short
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
なんでこんなことになったんだろう……
ヘリオポリスでストライクと私の愛機以外のGシリーズが奪取された後……
私は私の愛機でザフト機と交戦中、凄まじい衝撃を受け、何があったか分からぬまま意識を手放した。
気づいたら手首は鎖で繋がれ、硬いベッドの上に寝かされていた。
周りは鉄だらけで……血のような匂いがする。
(ここ……牢よね?ということはあの後まんまとザフトに捕まってしまったというわけね……これじゃあナタルに怒られてしまうわね……まぁ、あんなOSでザフトに敵うわけないけど。)
無駄鉄砲で突っ込んでしまうのは昔からの悪い癖だった。
でもあの場合仕方がないと思う……
襲撃を受けて、上官との交信も出来ない……目の前にはザフトの機体、これを無視できる?
まぁ結果がこれだけど。
(ナチュラルで一般兵の私になんの価値もないだろうし……やっぱり殺されるのかしら?短い人生だったわね……)
何故だか冷静だった。
というか冷静にならざるを得ない……
自分は縛られて何も出来ないのだから。
そうしてしばらく経った後、静かな空間に靴音がカツカツと鳴り響いた。
急いで飛び起きできる限り入口から離れた。
「ほう、あの機体のパイロットは女だったか。」
仮面を被った金髪の男性。
「……ここはザフトの艦ですね?私は捕虜として捕まったようですが、殺すつもりですか?」
率直に聞きたいことを聞いた。
どうせ何を言っても結果は変わらないのだから。
「今すぐどうにかはせんよ。私は君に必要性を感じているのだからな?」
「……必要性?」
「そのうち分かるさ。まぁ、居心地は悪いだろうがゆっくりしていってくれ。」
そう言うと、仮面の男は去っていった。
どうやら"すぐ"には殺されないらしい……
私に必要性があると言っていたが、どう使うと言うのだろうか?
そして少しして、また靴音が聞こえてくる。
さっきよりも軽めの音……おそらく別人だろう。
「食事だ。」
その声に振り向くと、そこには碧の髪と翠の瞳を持つ少年が立っていた。
あまりの美しさに見入ってしまう。
そして彼もぼーっとこちらを見ているようだった。
「な、なによ……」
「……!すまない、ナチュラルと接したのが久しぶりで……」
「……悪かったわね、そんなに顔が悪かった?」
「そうじゃない!綺麗だと思って……」
「……へ?」
まさかこんな美しい人に外見を褒められると思わなくて、私は固まってしまった。
「…………あ、貴方に言われると皮肉に聞こえるわ。」
「なっ!俺は正直な気持ちを言っただけだ!」
「はいはい、それよりお腹空いちゃった。それちょうだい。」
「あ、あぁ……」
彼はそっと持ってきたトレイを置いた。
メニューはパンとシチューと水……まぁ、質素だが捕虜なのだから仕方ない。
「いただきまーす!……ん!美味しいっ!!」
こんな状況でも味わって食べている私を見て、彼は呆然としていた。
そんな中お腹の空いていた私はパクパクと平らげ、あっという間にお皿の上の食べ物は綺麗になくなった。
「まるで掃除機だな……」
彼は苦笑いしながらそう言った。
「うるさいわね!貴方さっきから人の顔まじまじと見たり……デリカシーなさすぎっ!っていうか、食べる所まで見ることなかったんじゃない!?」
「いや、すまない……こんな状況なのに君は凄いなと思って……」
「……まぁ、私いつもこんな感じだからね。冷めてるってよく言われるわ。それに、起こったことは仕方ないもの。自分のミスだし……あと……」
「……?」
「コーディネーターの作る料理を食べられたんですもの!滅多にない経験だわ!」
「……は?」
「ぷっ!貴方その顔おかしい!」
完全に呆けている彼の顔に思わず爆笑してしまった。
そんな彼は私をみてムッとしている。
捕虜として慎ましくしているのが正しいのだろうが、どうしても彼とは話してしまう。
きっと側からみたら軍人……ましてや敵同士の会話には見えないだろう。
「そろそろ行かなくて大丈夫なの?暇じゃないんでしょ?」
「……あぁ、そうだな。そろそろ行くよ。」
「食事……また貴方が持ってきてくれる?」
冷めていた食事を食べて分かった。
きっとナチュラルに食事を持っていくことをみんな嫌がったのだろう。
でも彼は持ってきてくれた。
それに最初こそ緊張しているような面持ちであったが、今は戸惑ったり、苦笑いをしたり、少し怒ったり……素直にいろんな顔を見せてくれる彼になんだか安心した。
「毎回は無理だが、また来るよ。」
「……ありがとう。」
なんだか泣きそうになる。
強がってはいたが、やっぱりこの中で自分が唯一のナチュラルである事が少し怖かったのかもしれない。
でも彼と話すと、自分がナチュラルとか彼がコーディネーターとか……人種が違う事を忘れてしまう。
彼は軽く微笑むと、目の前からいなくなってしまった。
(コーディネーターでも……あんな人がいるんだ。私達と変わらないじゃない。)
私はなんで戦っているのか……少しわからなくなった。
それから彼は、余裕があるときはなるべく食事を置きに顔を出してくれた。
2度目には名前を聞き、次には年齢……そしてその次は趣味の話など、1回1回の短い時間でお互いのことを教えあった。
それはとっても楽しかったけど、ある時からぱったり来なくなった。
話し相手がいなくて、私は寂しい日々を送っていた。
そしてしばらく経ったある日、久し振りに彼が食事を持ってきてくれた。
「あ、アスラン!やっときた!」
「すまない……しばらくガモ…いや、別の艦に行ってたんだ。」
「また戦闘?軍人は大変ね。」
「……お前も軍人だろ?」
「今は捕虜だもーん!あ、今日はチキンだ!」
「……こんなに明るい捕虜なんてなかなか見れないだろうな?」
「ちょっと……檻にいるからって私は動物園の動物じゃないんだからね!?面白がらないでよ……」
「ふっ、すまない。」
私はそういうと食事に手をつけた。
いつもはあっという間に食べてしまうのだけれど、今日はアスランと久しぶりに会えたことが嬉しくて、無意識にゆっくり食べていた。
「ねぇ、アスラン……戦争ってなんであるんだろうね?」
「……いきなりどうしたんだ?」
「私はね、平和のために戦ってきたの。あんまりナチュラルだとかコーディネーターとかの争いにはあまり興味がなくて……でも、コーディネーターが地球の平和を壊すなら、それも仕方ないのかなって……」
「…………」
「でも私分からなくなった……アスランとこうして話しているとね、コーディネーターもナチュラルも同じ人間で変わらないんじゃないかって……だったら、戦う意味ってあるのかな?って……」
「……俺も同じだ。全てのナチュラルがお前のような奴ではないと思うが……考え方は少し変わったな。……でも、ナチュラルがプラントに核を撃ってきたことは事実だ。」
「そうね……それは私でもいい気はしなかった。……でも私たちは話し合えば分かりあえたんじゃないのかな?今の私達みたいに、お互いのことを話すことが……それが平和への道になったんじゃないのかなって。……だからって、私に何かできるかって言ったらわからないけどね……!ましてや今は捕虜で、多分もう長くないんだろうし……」
なんだか虚しくなり、私は顔を埋めた。
マイナス思考が止まることはなく、それはポツリと声に出た。
「私……死ぬのかな?」
「……珍しいな。今日はいつになくネガティブだな?」
「こんな私だって、死には恐怖するわよ。それに、まだ何もできないまま死ぬのはちょっと嫌ね……」
「そうか……この艦はこれからプラントに行くんだ。今、隊長が君の処遇をどうするか上層部に確認しているところだ。」
「そう、Gのパイロットであったことに感謝しないとね。そのおかげで今少しでも生きれているんだもの。あとついでにアスランにも会えたし。」
「……そうか、ついでか。じゃあ次の食事は他のものに頼もうか。」
「う、うそだから!!アスランが持ってきて!!」
「ははっ…!」
アスランは笑っているのになんだか悲しそうだった。
そんな会話をしているうちに、お皿の中はあっという間になくなっていた。
捕虜の食事なんて寂しいもので、ゆっくり食べててもすぐに終わってしまうのだ。
アスランは食器を下げ、2、3言葉を交わし去っていった。
私の心はまた虚しくなった。
これは死への恐怖だろうか……それともこの艦の中で唯一話せるアスランが離れてしまった悲しさからなのか……
私にはまだ分からなかった。
プラントに着いたら即殺されてしまうのだろうと思ったが、上層部は私を連れてきた仮面の隊長にこの件を一任したとアスランから聞いた。
そして驚くことに、私はその隊長のおかげでまだ生きられるらしい。
彼と初めてあった時に、私に使い道があると言われたが……何であろうと嫌な予感しかしない。
そして今度はプラントの歌姫が行方不明になったり、地球軍に人質にされたり……と思ったら引き渡されたりと色々なことがあったらしい。
アスランは敵である私に、馬鹿正直に情報を教えてくれる。
そして彼の親友……キラ・ヤマトのことも。
キラという人物は聞いたことないと思っていたが、軍人ではないらしい。
でも彼はコーディネーターだという。
あんなめちゃくちゃなOSをキラ・ヤマトという少年は書き換えたというのか……
私が何をしても出来なかったことを……
それを聞いただけで、コーディネーターにはやっぱり敵わないと思い知らされた。
ーーーーそれからすぐのこと。
私はいつものようにベッドで横になって過ごしたが、なんだか外が騒がしい気がする。
気になっても仕方ないと思い黙っていると、奥から聞き慣れた声が見張りと話している様子が聞こえてきた。
「ラクス・クラインはこちらにきていないか!?」
「いや……どうかしたのか?」
「部屋にもどこにもいないんだ……もしまた同じことがあったりしたら大問題だ。今全クルーが探している。お前も手伝ってくれ!」
「まじかよ!わかった!」
そうして見張りが離れたのかひとりの走り去る足音が遠くなっていった。
カツカツとこちらに近づいてくるのはおそらく……
「アスラン……?何があ「今のうちに抜け出せ!」
「…………え?」
アスランはそう言うと檻の鍵を開けて私の手錠を外した。
「な、何を考えてるの!?こんなことしてアスランどうなると思っているの!?」
「大丈夫だ。監視カメラは細工しておいたし、ラクスも思ったより巧妙に動いている……」
「ラクスって……歌姫の?彼女はまた行方不明になったって……」
「彼女はこの艦に隠れている。そう簡単には見つからないだろう……今ほぼ全員のクルーが必死になって彼女を探している。撹乱している今のうちに君は抜け出すんだ!今なら足つきが近くにいるはずだ。」
そう言うとアスランは私に銃を渡し、檻から出て鍵を締める。
銃で鍵を撃て、ということだろう。
外側から開けているのがバレたらアスランにも危害が及ぶ可能性がある……その為の処置だろう。
「……どうしてここまでするの?こんなことしてあなただって危ないの、わかってるでしょ?」
「平和を願う君が……ナチュラルとコーディネーターの和解を望む君が……こんなところで死んでいいはずがない。君は生きなくてはいけないんだ。」
「でも……私にはなにもできないよ……」
「それでも……君は俺の考え方を変えた。ひとりの力でも変えられることはあるんだ。」
「アスラン……」
「君の機体は今プラントにあるから返すことはできないが……量産型のジンなら君にも扱えるだろう。」
「簡単に言ってくれるわ。量産型といえどコーディネーターのものよ?私にできると思う?」
「あぁ。」
「もう、勝手ね……ほんとに。貴方わかってる?ここで私を逃したら、私達は敵同士に逆戻りよ?」
「どこにいても……気持ちは同じだと俺は信じてるよ。」
「……馬鹿。」
そう言い、私は銃を撃つ為構えた。
アスランが下がったことを確認し、鍵を撃ち抜いた。
壊れたことで簡単に扉が開く。
私は外に出ると、アスランと向き合った。
目頭が熱い……多分私は泣いているんだと思う。
「ありがとう。アスラン……お願いだから生きてね。」
「心配ない。ヘマはしないさ。」
そう言い出口へと走る。
少し走ったところでアスランに振り返ると、まだ彼はこちらを見て笑っていた。
「ありがとう、アスラン!私……貴方のこと好きになっちゃったかも。」
そう言うと、アスランはびっくり顔で頬を赤らめた。
可愛い、こんな少年に私は恋してしまったんだ。
アスランの姿をしっかり頭に焼き付け、私はまた走り出した。
「また会おう!!」
アスランの言葉に、私はさらに涙を流した。
あまり見られたくなくて振り返らずそれに答える。
移動中細心の注意を払ったが、ラクスの捜索の為かクルーと会うことはなかった。
私は難なく格納庫にあるジンに乗り、この艦を抜けた。
流石に警報がなったが、ただでさえバタバタしている為かすぐに追ってくることはなかった。
私は近くにいるであろうアークエンジェルを探した。
水滴が宙を舞っている。
この水滴がなんで出てくるのがわからない。
でも……ただただアスラン、貴方が恋しい……
お願いだから、無事でいて。
捕虜が逃亡したとの報告を受けたクルーゼは怪しい笑みを浮かべながら呟いた。
「やはり軍人では駄目か。誰か都合のいい存在はいないだろうか……いずれ使われるであろう"戦争を終わらせる鍵"を伝える存在は……」
to be continued?
1/1ページ