Season4
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そして、深夜1時を過ぎた頃
飯田「よぉし!これで全員役割決定だァ!!」
バンド隊に、耳郎・莉紗・爆豪・上鳴・八百万・常闇
演出隊に、青山・切島・轟・瀬呂・口田
そしてそれ以外のメンバーはダンス隊に決定した。
飯田「皆!!明日から忙しくなるぞ!!」
「「「「おぉ!!!」」」」
**
今日は土曜日。轟・爆豪の仮免補講も今週は休みの為午前中からひたすら練習に励んだ。
耳郎「うちらはひたすら練習!」
楽譜を見ながらまずはひたすら個人練習。
『響香ここなんだけど、どうも指止まっちゃうんだけど...』
本格的に演奏しようとすれば苦手な箇所が姿を現してくる。そこを耳郎にアドバイスしてもらいながらなんとかこなしていく莉紗。
その後も3時間程ぶっ通して練習したバンド隊。
今日はサポートアイテムの件で不二達に食事を誘われていた為、久しぶりに同中5人揃って昼食をとって練習に戻ろうとしていた時。
「風舞莉紗さん!」
『?』
突如背後から呼ばれた声に振り返ると見知らぬ顔の3人が立っていた。
『...何か?』
A「ハァッ...///
実物は想像以上でした!」
『ハァ?』
不二「あの人達は確か...」
B「我々ミス雄英コンテスト運営委員会!」
『.......それで?』
A「貴方の今年度のミスコンへの参加を推薦いたしま『断固お断ります』
「「「.........」」」
彼女の性格を知る同中の4人は予想通りの反応だ、と頷いた。
『それじゃ』
C「ちょ、ちょっとまーってください!!」
A「風舞さん、お願いしますよ。今年は例年にも増してハイレベルな戦いになりそうなんです。」
『なおさら嫌です』
B「ミス雄英には、美しさだけではなく知恵と強さも兼ね備えてる必要があるんです!!そう!貴方と言う選ばれし人材をみすみす見逃すわけにいきません!」
『選ばれてないし、そんな事に労力分けてる余裕ないんで』
A「手ごわいですねぇ。なら、風舞さん...参加していただければこちらを差し上げます」
『何ですか?』
A「ランチラッシュ処の1年間食べ放題パス!」
『..........』
A「いつどんな時でも何を食べても1年間はタダでランチラッシュの味を楽しめるんですよ
(ランチラッシュの味を釣りにすれば誰もが心揺らめく。これに釣られなかった人は今まで誰一人としていませんからね)」←資産家の息子の為彼の自腹。
誰もがランチラッシュ食べ放題に心揺れ動いているだろうと確信した。
『結構です』
A「何ー?!」
『別にお金に困ってないし食べたきゃ自分で出して食べるんで。ってかランチラッシュ1年食べまくったって破産するような金額じゃないし』
B「(リーダーのこれに釣られなかった人初めてみた...)」
A「さ、さすがは..育成の匠グルーガンとNo.5ヒーローウィンドリアの娘さん..」
『時間ないんでいい加減諦めてくださーい』
なびく事なく颯爽とその場を立ち去った莉紗。
A「諦めませんよー!!!」
と嘆く運営委員達の声を背に浴びながらバンド隊の練習のため音楽室に戻って行った。
不二「予想通り、なびかなかったねぇ」
乾「だが、話しを聞きつけたクラスメイト達に風舞が強制的に参加させる確率96.7%...」
**
その日の夕方。共有スペースでお気に入りのお茶を啜っている莉紗のもとに芦戸と葉隠が血相変えて寮に入って来た。
芦戸「風舞!」
寮の共有スペースで休憩していた莉紗に芦戸と葉隠が詰め寄って来たため何事かと2人を見上げた。
『ん?』
芦戸「何でミスコン断ったの?!」
葉隠「もったいないよー!莉紗ちゃんなら絶対いいトコまでいけんのに!」
何処で聞きつけたのか、ミスコン出場を推薦された事について掘り返されため息を吐いた莉紗。
『何で知ってんの...私のガラじゃないし』
上鳴「えー、風舞なら優勝も狙えんじゃね?」
近くにいた上鳴までもが便乗して、乗せようとしてくる為莉紗は立ち上がりキッチンに湯呑みを下げに行った。
『冗談でしょ』
芦戸「ほらほら!エントリーしようよ!」
『やだって』
芦戸「ねぇねぇ!轟だってミスコン出てる風舞見たいよね?!」
轟「ミスコン?」
『(振るなよ焦凍くんに、こいつらは....怒)』
ミスコンというものをよくわかっていない轟は目を丸くして聞き返した。
芦戸「端的に言えば良い女選手権だよ!」
『端的すぎだろ』
葉隠「衣装はドレス系だから轟くんも莉紗ちゃんのドレス見てみたくない〜?」
『何悲しくて私のドレスなんて..「あぁ、それなら見てみたいかもな」
莉紗の言葉を遮るように裏も表もない正直な本音を口にした轟。
『..........』
芦戸「ほらー!轟も見たいって!」
葉隠「莉紗ちゃん、行け~!」
上鳴「風舞ならぜってぇいけるって!」
3人に詰め寄られ、目の前にエントリーシートを差し出された莉紗。
『あ、あのね...!!』
轟「出ねぇのか?お前のドレス姿見れると思ったんだが」
そういう轟の表情はクラスメイト達には普段と変わらなく見えるが幼馴染の莉紗には分かる。好奇心に満ち溢れている表情とミスコンに出ないと言う事に残念がっているということが。
『(この男は...天然タラシ野郎!!口説いたような顔してんじゃねーよ!私とお前はただの幼馴染だぞコノヤロウ!)』
しかし、何だかんだ轟のお願いに弱い莉紗。段々と子犬のような顔で見つめてくるもんだから(もちろん本人は天然で、周囲の目にはいつものポーカーフェイスにしか見えていないが)中々に断りズラくなっていた。
『っ...わ、かりました!出ればいいんでしょ、出れば!』
芦戸「轟ナイスー!」
葉隠「莉紗ちゃんを絶世のお姫様に変身させちゃうぞ~!」
『しなくていい!///』
**
半ば強制的にミスコンにエントリーさせられた莉紗。
ミスコン出場における注意事項や当日の流れについての説明会がある為、指定教室にやってくると見覚えのある顔がいた。
拳藤「あ、風舞。やっぱアンタも出場すんだね」
『B組の拳藤。アンタも出るの?』
拳藤「んー、と言うより無理やりエントリーさせられたって感じかな」
苦笑いしながら言う拳藤。
その返答を聞いて莉紗も同じように苦笑いした。
『あー、そういうやつね。私もだよ』
拳藤「でもアンタは絶対推されるだろうと思ってたよ」
『? 何で?』
拳藤「B組でもアンタ結構有名だからさ。可愛いのにめちゃくちゃ強いって」
『んな、オーバーな...』
拳藤「ハハ、謙遜しなくていいって」
『でもこういうのホントにガラじゃないからマジで気が乗らない』
拳藤「ぶっちゃけ言うとあたしもだよ。ま、エントリーしちゃったからにはやるっきゃないって!」
『ん、同じ痛みを分かち合う友だね』
元来の性格がサバサバしている2人。話すテンションなどが同じで互いに話しやすいと感じ、息が合い連絡先を交換する事になった。
**
隙間時間があれば、1分足りとも無駄にせずに音合わせをしているバンド隊。
そんな中、バンド隊の練習場に演出隊がやって来た。
切島「よぉ!バンド隊、練習どんな感じだ?」
耳郎「結構いい感じだよ、何度か音合わせてるけど馴染んで来てるし」
切島「マジか!1回聞かせてくれね?」
爆豪「聞かせるか、クソが!」
鉢をクルクルと回しながら、ケッと言いながら切島の頼みを一蹴した爆豪。
『爆豪はまだ人に聞かせる自信がないみたい』
爆豪「んだとっ?!ゴラぁ!あるわ!聞かせ倒したるわ、クソが!!」
切・瀬「「(相変わらず爆豪の扱いが上手ぇこと....)」」
耳郎のカウントと共に始まった演奏。
多種の全く違う楽器の音が織り成すメロディーは、演出隊の耳に違和感も不快感も与えることなく耳に馴染み心を湧きあがらせた。
そして、前奏が終わり耳郎が大きく息を吸った。
耳郎「♪What am I to be? What is my calling?
I gave up giving up, I’m ready to go~♪」
『♪The futures left unseen It all depends on me.
Put it on the line to follow my dream~♪』
少しハスキーかかった耳郎の声。
心地良い音域の穏やかな莉紗の声。タイプの違う2人の歌声が紡ぐメロディーは、4種の楽器に負けることなくその存在感を示している。そして...
耳郎「♪Hero too I am a hero too.
My heart is set♪」
『♪My heart is set〜♪』
耳郎「『♪and I won’t back down~♪』」
サビに入った瞬間、今までに無いほどにメンバーの心を高揚させた。
そして2人の声が重なった瞬間、タイプの違う2人の声がお互いを打ち消し合うこともなくしっくりとマッチしお互いを溶け込ませている。
1番が終わり、演奏が終わると部屋の中は静寂と化した。
上鳴「うぇーい!どうよ?!」
一瞬の静寂が続き不安感に煽られたバンドメンバー。しかし、演出隊のリアクションはそれとは異なるリアクションだった。
切島「マジかよ!!スゲぇよ!もうプロじゃねぇか!!」
瀬呂「素人芸とか言ってすんませーん!!」
青山「僕のまばゆさには遠く及ばないけどネ☆」
歓喜のリアクションを見せた演出隊。
轟「スゲェな」
莉紗の元に近づき、至極真顔で褒めてくる轟に莉紗はリアクションに困りながらとりあえずお礼を言った。
『え、あ、ありがと..?』
演出隊の反応を見て、ひとまず安堵したバンド隊。
耳郎「とりあえず何とか形にはなってるね」
『あとは個人の技術向上かな?』
爆豪「死ぬ気で練習しやがれクソが!」
『ハイハイ』
上鳴「つーか、お前ら演奏聴きに来たの?」
瀬呂「あ、そうそう!風舞に頼みあったんだ!」
『私?』
まさか自分に用とは思わず、驚きつつも何だか良い予感はせず『何?』と聞いてみた莉紗。
轟「ああ、歌の終盤の演出でどうしてもお前の風が欲しい場面があってな」
『え、演奏しながら個性出せって事?』
轟「お前、合宿で確か手以外の場所からも風出せるように特訓してたよな?」
『そりゃしてたけど...』
轟「足から出して浮遊も出来るようになったんだから出来るんじゃねぇか?」
『んー...ちなみにどんな風をご所望?』
切島「終盤で八百万に紙吹雪出してもらうだろ?あれを会場全体に散るようにしてもらいてぇんだ」
『あー、なら無作為の広範囲そよ風くらいでいいんだ。どこかを狙うとかじゃないならまあ、出来るかも..』
瀬呂「サンキュー!風舞!!」
切島「よし、これでもう一回演出内容見直そうぜ!」
耳郎「そろそろ夕食の準備に入るし、うちらもこれくらいにしよ」
耳郎のその言葉にバンド隊も各々楽器を収容し帰宅準備を始めた。
轟「悪いな、仕事増やして」
片付けをしている莉紗に眉を下げて言った轟。
『ん?そんだけ妥協してないってことでしょ?大丈夫』
轟「どっちか持つ」
莉紗の通学バッグとベースを指さして言った轟に大丈夫、と言った莉紗。
轟「重いだろ」
『そういう傍目から勘違いされるような事するのやめなさい?』
轟「勘違い?」
『彼女だと思われるよ?』
轟「良いだろ別に。またその内なるんだから」
『あのねー。この距離感でいると別れた意味ないでしょ』
轟「俺らは元々このくらいの距離だろ」
『う"っ...』
轟は自分と莉紗の肩が触れ合うかどうかの距離感を指さして言った。
『....いや。そんな事、ないと、思う...』
轟「声小さくなってくのは何でだ?」
『...なの』
轟「ん?」
『私が..触れ合えないなら、近づきたくないの..寂しい...し...』
轟「..........」
『.............』
轟「...頼む、今は煽るのやめてくれ」
『~っ!!もう知らない!!///』
**
-莉紗side-
『あー、またミスった..』
耳郎「やっぱ同時は難しい?」
『んー、どっちもまだ慣れてないからなー』
耳郎「少し休憩しよっか」
私は今、とある難関に行き詰っていた。本番はもうあと数日に迫っているのにその難関だけがどうにもクリアが出来ずにモチベーションは下がる一方。
今も、皆が寝静まった静かな共有スペースでお気に入りのお茶を飲み気持ちを落ち着かせながらエアベースの練習をしていた。
轟「莉紗?」
ふと名前を呼ばれた方を見ると焦凍くんが立っていた。
『あ、焦凍くん』
轟「まだ起きてたのか?」
『あー、うん。ちょっとお茶飲みながらエアベースしてた。焦凍くんは?』
轟「お湯沸かしに来た。不安な事でもあんのか?」
『ほら、2番のサビ入るときの風出す瞬間あるでしょ?』
轟「ああ」
『風を出す事自体は出来るんだけど、タイミングがコンマの世界だからスゴい集中しちゃって、その直後弦を押さえる場所絶対ミスっちゃうんだよねー』
持っていた湯呑みをテーブルに起き膝を抱え込み、膝に顎を乗せていると急須と湯呑みを持った焦凍くんが隣のソファーに腰掛けた。
轟「悪りぃ、やっぱ負担かけちまったか?」
『ううん、1回風なしでリハした時に私も絶対あったほうが良いと思ったからそこは妥協しない』
轟「そうか。お前器用だからあっさりこなしちまうと思ってた」
湯呑みにお茶を注ぎながら言う焦凍くん。
『焦凍くんが思う程器用じゃないと思うけどなー、私』
轟「十分器用だろ。
俺も妥協したくねぇから、だからお前には頑張ってもらいたい」
『んー...』
頑張りたい気持ちはあっても中々進展しない現実に、少々心が折れかけている私は頑張るとも頑張れないとも言えず言葉を濁した。
轟「プレッシャーかけるわけじゃねぇけど...」
『ん?』
轟「お前なら出来ると思う。
お前は、スゴイ奴だけど。それ以上にスゲェ頑張れる奴だから」
『え?』
轟「俺には話聞いてやる事しか出来ねぇ。けど俺は、お前は出来るって信じてる」
『焦凍くん...』
轟「あんま、夜更かしし過ぎんなよ」
そう言って焦凍くんは湯呑みと急須を持って自室に戻っていった。
焦凍くんが、私の事スゴい奴って...。
今焦凍くんに言われた言葉はストレートに私の胸に突き刺さった。
私にとって、誰よりも自分を見て欲しい相手、そして認めて欲しい相手。
それは他の誰でもない焦凍くんだった。
そんな焦凍くんに、"お前はスゴい奴だから"なんて言われて浮かれないわけがない。
だからこそ、焦凍くんからの後押しは今の私には何よりもの栄養ドリンクとなった。
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