Season4
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文化祭前日
もうすぐ日付が変わろうとしているPM11:35。
寝て起きれば文化祭が始まる。
最後の全体リハーサルも問題なく終わり、共有スペースには夜更かし組が集まっていた。
上鳴と峰田が大声で気合を入れて盛り上がっている。
芦戸「静かにっ、もう寝てる人もいるから!」
飯田「皆、盛り上がってくれるだろうか..」
『そういうのはもう考えない方が良いと思うよ。悪循環に陥るから』
耳郎「恥ずかしがったり、おっかなびっくりやるのが一番良くない。舞台に上がったら、後もう楽しむ..」
上鳴「お前めっちゃテレッテレだったじゃねーか!」
出し物を決めた時の耳郎の様子を茶化すように言う上鳴。
耳郎「あれはまた違う話でしょ..//」
何だかんだみんな明日の事が気になり、話題は本番の事についてばかり。
『あー、私も緊張してきた...』
そう言って項垂れながらそわそわし、マグカップに入った暖かいココアをすすった莉紗。
切島「おめぇも緊張とかすんだな?」
『私を何だと思ってる』
切島「そんじゃ、また明日もやると思うけど夜更かし組!一足お先に、絶対成功させるぞ!!」
「「「おお!!」」」
『夜更かし苦手なのに頑張ったね』
睡魔で皆の気合についていけてない轟を見て苦笑いした莉紗。
轟「ねみィから寝る」
『うん、おやすみ』
**
迎えた当日朝。
AM8:45
バンド隊、演出隊はクラスTシャツに制服のスカートとズボン。
ダンス隊はダンス用の衣装に身を包み後は本番が来るのを待つだけ。
演出で使うロープを買いに行った緑谷以外は準備が終わり、緊張と共に待機していた。
八百万「明鏡止水..落ち着きましょ、上鳴さん」
常闇「明鏡止水...」
耳郎「つか、爆豪。Tシャツ着なよー」
『そうだよ、せっかく作ったのに』
時が過ぎるのは早く、緑谷が戻らないまま開演の時間まであと5分となっていた。
麗日「デクくんはまだ?」
峰田「この期に及んで何してんだ!」
そして、迎えたAM10:00。
ブザーの音と共に、幕が開いた。
会場の期待を込めた声援や時々聞こえてくる野次が壇上に立つバンド隊のメンバーに更なる緊張感を与えた。
「1年!!」
「やれー!!」
「「「「八百万!八百万!」」」」
「「「「風舞!!風舞!!」」」」
職場体験中に拳藤と共にCM出演し、密にファンを集めている八百万。
そして、雄英体育祭以降校内・校外問わず認知度が上がり人気を集めていた莉紗。
まるで、推しアイドルの名前を呼び合うファン同士の戦いかのように2人のコールが会場全体に響き渡った。
そして、ダンス隊が1人..。また一人とステージに舞い降りてきた。
その中には、到着が遅れていた緑谷もセンターでしっかりと拳を突き上げ立っていた。
耳郎と莉紗はお互いを見合い、静かに頷き合った。
耳郎が1つ深呼吸した。
爆豪「行くぞコラぁ!!雄英全員、音で殺るぞー!!!」
爆豪のその怒号と共に莉紗が会場中に突風を吹かせた。
突然の風に会場の誰もが目を伏せたその時、爆豪の個性、爆破が放たれた。
その派手な爆発音に観客が驚きのあまり目を見開きステージに注目したその時、バンド隊の演奏が始まりそれに続いてダンス隊が全身を使って踊り始めた。
耳郎「よろしくお願いしまーす!!!」
歌が始まる直前に、耳郎が元気よく観客に向けて声を発した。
そして、耳郎と莉紗の歌声が交互にメロディを紡ぐ。
それに合わせダンス隊の振り付けがステージ上を華やかに飾った。
そして、1番のサビが終わり緑谷が青山を天井高くまで放り上げた。
最高到達点に到達するタイミングでは放たれたネビルレーザーは会場中を華やかに照らした。
ステージに降りてきた青山を尾白がキャッチし2番に入った。
緑谷がステージ裏に入り、峰田のハーレムパート。
観客の中には吹き出して笑う者もいた。そして、もうすぐ2番のサビに入ろうとしていた。
『(最終リハは何とか上手くいったけど...ミスなんか出来ない...1回目のリハで実感した。
私の風があるかないかで華やかさに大きな違いがある事。ミスは、絶対...)』
自分を追い込んでしまう程にミスは許されないと強く思いすぎてしまうが故に段々と肩に力が入り、手に汗を握っている莉紗。
その額からは汗が流れていた。
耳郎のパートに入り、莉紗が緊張のあまり目を強く瞑ってしまったその時..。
『!!』
冷気を感じた莉紗は冷気の出どころを探るため視線を横に向けた。
するとそこにはステージ横からまるで莉紗を安心させるように穏やかな表情で彼女を見つめる轟がいた。
「けど俺は、お前は出来るって信じてる」
『(焦凍くん....そうだ、焦凍くんは私を信じてくれてる。
...不安がなくなったわけじゃない。
でも、焦凍くんが信じてくれてる私を信じよう。たくさん、練習した。絶対やれる!)』
そして、2番のサビに入った瞬間。
轟の氷結が放たれ上空に足場を作り、それに続き八百万が紙テープと紙吹雪を創造した。そして..。
『♪Hero too I am a hero too.
My heart is set~』
耳郎「♪My heart is set」
『♪and I won’t back down~』
莉紗の放った広範囲そよ風が八百万の出した紙テープや切島が事前に削っておいた轟の氷の欠片を会場全体に舞い散らせた。
そして青山のネビルレーザーで輝くそれらは地面に落ちる事がなく浮遊を続けまるで体育館全体が万華鏡の中のように空間全体を明るく華やかに彩った。
気が付けば...始まる前は嫌悪感を隠そうとしない者も、見定めるような表情をしていた者も、A組を害悪として忌み嫌っていた者も..みんなが笑顔で共に踊っていた。
2人の歌唱が終わり、最後の伴奏。バンド隊は思わず顔を見合わせ笑顔いっぱいで笑い合った。
演奏が終わり会場には大歓声が響いた。大盛況で終わったA組のステージ。
見ている者達も、ステージ上に立つ者達も誰もが皆最高の笑顔を咲かせていた。
幕が下りて、会場の片付けに急いだA組。紙テープや紙吹雪、氷の欠片などは莉紗の風ですぐに回収出来たが氷は溶かす必要がある為、素早く壊して回収し外に持ち出すと爆豪や轟の個性を中心に溶かす作業に入った。
『B組の劇って何時からだっけ?』
氷を溶かす作業をしながら莉紗はふと思い出した事を口にした。
葉隠「確か~11時からじゃなかったっけ?」
麗日「莉紗ちゃん見たいん?」
『だってロミジュリとハリーポッターとロードオブザリングと...何だっけ?とにかくそれのごちゃまぜだよ?意味わかんなすぎて逆に見たい』
芦戸「意味わかんなすぎて見たいの理論も意味わかんな~い!」
声高らかに笑い飛ばす芦戸。
『そして、ロードオブザリングが個人的にファンだからどんな感じで織り交ぜられてるのかが気になる』
芦戸「へぇ~、じゃあもう始まっちゃうから見といでよ!」
『いや、まだ片付け終わってないし』
蛙吹「大丈夫よ、ステージ演出で見たいものがないメンバーでやっておくから」
耳郎「轟、一緒に行ってやりなよ」
轟「? あぁ」
『いや...轟くんいなきゃ片付け進まないでしょ』
葉隠「大丈夫大丈夫~、爆豪くんいるし!」
芦戸「氷なんてその内溶けるから心配いらないって~」
『爆豪超キレそう..』
ニヤニヤと笑いながら莉紗の背中を轟の方に押す2人に、2人で劇を見に行った事を知った時の爆豪のリアクションを想像し苦笑いした莉紗。
葉隠「轟くん、頼んだよ~」
轟「あぁ、分かった。行くか」
『ん』
**
女子たちの陰謀で半ば強引に2人で劇を見に行った轟と莉紗。
『マジで意味わかんなすぎて笑った』
轟「よくわかんねぇけど、お前が楽しかったなら良かった」
そう言って歩きながら買った三色団子を1本渡してきた轟に莉紗はありがとう、と言って団子を1つ口に含んだ。
『ごめんね、付き合わせて。女子たちに付き合った事は言ったけど別れた事は言ってないから一々こういういらない気遣い来るね』
轟「まあ、わざわざ自分から言う事でもねぇだろ。またその内付き合うんだし」
『(ホント、私達って何で別れてるんだっけ?って意味がわからなくなる時があるんだよなー)
だってこれ別れてる意味ある?』
轟「別に付き合ってなくても俺らなら一緒に回ってただろ」
『....そう、かなー。
(何その謎理論。幼馴染強すぎだろ)』
轟「多分」
『お互い彼氏彼女いるかもじゃん』
轟「....想像出来ねぇ」
少しのだんまりの後轟がため息と同時に呟いた。
『いや...まあ、うん』
轟「あー」
『ん?』
轟「想像出来ねぇというより、想像すんのが嫌だな」
『何で?』
轟「お前が他の奴と一緒にいるの想像したくねぇ」
『....え、焦凍くんそんな感じの人だっけ?』
轟「そんな感じって何だ?」
『え、や。だから...ヤキモチ妬く的な』
轟「........」
『(...ホントに私達別れてる?!)
ってか、ホントに私が他に好きな人出来たらどうすんの?』
轟「....燃やすか凍らす」
『こいつが言うとシャレになんねぇ....』
轟「そういやお前良いのか?」
『何が?』
轟「ミスコンってやつ。出るんだろ?」
『........』
轟「?」
『わすれてたー!!!!』
**
急いで更衣室に向かうと芦戸と葉隠に「遅い」「デート満喫してんな!」とめちゃくちゃ怒られた莉紗。
そして始まったミス雄英コンテスト。
それぞれ特技を披露したり何かしらで自分をアピールするコーナー。
B組の拳藤は青色のレースのワンピースに身を包み美しさと同時に瓦割で強さをアピールしていた。
司会「素晴らしいパフォーマンスです!!さて、続いてはヒーロー科1-A組風舞莉紗さん!!」
普段原色を好んで身につける莉紗だが、2人のコーディネートで足首までのロング丈の真っ白な透け感のあるレースのワンピースにピンクのコサージュを胸元につけ、髪はゆるウェーブにしハーフアップにしている。
『(2人とも....私のガラじゃないって言ったのに結局これにして...あーもう)』
気乗りしないままステージに出ると、大勢の観客が自分に注目しているのに更に気分が落ちた莉紗。
だけど...。
『(焦凍くん....)』
大勢の中でもすぐに見つけられる紅白頭の幼馴染の姿。
目が合うと、まるで頑張れと言わんばかりに優しい微笑みを向けられた。
『(あんな顔されたら...仕方ない。なかば無理やりとは言え、ここに立った以上全力でやりますか)』
莉紗は足の裏から風を出しゆっくりと空中に浮いた。
そして竜巻の中に自身を閉じ込め竜巻の力でゆっくりと回転を始めた。
両手のひらに握りしめていたキラキラ光るラメ入りビーズを手から離すと自身と一緒に竜巻に巻き込み回転した。
それはまるでスノードームの中で莉紗がラメと一緒に回っているようなイメージの世界感。
少しずつ回転数を上げていくとまるで竜巻そのものが光っているかのように見えるその美しさに観客たちは見入った。
そして回転数を下げていきラメをそよ風に乗せステージに降りる自身と共にゆっくりとステージに降らせていく。
司会「これはうっとりするパフォーマンスだー!!サポート科総なめのこのミス雄英、今年はヒーロー科もレベルが高いぞ!!」
そして、一昨年と昨年。ミス雄英の名を欲しいままにしているミスコン女王、サポート科絢爛崎美々美は黄金に光る自身の顔型の乗り物?に乗り優雅にステージ上を駆けまわった。
また、波動ねじれは空中に浮遊し自身の波動をなびかせエネルギー波で薔薇の絵を空中に描いた。
**
『あ~!!マジで心臓止まるかと思ったァ』
芦戸「風舞でも緊張することあんだねぇ!」
『だーから、私を何だと思ってんの』
麗日「莉紗ちゃん、お疲れ様!めっちゃ綺麗やった~!」
『あ、ありがとう...』
着替えを終えるとクラスの皆に囲まれ労われた莉紗。
耳郎「莉紗、あっちにアトラクションあるんだって。行かない?」
『ん、行く』
入学してから色々な事があったA組。
何の気兼ねなく皆で心から楽しめる文化祭というイベントを心から楽しんだ。
そして夕方に結果発表されたミスコンは波動ねじれが優勝となり、莉紗は特別審査賞に選ばれた。
その日の夜。
バンドに、ミスコンと慣れない事ばかりで疲労を感じた莉紗はゆっくりとお湯に浸かってから寝ようと寝る直前にお風呂に入った。
轟「莉紗、風呂入ってたのか?」
『あ、焦凍くん。うん、今上がったところ。こんな時間まで珍しいね、どうしたの?』
タオルで髪を拭きながら答える莉紗。
早寝習慣でいつもなら既に寝てる時間の轟が共有スペースに現れ目を見開いた。
轟「大丈夫か?」
『え、何?』
轟「大変だっただろ」
成功に終わったとは言え、演出の事で余計な負荷を増やしてしまった事をいまだ気にしていた轟は莉紗と話せる時間を待っていた。
『大丈夫だよ。もしかして演出の事まだ気にしてるの?』
轟「まあ..」
『でも焦凍くん達の提案のおかげでスゴく良いモノが出来上がったんだから。私は感謝してるよ?』
轟「そうか」
莉紗のその言葉に安心したような表情を浮かべた轟。
轟「そういや」
『ん?』
轟「あの日。特訓どうだったか聞いた時何か言いかけてただろ」
『...あー』
轟「何を言おうとしてたんだ?」
轟の言う"あの日"がいつの事を指すのかすぐに分かった莉紗。
その日の記憶を思い出しながらどう伝えたらいいか思案していた。
『あー..とね。その話しするには個性検査の話しからしなきゃならないから。どこかで時間作って貰っていい?』
轟「そんな複雑なのか?」
『複雑と言うか、私もまだ頭の整理が追いついてなくて』
轟「そうか。なら、時間ある時にな」
『うん』
轟「あ」
『ん?』
部屋に向かって歩き始めた轟が何かを思い出したように声をあげこちらに振り返った。
轟「ミスコン」
『ミスコン?』
轟「可愛かった」
『なっ..!?.////』
轟「おやすみ」
眠そうに目を擦りながら部屋に戻っていく轟。
急に爆弾を投下していったもんだから莉紗はおやすみと返す事も忘れ、頬を赤く染めたまま轟の背中を見送った。
『も...もう、ホントにドのつく天然なんだから...』
そして轟がいなくなりふぅと息を吐くと、1人ぼんやりと祖母に言われた言葉を思い返していた。
"熱を生み出す事は出来ている"
『本当に火の発現が、もうすぐ...なのかな?』
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