再会
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轟side
親父がジーニストとチームアップ会議があるからと俺を同行させた。
しかし、会議に参加するわけじゃない俺は、時間潰しに管轄ではないものの近辺をパトロールして回っていたらどこから叫び声が聞こえた。
声の方に近づくと、「ひったくり!」という女の人が叫んでいて犯人を探そうとすると明らかにそいつの持ち物じゃないだろう女モノのバッグを小脇に抱えた男が走っていたから氷結で捕らえた。
『と、じゃなくて..ショート?!』
男の元に近づくと懐かしい声が聞こえその声の主に目をやるとかつて雄英時代想いを寄せていたクラスメイトが驚いた顔で俺を見ていた。
轟「..ウィンディ?」
久しぶりに再会した風舞は幼さが抜け、落ち着いた雰囲気が増していた。
一緒に警察署まで被害者と犯人を送り届け対応記録を記載した後、親父達から呼ばれて、チームアップで対応予定の案件は俺と風舞に任せる事にしたと聞かされる。
思いもよらなかった相手との再会とチームアップ。
俺は、雄英時代に想いを伝えることは出来なかった。
何故なら、彼女には想いあった相手がいた。
ヒーローを目指す彼女とは違う世界で生きる、恋人という存在が。
──────
時は遡り雄英時代
彼女を意識したのは林間合宿の頃からだと自分で思っていたが、今思い返せばもっと前から俺の無意識下の意識の中に彼女はいたような気がする。
体育祭でプレゼントマイクが実況してたのを聞いて彼女が当時No.5ヒーローのウィンドリアの娘だと言うのを知った。
入学時から女子とは思えない程身体能力は高かったし、個性に至ってはクラスの中でもトップクラスの実力だったのを覚えている。
親がトップヒーローだとどこの家も英才教育という名の鍛錬をされるんだろうとぼんやり考えていた。
職場体験で、彼女は親の元にはいかずに爆豪と同じベストジーニストの所に行ったようだった。
親の元は甘えが出そうという理由で親の事務所に行かなかったらしく、ストイックな奴だと思った。
職場体験が終わった後の戦闘訓練で彼女と同じチームになったことがあった。
轟「風舞」
『あ、轟。同じチーム初めてだよね?よろしく』
轟「ああ、そうだな」
『轟と、ってさ。敵対したこともなかったよね?』
轟「ああ、縁がねぇんだな」
『無縁かー、同じトップヒーローを親に持つ縁はあったのにねぇ』
轟「お前の親は、ウィンドリアだったよな」
『そうそう、エンデヴァーに比べれば存在感も霞むけどね』
轟「.............」
『...?轟?』
轟「..あ、悪い」
『いや、ごめん。なんかちょっと地雷踏んだ?』
轟「いや、今歩いてねぇぞ」
『....ぷ、ハハハ!』
轟「なんだ」
『いや、真面目に..ぷぷ、ボケられたから...』
轟「別にボケてねぇ」
『地雷踏んだって、例えだよ?触れちゃいけない話題だったってこと』
轟「あー」
『轟、面白いね!』
そんな会話の後の戦闘訓練では、俺と風舞の相性が良かったのか、個性も強く戦闘センスもある爆豪と万能個性の八百万のチームに勝った。
その日の放課後、下校しようとした時たまたま校門で会って最寄り駅まで一緒に歩いた帰り道。
『轟の炎、私の風と相性悪いと思ってたけどそうでもなかったね?』
轟「ああ、むしろ俺の炎の威力と範囲の拡大が出来たな」
『また同じチームでやりたいね!でも、轟が敵は嫌だけど』
轟「お前も..」
『ん?』
轟「親に結構厳しく鍛錬されたのか?」
『え?』
轟「お前も結構戦闘慣れしてるだろ」
『あー...んー。まあ、それなりにね』
轟「そうか」
『でも、私がヒーローになりたいからそうしてくれたってだけで。別に無理やりとかじゃないんだよ?まあもう少し手加減してくれても..と思ったことは数えきれないくらいあるけど』
そう言って笑う風舞の顔は無理をしてウソを言ってるようには見えなかった。
『お前も..ってことは轟も?』
轟「...ああ」
俺は、同じトップヒーローを親に持つ仲間意識からなのか気づけば何故か風舞に自分の過去の事を話していた。
『.....そう、なんだ』
轟「悪い、急にこんな話して」
『ううん!轟が自分の事話してくれると思ってなかったから嬉しいよ!なんか、轟は同じトップヒーローの親持ち仲間として親近感あったから』
轟「親持ち仲間って、表現独特だな」
『え、そうかな?』
轟「まあ、俺もお前には同じような気でいた」
『じゃあ、これからは親がトップヒーローが故の悩みや葛藤を分かり合える仲だね?』
轟「そうだな」
この会話がきっかけで俺たちは連絡先を交換し、時々連絡をとりあうようになった。
それ以降、俺は女子に対してあまり自分から話しかけたり接したりしない方だが、風舞にだけは自分から話しかけることも多かった。
よく、親がトップヒーローであるが故の悩みなどを話し合い共感し合っていたこともあった。
しかし、彼女が俺の意識の中に強く残るようになったのは林間合宿での出来事からだった。
ヴィランの襲撃に遭い、俺はB組の円場を背負って爆豪と共に森の中を走っていた。
『轟!爆豪!』
轟「風舞?何でここに」
『緑谷が恍太くん探しに飛び出しちゃって..私も居ても立ってもいられなくてね』
轟「わざわざ危ない場所に入ってきたのかよ..」
『むしろ安全な場所なんてないよ』
爆豪「ケッ、足引っ張んじゃねぇぞモブ女」
『あんたもね!ヴィランに狙われてるんだから、足引っ張んないでよ?』
爆豪「うるせぇ!」
轟「喧嘩してる暇あったら進むぞ」
そして3人で森の中を歩いていると、最悪なことにヴィランに遭遇した。しかも、相手は地の利に長けていて現場の状況としては爆豪と俺の炎は森の中という地形的に不利だった。その為、俺の氷結と風舞の風だけで戦わなければならなかったが相手はかなりの手練れで防戦一方だった。
そんな中、俺に敵の攻撃が向いてきた。本能的にやばいと感じたものの、円場を背負っていた事とずっと氷結で対応し霜が下りまくっているのにも関わらず経験したことがない程に追い詰められた状況で体温調節をするのを忘れていたために動きが鈍ってしまっていた。その為、避けれそうにもなく覚悟を決めたその時だった。
『グッ...!!!!』
轟「風舞!!」
風舞が俺の前に立ち敵の攻撃を食らってしまった。
幸い急所は外してるようだが、敵から逃げ切るのは難しそうな状況で絶対絶命。その時遠くから明らかにいつもと様子の違うダークシャドウが見えた。闇が深すぎて制御しきれなくなり狂暴化したらしいダークシャドウは俺たちが防戦一方だった敵をいとも簡単に倒してしまった。
その後は色々あったが相澤先生やさらわれた爆豪を含め何とか全員無事に集まることが出来、俺たちは入寮した。
寮生活も落ち着いたころ、俺はあの時の事でずっと風舞に言いたかった事があった為放課後裏庭に呼び出した。
『どうしたの?』
轟「ずっと言いたかった。林間合宿の時...何で、庇ったんだ」
『え?』
轟「あんなケガまでして」
『そりゃ、庇うでしょ。目の前で仲間が危ないって思ったら、体も動くよ』
轟「けど」
『だって、ヒーロー目指してるんだよ?』
轟「!」
『自己犠牲精神が良いと思ってるわけじゃないけど、わが身可愛さに仲間見捨てるなんてヒーロー失格じゃない?』
轟「そう、だな」
『轟だって逆の立場ならきっと無茶してたよ。轟優しいし』
轟「優しい?」
『うん、轟って無頓着そうに見えて結構友情に熱いしね』
轟「...よくわかんねぇ」
『アハハ、そうだよね』
轟「けど、もうあんな無茶はやめてくれ。心臓に悪い」
『まあ、そうだよね。ごめん、気を付けるね』
この時には、気づけば既に風舞を目で追っていたし気がつくと彼女の事を考えていた。
経験も興味もなかった俺にでもそれが恋だと気づくのに時間はかからなかった。
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