再会
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今日も電車に揺られ、会社へと急ぐ。
本当にこれから仕事なのかと思うほどにラフなジーンズとパーカーにスニーカー。スーツは着ないし、可愛らしいスカートも選ばないし、ヒールなんて履いたこともない。
就業時間前とは言え、人がごった返す電車や駅のホール、通勤ラッシュで混み合う道路。いつどこでトラブルが起こるか分からない。いつどこで緊急出動要請が入るかわからない。
ヒーローとはそういうものだ。
そう、私風舞莉紗は雄英高校を卒業し、念願のプロヒーローになって早5年が経った。
クラスメイト達はどんどんとヒーローとして実績を残し、着実に知名度を上げていってる。
私は、というと街を歩けば声をかけられるくらいに知名度はある。
オールマイトが引退して以降、母ウィンドリアがずっと不動のNo.1であり続ける好感度ヒーローチャートでも今年の上半期では5位に、好きなヒーローランキングでも4位に選ばれていた。
そして、ヒーロービルボチャートJP上半期では、とうとう8位にランクインすることが出来た。私よりも圧倒的に好感度の低い爆豪の方がランクが上なのは悔しかった為、外仕事をもっとやらせてほしい..と心の中で少し思ったことは私だけの秘密だ。
卒業してからは、親の事務所にはいかずNo.3のベストジーニストの元に就いた。
身内の中だと甘えや贔屓目が多かれ少なかれ出ると思ったからだ。
トップヒーローの事務所ということもあり、その仕事量はとんでもなく多いが毎日多忙なりとも充実したヒーロー人生を歩んでいた。
[それでね、女子のみんなで集まりたいねーって芦戸ちゃんと声掛けてたんだけど莉紗ちゃんも行かへん?]
『いいねー、行く行く!』
[よっしゃー!でもどーせなら男子も呼んで同窓会みたいにしたいね?]
『確かにそれも楽しそう...』
[私ちょっともう1回芦戸ちゃんと話してみるわ!]
『ん、お願いね?』
昼休み中に偶然かかってきた元クラスメイトで好感度ヒーロー9位、好きなヒーローランキングで8位にランクインしたお茶子ちゃんからの電話。
同じクラスの芦戸三奈と偶然街で会って女子会やろうみたいな話しになって2人で電話かけまくってるらしい。
三奈の行動力もさすがだけど、相変わらずお茶子ちゃんはパワフルだなぁ。こう言ったら失礼かもだけど良い意味で全然変わってない。
卒業して以降、みんなで集まることなんてなかったから同窓会実現したら楽しみだなー。
『あ、やば。休憩終わる』
時計を見てハッとして、お弁当などを片付けいそいそと戻った。
爆豪「おい、風女!テメェいつまで休んでんだよ」
『何よー、時間過ぎてないんだからいいでしょ』
爆豪「仕事とろくせぇくせにきっちり休みやがって」
『爆豪はせっかちすぎだからもっとゆとり持った方がいいよー』
爆豪「んだとテメェ」
ジーニスト「2人とも、止めたまえ。毎度みっともない」
雄英時代のクラスメイトの爆豪は、卒業後同じくベストジーニストの元に就職した。この男こそ、粗暴な性格は高校時代から変わらずファンサービスも全くせずメディア対応もよろしくない為好感度ランキングでは圏外のくせに、高校時代から変わらぬその才能と戦闘力で圧倒的な事件解決力と実績を残し、ヒーロービルボチャートJP上半期では6位に選ばれていた。確かに、爆豪の事件・事故への嗅覚や解決に至るまでのスピーディーさは若手とは思えないほど迅速。と褒めるのも悔しいから絶対言わないけど..。
雄英時代から元々、ソリが合わずたまに言い合いをしていたが、同じ職場で仕事をしていると彼の性格も相まって、なおのことしょっちゅう言い争いになりジーニストの繊維で縛り上げられ止められるのはもはや日常茶飯事だ。
ジーニスト「ウィンディ、パトロールの時間だ」
『はい』
爆豪「あっ?俺はちげーのかよ」
ジーニスト「君は今日は中番だ。電話応対はしっかりやりたまえ」
爆豪「ケッ、クソが」
『ったく、爆豪の奴..毎日毎日絡んできて』
ジーニスト「いい加減君たちには落ち着いて貰いたいもんだが、何故そこまでソリが合わないのだ」
『さあ...?何故でしょう』
ジーニスト「まあいい。私はこれからエンデヴァーとの会議に行かねばならない」
『ああ、チームアップの件ですね?』
ジーニスト「そうだ、パトロールは任せたよ」
『了解です!お気をつけて』
1人でのパトロールにもすっかり慣れ、街を歩けば街の人やファンの人に声を掛けられ対応しながらも警戒体制は怠らない。しかし、近年は私達が学生の頃よりも随分平和になりヴィランの出現も大きく減った為基本的にはヴィラン退治よりも事件、事故やトラブルへの対処がもっぱら多い。
「ひったくりー!誰か!!」
すっかり秋になったなぁ、と冷たく感じる風に腕をさすっているとどこからか声が聞こえた。
すぐに走って声の方に向かうと女の人が泣きながら座り込んでいた。
その遠く向こうでは男が全力で走っていて、明らかに男の持ち物ではないレディース用のハンドバッグを手にしていた。
すぐに自分の背後に風を出し、追い風でスタートダッシュをし男を追いかけた。
個性を使ってる様子はない。
その為、更に追い風で男との距離を詰め残り1mくらいの距離になったところで男と同じくらいの竜巻を発生させ風の渦の中に閉じ込め、ようとしたが...
『?!』
バリバリっと言う効果音と共に視界に入ってきたのは、氷の塊だった。
逃げていた男はその氷に捕まり身動きが取れなくなっていた。
見覚えのあるそれに氷が現れた方向を見ると赤と白のツートンカラーの髪が特徴のかつての級友がヒーローコスチュームを身にまとい立っていた。
『と...じゃなくて、ショート?!』
轟「ふ..ウィンディ?」
今や人気だけでいえばトップクラスのヒーローショートが突然現れたことで街中も騒然となり、「ショートだ!」「サイン欲しい!」「写メろ!」など女子の黄色い悲鳴が聞こえてきた。
『何でここに?』
轟「エンデヴァーがジーニストと会議でこっちに出向いてて、その付き添い。会議中やることもねぇからパトロールに」
『そうだったんだ』
轟「とりあえずこいつ警察に連れていくぞ」
『あ、うん』
ショートと共に、被害女性と犯人の男を警察署に送り届けた2人。
事件への対応記録を記載し警察署を後にした。
『ありがとね』
轟「いや、気にするな」
『久しぶりだねー?最近エンデヴァー事務所とのチームアップなかったから』
轟「そうだな」
『卒業して最初の1年だけだったよね?』
轟「ああ、確かにそうかもな」
『ヒーローショートすっかり人気者だね!』
轟「そうか?自分じゃわからねぇ」
『いや、街歩く度に黄色い歓声上がってるじゃん?』
轟「ヒーローだからじゃないのか?」
『んー、轟は相変わらずだ』
それから少し談笑をした後、お互いの携帯がほぼ同時に鳴った。
確認すると、両者の上司からで公安の会議室で会議をしているから今から来るようにと命じられた為、2人は顔を見合わせその場所に共に向かった。
コンコン
『失礼します、到着しました』
会議室のドアをノックし、中に入るとエンデヴァーとジーニストが窓際に立ってなにやら会話をしていた。
ジーニスト「早かったな」
エンデヴァー「何だ、お前達一緒だったのか」
『ひったくり追いかけてたらたまたまショートが近くにいて代わりに捕まえてくれました』
ジーニスト「そうか、ちょうど良かった」
『なんかありました?』
エンデヴァー「かつてのヴィラン連合を崇高する信者が新たなヴィラン連合を作り何かを企んでいるようだとホークスから情報が入った」
轟「新たなヴィラン連合?」
ジーニスト「その拠点がどうやらこの街にあるというところまで掴めているらしい。そこで我々の事務所がチームアップを組みその拠点を見つけ出すことになった」
『はあ、それで?』
ジーニスト「そこで、この案件を君たちに任せようと思う。もちろん、何かあればバックアップはする」
轟「俺たちが、ですか?」
エンデヴァー「連合と言ってもまだ小さい芽だ。お前たちのキャリアにも繋がる良い案件だ」
『分かりました、やってみます!』
ジーニスト「君なら出来る」
『爆豪がヘソ曲げそうですけどね』
ジーニスト「彼は蚊帳の外という訳では無い。この案件の中作業を任せようと思っている」
『あー、なるほど。でもどっちにしろヴィラン退治に回れないなら不貞腐れますよ』
爆豪について懸念は残るものの与えられた仕事をしっかりこなせるようさっそく、現段階で分かっている情報を全て教えてもらい2人で話し合いをした。
『じゃあまずは拠点を探るのを優先して情報収集だね』
轟「ああ、空き家や簡易契約された不動産にも当たっていくぞ」
『うん』
こうして、轟との私の二人三脚が始まった。
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