぬ期待の男!シンリンカムイ!」
カムイ「光栄」
「No.7!ザ・正統派な男は堅実に順位をキープ!シールドヒーロー クラスト!」
クラスト「もっと貴方の活躍が見たかった...オールマイト..っ!!」
「No.6!勝気なバニーはランクアップ!ラビットヒーロー ミルコ!」
ミルコ「チーム組んだんだってなぁ?弱虫め」
「No.5!ミステリアスな忍は解決数も支持率もうなぎ昇り!忍者ヒーロー エッジショット!」
エッジ「だまらっしゃい、公の場だぞ」
「No.4!デビューから衰え知らずのその美しさと強さ!支持率においても下落知らずのそよ風ヒーロー ウィンドリア!」
ウィン「(今だからこそ思う、このランクは私にふさわしくないって...)」
「今回、神野事件に携わったヒーロー達の支持率が軒並みあがっています。それでいくとこの男。
活動休止中にも関わらずNo.3!デビューから本年上半期までオールマイトと共に支持率No.1、2と独占し続け我が物としていたウィンドリアから今回初めて奪取した男!ファイバーヒーロー ベストジーニスト!一刻も早い復帰を皆が待っています。
No.2!マイペースに、だけど猛々しく!破竹の勢いで今2番手!ウィングヒーロー ホークス!」
ホークス「んな大げさな」
「そして、暫定の1位から今日...改めて正真正銘のNo.1の座へ!長かった!フレイムヒーロー エンデヴァー!!」
エン「..........」
テレビで生中継されているヒーロービルボードチャートJP。
これまではヒーローが登壇することはなかったが今回はTOP10までのヒーローが顔をそろえることになったのはヒーロー社会に変革が訪れていることへのヒーロー公安委員会の意図だった。
リューキュウ「ありがとうございます。しかし、辞退出来るものならしたかったというのが本音です。救えたはずの命がありました。頂いたナンバーにふさわしいヒーローになれるよう、まい進して参ります」
ヒーロー達が司会アナウンサーに促され1人ずつコメントを話している。
ミルコ「今悪い事しようとしてる奴、私にぶっ飛ばされる覚悟しとけよ!」
エッジ「数字に頓着はない。結果として多くの支持を頂いた事は感謝しているが、名声の為に活動しているのではなく安寧をもたらす事が本質だと思っている」
ホークス「それ聞いて誰が喜びますー?ステインくらい?」
ホークスの皮肉を込めた発言に会場が静まり返った。
「そ、それではウィンドリアさんお願いします」
ウィン「....神野事件をきっかけに自分がヒーローとして、人間としてどれほど未熟な存在だったかと言う事を痛感致しました。
No.4という数字は私が背負うべき数字ではない。リューキュウと同じように私も辞退したい気持ちでした。しかし、私をこの座に選んでくださった皆さんの期待と想いに答えるべく、ヒーローとしても人間としても精進していくことをお約束します」
ホークス「ウィンドリアさーん。堅すぎて眠くなりますよ」
ウィン「それは失礼したわ」
ミルコ「いいな、生意気!」
エッジ「相変わらず和を乱すのが好きな奴だ」
ホークス「我慢が苦手なだけですよ」
ホークスは司会女性からマイクを奪った。
ホークス「えーっと、支持率だけで言うとベストジーニストさん応援ブーストがかかって1位、2位がウィンドリアさん、3位が俺、4位エッジショットさん。で、5位がエンデヴァーさん..以下略。支持率って、俺は今一番大事な数字だと思ってるんですけど。過ぎた事を引きずってる場合ですかー?やること変えなくていいんですかー?象徴はもういない。節目のこの日に、俺より成果の出てない人達が何を安パイ切ってんですか。もっとヒーローらしいこと言ってくださいよ」
鼻高々としたマイクパフォーマンスをしたホークスが満足気にマイクをエンデヴァーに渡した。
マイクを受け取ったエンデヴァーは1つ息を吐いた。
エンデ「若輩にこうも煽られた以上、多くは語らん。俺を、見ていてくれ」
**
冬美「着替えと羽織るもの置いとくね」
冷「いつもありがとう」
休日の日曜日。冬美と夏雄は、揃って冷の元にお見舞いに来ていた。
冷え込みが強くなり、これから来るべく季節に向けて衣替えのために着替えを持ってきた冬美に冷がお礼を言った。
冬美「来週から冷え込むみたい!」
冷「嬉しい。寒いのは好き」
夏雄「暑がりだもんねー、俺ら」
穏やかに言う冷に夏雄が笑顔で言った。
冷「クス、夏くん元気そうね」
冬美「大学入ってから全然帰って来ないの。ゼミで彼女出来たんだって〜」
夏雄「ね、姉ちゃん!れ、連絡入れてるから良いでしょ?!///
お、お母さんも元気そうだね!け、血色が良い~!良いことあった?」
夏雄が話しを逸らすように冷に問いかけると冷はたくさんの封筒を手にし2人に見せた。
冷「焦凍がお手紙くれるの。仮免補講大変だけど、友達に追いつくために頑張ってるって」
夏雄「へぇ、焦凍筆まめなんね」
冬美「寮生活に補講であの子も以前のようには来れないのよ」
冷「みたいだね。
それにね、インターン始まった頃くらいから莉紗ちゃんも一緒にお手紙入れてくれるようになって。最近は毎回2人の手紙入りなの」
嬉しそうに笑顔で話す冷の様子に夏雄も冬美も安心したように笑顔を返した。
冬美「へぇ!莉紗ちゃんは昔からお手紙とか好きだったし、作文とかも得意だったもんね」
夏雄「さすがにもう携帯とか良いんじゃない?大変でしょ、手紙は」
冷「そうね、先生が何ていうか」
冬美「手紙、見ていい?」
冷「ええ、2人には内緒ね」
冷から手紙を借りて便箋を開き楽しそうに読み始めた冬美とは反対に、先ほどまで笑顔だった夏雄が急に真顔になり言葉を溜めた後に口を開いた。
夏雄「お母さん」
冷「ん?」
夏雄「あいつ、昨日正式に№1になったよ」
冬美「夏...」
夏雄「世間はお母さんや兄弟や、莉紗ちゃんにしてきたこと..家族をどう扱ってきたか知らないよ。あいつトーク番組とか出ないし」
冬美「あんた、お父さんの話しは...」
冷への配慮のつもりで夏雄を制止しようとした冬美だったが冷がその冬美を制止した。
冷「良いの、冬美」
夏雄「俺はろくに思い出もないし、あいつがどうなろうがもうほぼ他人感覚なんだけどさ。けど、お母さんや焦凍達の事...なかったかのように振る舞ってんのは許せねぇ。もう約10年。お母さんに謝りにも来てないんだろ?過去も血も、あいつは置き去りにしていく気なんだ...」
そう怒りで拳を震わせながら言う夏雄に、事実である以上庇い切れない部分もあるのか冬美も口を閉ざした。
冷「それは違うよ」
夏雄「..何で、お母さんがあいつ庇うんだよ?」
冷「そのお花..」
そう言って冷が見たのは窓際に花瓶に挿して飾ってある青い花だった。
冷「私が好きって言ったの。初めて会った頃、たった一度だけ...」
冬美「お父さん来たの?!」
冷「何度か来てるみたい。面会はしてない。まだ怖くて...先生もやめたほうが良いって。あの人が内心どう思っているかは分からない。体外的な理由かもしれない。けどね、置き去りじゃないよ。過去も血も、向き合おうとしてる事は確かだよ」
そう話す冷の表情は無理をして言っているわけじゃない。
冷もまた、過去を乗り越えて前を向いているのだと。
なぜか、2人の目にはそう映った。
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