共同作業
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家に着いた俺は風舞にシャワーを浴びることと鍵を開けておく事から入っていいことをLINEで入れ、シャワーを浴びに行った。
シャワーから上がると、いい匂いがするとと共に食欲をそそる調理音が聞こえてきた。
轟「風舞、何か作ってくれてんのか?」
シャワーから上がり首にタオルをかけキッチンに顔を出すと風舞が予想通り何やら料理をしていた。
『うん、ごめん。勝手にキッチン借りてたのと冷蔵庫の中身使わせてもらった』
轟「ああ、構わねぇよ」
テーブルに並んだ料理を見て相変わらずの手際の良さに感心しながら今日の飲み会も始まった。
轟「相変わらずすげぇな、この短時間で」
『でも簡単なものばっかだからすごくないよ?』
轟「簡単なのか..これはどう作るんだ?」
一番気になっていた揚げ出し豆腐を指さした俺。飲食店ではよく食うが自分で作ろうとは思ったことがなかったうえ料理がまるでダメな俺には作り方など想像もつかない。
『水溶き片栗粉つけて揚げ焼きしてだし汁つくって味馴染ませただけ』
轟「これは?」
『お揚げの中に納豆入れてグリルで焼いただけ』
轟「これ」
『少しだけ油引いたフライパンで焼くだけ』
轟「少しでいいのか?」
『焼いてたら鶏皮から大量に油出るんだよ』
轟「へぇ、今度俺にも料理教えてくれ」
『うん、いいよ?...ふふ』
突如笑いだした風舞。
轟「? 何だ?」
『や、轟子供みたいだなぁって』
轟「..子供は、失礼だろ」
『ごめんごめん、悪い意味じゃないよ?可愛いとこあるんだなーって思っただけ』
子供扱いされ、 少しムッとしたのが顔に出てたのか風舞が苦笑いしながら言った。
轟「男が可愛いって言われても、嬉しくねぇ」
『? じゃあどう思われたいの?』
轟「...........」
『轟?』
轟「そりゃあ....男だからな。可愛いよりは、かっこいいって言われる方が...」
『え..』
風舞が突然驚いたように声を発した。
轟「..何だよ」
『いや....轟はカッコいいなんて言われ慣れてるでしょ?』
轟「慣れてねぇよ」
『それは轟が周りの声気にしなさすぎなだけだよー!轟がカッコいいって思わない人の方が世の中少ないと思うよ?』
確かにお世辞や社交辞令で言われる事は多いが。
実際、言われたい奴に言われなきゃその言葉達は俺にとって何の意味も持たない。
『どうしたの?』
轟「..お前は?」
だから俺は恐る恐る聞いた。
『え?』
轟「お前は、どう思う?」
『私?轟は普通にカッコいいと思うよ?それに轟優しいし!
轟くらい良い男中々いないと思うけど』
風舞によく思われたい。トドのつまりカッコイイと言われたい。確かにそう思っていたが、予想以上にどストレートに放たれた言葉にかなり動揺してしまい風舞の顔が見れなくなり顔を逸らした。
轟「..........」
『轟?もしかして照れてる?』
俺の様子に、察した風舞が
俺の背後から近づいて顔を覗き込んできたから風舞の額に手を当て押し返してやった。
轟「見んなよ...」
『轟って、照れることあるんだね?』
からかうように言う風舞。
轟「俺を何だと思ってんだ」
『意外だなー、カッコいいなんて言葉で照れるなんて。だってイケメンとかカッコいいなんてプロヒーローショートを検索したらハッシュタグで出てくる代名詞みたいな言葉じゃん?』
轟「それは喜ぶ事なのか?」
『嬉しくないの?』
轟「.........」
『あ...轟、もしかして好きな人いるな?』
轟「.....何でだ」
『轟の好きな人はあんまりそういう事言わないから、他の女にキャーキャーカッコいいとか言われても好きな人に言われなきゃ嬉しくもなんともねぇよ!って感じじゃないの?』
轟「...........」
『図星だな、これは』
正直肝が冷えたと言うべきか、心臓がドキリとした。
『でも轟の事かっこいいって思ってない感じなの?』
轟「..思ってるみてぇだけどそれだけだ」
『あ、恋愛対象に入ってない感じね』
轟「...そういう時はどうしたら、男として見られるんだ」
『えー、普通に迫ってみたら?普通の女子は轟くらい顔良い奴に壁ドンとかされたらトキメクと思うけど』
轟「そうなのか?」
『よっぽど嗜好が変わった女子じゃなければね。あ、お酒まだ飲むよね?』
風舞がそう言いながら椅子には座らずキッチンに向かい冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫の中から、お酒を出そうと吟味しているのだろう風舞の背に近づくと、気配を察した風舞が振り向いた。
『あ、轟も選ぶ?』
俺がお酒を選びに来たのかと思ったらしく風舞は冷蔵庫の中身を見せようとして少し身体を避けたが酒なんてどうでもいい。
俺はただ...
ここ数日ずっといるからか、何度も2人で飲んでるからか完全に無防備な風舞の腕を掴んでドアを閉めた冷蔵庫に押し付けた。
『....え、な、なに?』
轟「お前は、どうだ」
『ど、どうって?』
轟「お前も、意識してくれんのか?」
『...え、どういう意味?』
轟「普通の女子は俺に壁ドンされたらトキメクんだろ?お前はトキめいてくれんのか?」
ダメだ。酒のせいで理性が働かねぇ。
顔を近づけると風舞は顔を赤らめて慌て始めた。
『ちょ、轟....酔ってる?』
轟「酔ってねぇよ」
『どういう意味で、聞いたの?それ...』
轟「........」
今ここで告げたら、これからの俺たちの関係が変わってしまうかもしれねぇ。今後のチームアップも気まずくなっちまうかもしれねぇ。
『と、どろき?』
轟「...好きだ」
蓋をして、忘れかけていた感情。
思わぬ再会。
そして、思わぬ展開で急に近くなった物理的な俺と彼女の距離。
昔よりも大人びた彼女の姿。
だけど昔と変わらない優しい笑顔。
寮にいた頃と変わらない飯の味。
全てを俺のものにしたい。
開いてしまった感情の蓋。そこから溢れた感情を抑えることは、もう出来なかった。
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