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数日経ち、いよいよ捜査隊からテロ組織のアジトらしき情報が上がってきた。
ブリーフィングルームに隊員を集め、情報の確認をするが、資料として送られてきた画像をみてイザークをはじめ全員が顔をしかめた。
「これは……壊れかけじゃねぇか」
そこは戦争の被害により、使われなくなったコロニーだった。
ディアッカの言う通り、映し出されているのはボロボロの建物。
壁は大きく崩れており柱しかない。
中の様子も見え、誰がみてもこんなところにMSなどあるはずのないと断言できるような状態だった。
しかし、実際ここを敵のMS隊が出入りしている様子も確認されている。
「本当にこんなところにいるのかねぇ。」
「だが、出入りしていると言うのであれば放っておくわけにも行くまい。」
「じゃあどうすんの?罠かもしれないぜ?」
特に良い案は出てこず、時間だけが流れる。
しかし沈黙を破ったのは意外な人物だった。
「……私が単身で潜入します。」
「「!!!」」」
そこにいる全員が息を飲んだ。
言ったのはミナだ。
内気な彼女がそんなことを言うと誰が思っただろう。
「だめに決まってるだろう!!お前、さっきの話聞いてなかったのか?罠かもしれないんだぞ!!」
「だからこそです。ここで戦力を欠くわけにはいきません。だから私1人で潜入し、情報を得てきます。」
「だからってなんでお前が1人で行くことになる!!!こんなことで命を無駄にするんじゃないっ!!」
「やらせてください、隊長!!何かあったらすぐ知らせますから……お願いしますっ!!」
ミナも譲らなかった。
人が言っても聞きもしないミナに、この女はこんなに頑固だったのかと驚愕した。
もしかして今回の組織に何か因縁でもあるのか?
イザークはミナを見つめた。
彼女は何か決意した様ではあったが……感情のない目をしていた。
こんな目をしたやつ1人でいかせられるか……
「……なら俺も行こう。2人なら何かあればすぐにげだせるだろう。」
「……っ……隊長!?だめです!!隊長を危険な目に合わせるわけにはっ……」
「うるさい!続けるぞ。」
ミナが何やら言っていたが、無視し作戦を伝える。
結局偵察はイザークとミナの2人で行い、すぐ助けに行ける様にディアッカ達が数名外で、残りは艦にてMS内待機という作戦で落ち着いた。
作戦が決まり、解散となるとミナはすぐイザークの元にやってきた。
「隊長!!どうしてあんな……」
「お前があの敵にどんな思い入れがあるかは知らないが、どうしても叶えたい望みがあるんだろう?」
「……え」
「それなら俺はそれを叶えてやる。だが死ぬことは許さん。必ずここに戻ってくるぞ。」
「……」
それに対してミナからの返事はなかった。
その代わりに彼女は消え入りそうな声で言った。
「……ありがとうございます。」
それはとても嬉しそうなものには見えなかったし、どちらかというと言いたくもないように見えた。
本当の彼女の気持ちはわからない。
「なーんであんなこといっちゃったのかねぇ。」
「うるさいぞっ!!その話はもう終わっただろう……」
執務室に戻ると、ディアッカがしつこく聞いてくるのでイザークは半分無視していた。
仕事を手伝ってくれるのはありがたいが、今のディアッカは本当に鬱陶しい。
無視していると、イザークにも春が来たんだな……と頷きながら独り言を話している……もうこの際1人でやったほうが楽なのではないかと思ってしまう。
「腹減ったなぁ……メシいこうぜっ!」
「もうそんな時間か。貴様のおかげでちっとも仕事が進まん……」
「そう言うなって!嬉しいんだよ俺は。」
「だからそうではないと言っているだろう!!」
仕事を途中で切り上げ、イザークとディアッカは食堂に向かっていた。
もう遅い時間だし自分たちがギリギリ最後だろう。
「そういえば最近ミナのファンクラブができてるらしいぜ?」
「何ぃ!?」
移動の途中で聞いたディアッカの言葉に目を見開き驚くイザーク。
皆ミナを煙たがっていたのではなかったのか?
そう思ってミナと接してきたが、狙っているものがいると思うとなんだか落ち着かない。
「あぁ、なんでもシェフのやつらから始まって、今じゃ隊員でもちらほらいるらしいぜ。」
「一体どこからそんな情報を得るんだ貴様は……」
呆れるように言ったが内心穏やかではない。
そんな話をしているうちに食堂にたどり着いていた。
案の定食堂には片付けをするシェフ以外誰もいなかった。
自分たちの食事をとろうとすると、食事はイザークとディアッカの分を含めて3食分余っていた。
「まだ食ってないやついたんだな」
「そうみたいだな……」
イザークは気にせず食事を受け取り、席に座る。
ディアッカと話すこともなく黙々と食べていると、ふとシェフたちの会話が耳に入ってきた。
「ミナちゃんほんと可愛いよなぁ!あの妹オーラがたまんないんだよー」
「さすがファンクラブ設立者だな。俺はよくわかんねぇけど」
ほう、あいつが設立者か……どうしてくれよう。
イザークの負のオーラが背中から湧いてくるのを、ディアッカは見逃さなかった。
無言で睨みを利かせ、今にも殴りに行きそうなイザークだったが……
「そういえばミナちゃん今日会えなかったよ俺ぇ……」
「それは残念だったな。お前ミナさんに執着しすぎだよ……いいから皿洗えよ。」
「だって昨日の夜から会ってないんだぜぇ?」
昨日の夜から……だと?
シェフ達も入れ替わりで休んでいるはずだからずっといるわけではないが、昨夜からずっと会えないなんてことあるのか?
ふと彼女が少し前にシミュレーションルームに篭っていたことを思い出す。
今回の作戦は重大だ。
……もしかしたらまたどこかで訓練でもしているのかもしれない。
今回の作戦で主に使うのは銃だろうから射撃場か?
ブリーフィングしたのは昨日の午後……つまりその後からずっと……?
そんなことを考えていると体が勝手に動いていた。
イザークは席を立ち、食堂を後にした。
ディアッカが呼び止める声が聞こえてきたが、どうでもいい。
すぐに射撃場に向かうと案の定そこにはミナがいた。
撃つのに夢中でイザークには気づいていないようだった。
撃ち終わったのを見計らって、イヤーマフを取るとミナは驚いたように振り返った。
「おい、食事はどうした?」
「え……え?」
困惑し何も答えないミナ。
いや、これが普段のミナか。
返答は聞かず、イザークはミナの腕を引き射撃場から出て行く。
そして先程自分がいた食堂へと向かう。
「た……隊長?どうしたんですか…?」
「いいからこいっ!……お前は、俺がこの間言ったことを忘れたのか?」
「え……?」
「無理をするな。」
「あ……」
思い出したのだろう。
ミナは慌ててイザークに謝罪する。
「申し訳ありません……でもこの作戦、失敗するわけにはいきませんので……」
らしくない低い声で彼女は言った。
その声に振り向くが、彼女は視線を合わせず思い詰めたような表情をしていた。
……そんな顔をしないでくれ。
何がお前をそんなに思い詰める?
出そうになる言葉をぐっと飲み込む。
きっと彼女は言わない。
言ったとしてもこの間のように曖昧な言葉で返されるのだろう。
「だからと言ってやりすぎだ……もしかして昨夜から食べていないのではないか?」
「え……な、なんで……?」
この反応は図星だな。
この間栄養失調で倒れたばかりだというのに……
そんなに大事なのか?この作戦が……
イザークは再び食堂へと足を向ける。
ディアッカは食事を終えたようで姿は見えず、自分の食べかけの食事だけがテーブルの上に置いてあった。
イザークはミナの分の食事を受け取り、自分の向かい側の席に置く。
そしてミナを椅子に座らせた。
「食べろ。」
「……はい。」
観念したのか、少しずつ冷めた料理を口に運ぶミナ。
そしてイザークも席に着き、残った食事を平らげた。
自分が食べ終わりミナのトレーを確認すると、さっきまで何を食べていたのかという程ほとんど減っていなかった。
食欲がないのかとも思ったが、昨夜から何も食べていないならそれはありえない。
「どうした?美味くないか?」
「……!!……いえ、違うんです……なんか食べられなくて……」
緊張しているのかもしれない、そう思った。
イザークはミナのトレーにある小皿にのったおかずを差し出し、
「ならこれだけでも食べろ。さっきの件もそうだが、お前が無理をして倒れている間に敵が来たらどうするんだ?訓練も大事だが、体を万全にすることを考えろ。隊長命令だ。」
「……はい。」
ミナはイザークから小皿を受け取り、ゆっくり口に運ぶ。
その様子をイザークは優しく見つめていた。
そしておかずを食べ終えると、ミナはフォークを下ろした。
本当にもう食べられないのだろう。
「ジュール隊長は優しいですね……」
「……そんなことはない。」
この前も正気のない目でそんなことを言われたが、今は悲しそうに微笑んでいた。
「なんだか……お母さんみたい。……あっ」
ぽろっと出てしまったのだろうか。
ミナは手で口を抑えて驚いた表情をしていた。
だれが母親だ、そう返そうと思ったが、次のミナの表情を見てその言葉は飲まれた。
「あ……あれ?…な、なんでっ……?」
ミナは次々とでてくる涙に困惑しているのようだった。
イザークも初めて見るミナの涙にどうしたらいいのか分からずただ呆然と見つめていた。
「ご、ごめんなさい……!!」
「……!?」
ミナはガタンと立ち、食堂を走り去っていった。
残されたイザークはミナの去った入り口を眺めながら、立ちすくんでいた。
「……ミナさん、食べないんですよ」
そこにファンクラブ設立者であるシェフがやってきた。
ミナちゃん、と呼んでいるようであったが隊長の前なので呼び改めたのだろう。
「来た時からみてたんですけどね……。1口たべたらすぐに片付けに来ちゃって……でも、今日は1品食べたんですね!安心しました。」
……知らなかった。
それは少食にしては食べなすぎだ。
今までよく体がもったなと思った。
ミナについて自分が1番知っている気でいたが、本当のところはまだ何も知ってはいなかった。
もっと知りたいのに、彼女はそれを許さない。
扉を開けようとしても、彼女がすぐに閉めてしまう。
どうしたら開けさせてくれるんだろうか……