再会
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料理を皿に盛り付け大根の味噌汁、豚肉と玉ねぎの味噌煮、ニラ玉が並んだテーブルを轟が見つめた。
轟「お前..」
『ん？』
轟「すげーな」
『何？急に笑』
轟「冷蔵庫の中見て1分くらいでメニュー決めてただろ？」
『慣れだよ？』
轟「俺は出来る気がしねぇ」
『お褒めに預かり光栄ですっ。さ、食べよ！』
轟はお腹がすいていたのか、物凄いスピードで箸が進みあっという間に作った料理はなくなった。
轟「ご馳走様」
『お粗末様です』
轟が入れてくれたお茶を飲みながらホッと一息つく2人。
轟「お前の家の近くはどこか良い寿司屋あるのか？」
『んー、1人で寿司屋行かないからなー』
轟「そうなのか？」
『板前の寿司屋って贅沢な気がして笑』
轟「良いだろ、別に」
『良いの、今日寿司の魔力に溺れるから！』
轟「表現独特すぎないか？」
私のよく分からない表現に、轟が柔らかな笑みを浮かべた。
この人、こんなふうに笑う人だっけなー。大人になって変わったのかな。
轟「じゃあ車に詰んでくるから待っててくれ」
『あ、手伝うよ！』
轟の車は、このマンションのセレブ感っぷりから外車を想像してたけど、国産車のごく普通の乗用車だった。
『良かった。リムジン出てきたらどうしようかと思った..』
轟「お前は俺を何だと思ってんだ？」
『ボンボンヒーロー』
轟「やめろ」
車に荷物を運び入れ、夕食までの時間何をしようと相談をした結果結局の所まったりお茶を飲みながら話しをする事になった。
『轟はそろそろ独立とか考えてるの？』
雄英を卒業し、ジーニアス事務所にサイドキックとして勤め始め早5年が経った最近、爆豪が独立のことを考えてるような話をジーニストとしていたのを思い出し目の前の大人気若手ヒーローに問いかけた。
轟「ああ、いずれはしたいと思ってる」
『へぇ！さすがは野望デカいねぇ』
轟「お前も考えてるのか？」
『いやー、私は生涯サイドキックがいいかなぁ』
轟「まあお前自分で事務所もつのも良いが、確かに人のサポートの方が向いてるよな」
『ふ〜ん？』
轟「...言っとくけど本心だぞ」
『...なんかさ、昨日から思うけど轟の中の私の評価高くない？』
轟「そうか？」
『んー、まあいいや！評価されるのは嬉しいけどね』
轟「爆豪あたりはそろそろ独立考えてんじゃねぇか？」
『ご名答！』
轟「あいつも野望デカいからな」
『ジーニストと同期から誰か引き抜くか、って話ししてたわ』
轟「引き抜きか」
『まあ、切島とか上鳴とかその辺の仲良かった人だったけどね。轟なら誰か引き抜く？』
轟「そうだな...」
顎に手を当てて考え出した轟。
聞いたのは自分だけどそこまで本気で考え無くても...と苦笑いしながら返答を待っていると突然何か思いついたのか「あ..」と呟いた。
『ん？』
轟「いや、一番適任そうなのいたなって」
『ヤオモモ？』
轟「いや、お前」
『へ？』
平然と言った轟に私は意外すぎる返答に目を丸くした。
轟「お前いたら仕事捗りそうだ」
『ヤオモモの間違いじゃなくて？』
轟「違う、八百万こそむしろ経営者向きだろ」
『んー、まあね』
轟の言葉に納得しながら、轟の湯のみが空になったようなので新しいお湯を急須に入れながら次の言葉を待った。
轟「お前周りよく見てるから気が利くし、さりげなく周りの奴のフォローするタイプだろ」
『...そうだっけ？』
轟「ほら」
轟が指さすのは轟の湯のみに茶を入れる私の手元だった。
『....あー』
轟「日直の時とかそんな素振り見せずに気づいたら日直業務こなしてただろ」
『...んー。昨日から思ってたけど轟がそんなに、他人のこと見てたの意外だ』
轟「あー..まあ、な」
突然言葉が濁った轟に違和感を感じたものの自分でも無意識にやっていたことを褒められたようで轟の言葉は素直に嬉しかった。
轟「そろそろ行くか」
『そうだねー！』
轟の車の助手席に乗り、シートベルトを閉めると途端に緊張してきたのか肩に力が入り固まってしまった。
轟「どうした？」
『え、何が？！』
轟「何か、ガチガチになってねぇか？」
『や、何か男の人の車の助手席なんて初めて乗ったからちょっと緊張！』
轟「...それは、緊張するもんなのか？」
『分かんない..』
私的に多分、緊張する理由はもう1つ。
横を見ると、顔面偏差値鬼レベルの轟の顔が昨日久しぶりに会ってから今までで1番近くにあること。
そして、何より右手はドアに肘をかけ、左手でハンドルを操作してる姿が、妙に色っぽいから。
高校の時とは違う、大人な姿に多少なりともドギマギしてしまってる。
轟「..そんな緊張されるとこっちも気になる」
『ご、ごめんごめん』
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