イザークくんと婚約しました。
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今日は婚約してから初めてのイザークとのデート。
こういったことが初めてのミナは緊張していた。
お見合いの前にお茶をしたことはあったが、あれは事情がまだよくわかっていなかったからさほど緊張しなかったが……
水色のワンピースを着ながら、鏡の前でぐるぐると回転する。
おかしいところはないだろうかと何度も確認してしまう。
お化粧や髪型も自分でセットしたが、問題ないだろうか……
トントン
「ミナお嬢様、イザーク様がいらっしゃいました。」
「……!わかりました!すぐに向かうと伝えていただけますか?」
「かしこまりました。」
ミナは最後に一回りし問題ないことを確認すると、イザークの待つエントランスに向かう。
「イザーク様っ!お待たせして申し訳ありませんでした……」
「いや、俺が早く来すぎてしまった。」
「あ、まだ30分前なのですね!ふふ、イザーク様ってせっかちなのですね。」
「……っ……早めに行動しないと落ち着かんのだっ!!」
「ふふ。じゃあ行きましょうか?」
「いってらっしゃいませ。ミナお嬢様。」
「行って参りますわ。家のことはよろしくお願いしますね。」
見送る執事やメイドにそう伝え、イザークのエスコートでエレカに乗り込む。
家から解放され、ほっと息をつくミナ。
「イザークくんのエレカあの時ぶりだー!」
「……使用人の前では礼儀正しいんだな。」
「お父様に言われているのよ……家の中では気が休まらないわ。」
「このまま映画館でいいのか?」
「うん!お願いしますっ。」
そしてそのままエレカは映画館へと向かった。
道中は緊張で話せなくなるのかと思ったが、イザークといると素でいれるのが嬉しくどんどん話しかけてしまう。
かといってイザークも嫌がる様子もなく、しっかりと受け答えをしてくれる。
(このまま映画を見ずにドライブしててもいいくらい……居心地がいいなぁ。)
「ミナ。」
「ん?」
「その……この前のドレスもそうだが……。……その服似合っているっ……」
「え…」
2人で顔を真っ赤にしながらイザークは運転を、ミナは外の景色を眺めた。
まるで体温が上がってしまったかのように熱い。
「あの……ありがとう。……い、イザークくんもかっこいいよ!」
「……あぁ。」
イザークの顔を覗き込むと、みるなっ!と顔を真っ赤にしながら叫んだので、ミナはその様子が可愛くて思わず頬を緩ませた。
そしてエレカはあっという間に映画館についてしまった。
「何みよっかー?イザークくんはよく映画見るの?」
「あまり見ない。お前が見たいやつを見ればいい。」
「そうだなぁ……じゃああれ!」
ミナが選んだのは、所謂泣ける映画。
といっても消去法だった。
恋愛映画は生々しいし、ロボットものは戦争を思い出しそうなのでできれば見たくない。
ホラーは苦手だし、アニメを見るイザークは想像できない。
と考えると今やっているもので残る映画は感動もの。
でも終わってみるとそれも間違いだったようだ。
せっかく頑張ったメイクは、涙でぐしゃぐしゃになり完全にパンダ目だ。
映画が終わった瞬間、イザークがこちらを凝視したのち吹き出すのをミナはいつまでも忘れないだろう。
「女のあんな顔は初めて見たな。」
「まだ笑ってるの!?もう忘れてよぉ!!」
映画の後に来たカフェで思い出し笑いをするイザークに、ミナは顔を赤くしながら訴える。
「イザークくん意地悪すぎっ」
「ミナがあの映画を選んだんだろう?」
「う……そうだけど……」
イザークはニヤッと悪い顔をしながらミナを見た。
ミナはプンスカ小言を言いながら、頼んだケーキを食べていた。
「イザークくんは涼しい顔してたね?あんまり感動しなかった?」
「どうせフィクションだからな。」
「そのフィクションで泣いてた私って……」
(イザークくんって本当完璧だなぁ……私とは大違い。感情を乱さないし冷静だし、大人だなぁ……ん?でも待って。アカデミーの時の彼はもっとこう……感情むき出しだったような?)
「…………何を見ている?」
「え!?見てた!?」
「見てただろ?思いっきり。」
「そ、そうかなぁー?」
「何を考えていた?」
「えと……」
正直に伝えたら怒ってしまうだろうか?
でも言わないままにしておく方が怒る気がするので、ミナは話すことにした。
「イザークくんって、もっと情熱的って言うか……怒ってたイメージがあったからなんか変わったなって。」
「……」
「……」
(あれ、やっぱり地雷だった……?)
ビクビクしながらイザークの返答を待つ。
イザークはふぅ、と息を吐き答えた。
「別に変わってなどいない。俺はあの時のままだ……」
「イザークくん?」
「ただ……お前とのことを真剣に考えているからこそ……緊張はしている……」
「へ!?」
「おいっ、そこで間抜けな声を出すなっ!!」
「はいぃ!」
(あ……今のは見たことあるイザークくんだ。)
「ふふ。そっか、イザークくんも緊張するんだね?」
「……お前は変わらないな。」
「え?」
「初めてここで話した時と、婚約した今と。」
「え?そうかなー?私も緊張してるよ?でもイザークくんといると素になれるの!」
「それは俺も同じだ。……ミナには人を素直にさせる力があるのかもな。」
「そんなことないって!きっと相性がいいんじゃない?」
「そうかもな……って俺が言いたいのはそういうことじゃない!!」
「…え?」
そういうとイザークは顔を真っ赤にさせ、視線を逸らした。
なにを言うのか見当がつかないミナは、首を傾げながら次の言葉を待った。
「俺が言いたいのはその呼び方だ!!」
「呼び方?あ、"くん"付け嫌だった!?」
「嫌ではない……が、普通はこうなった場合呼び捨てで呼ぶものではないのか?」
「……そうなんだ。ごめん、知らなくて……」
本当はいいとこのお嬢さんは様を付けて呼ぶのだろう。
だがそれはイザークも好かないし、ここまで来て関係性を変えるのも気がひける。
でもせめて呼び捨てで呼んでほしかったのだろう。
だがミナが"くん"をつけるのには、最初は自然とでたからだったが、今となってはきちんと理由があった。
「ねぇ、聞きたいんだけど……」
「なんだ?」
「イザー……ク…のことを"くん"付けで呼ぶのって他に誰かいる?」
「……いや、いないな。」
「じゃあ……やっぱりイザークくんって呼びたいな……私だけの特別にしたいなぁ、なんてね!」
嫌ならいいの!と付け加えたが、イザークは聞いていないのか呆けていた。
そして少し考えたのち……
「やっぱりそのままでいい。」
「…え!?」
「……っ……そろそろ行くぞ!!」
「え!ちょ……待って!」
イザークは席を立つと会計を済ませ、そそくさとカフェから立ち去る。
ミナは残っているケーキを平らげ、慌ててバッグを持ちイザークを追いかけた。
「待ってよ!!イザークくん!!」
ミナの自分を呼ぶ声に、イザークは小さく口角を上げた。