Make believe
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それから数日後、再び元地球軍テロ組織のMS軍がプラントを攻めんと侵攻してきた。
ボルテールもプラントを守る為、反撃に出る。
もちろんミナも出撃していた。
ミナはいつものように軽やかにMSを撃破する。
……あまりにあっさりと。
確かにミナの腕はいい、だが今回の敵の攻撃はあまりに単調でまるでやられにきているかのようだった。
周りはミナが凄いから、と思っているようだったが、イザークの目には不審に移った。
半分以上撃破したところで敵MS軍は撤退していった。
「た、隊長…!!」
ブリッジにいたイザークに、戦闘を終えパイロットスーツのままのミナが話しかけた。
任務以外でミナから話しかける姿を目にしたことのないその場にいた全員が、驚きの表情で彼女を見つめた。
ミナはその視線に挙動不審になるが、首を横に振り意を決したようにイザークに近づく。
「どうした?」
「……今の戦闘、おかしくなかったですか?」
ミナも同じことを考えていたようだ。
いつもとは違う真剣な眼差しでイザークを見つめた。
「確かに、敵の攻撃が単調だったな……なにか罠でもあるのかもしれないな」
「…でしたら、何か策を打たなくてはいけないですね」
はきはきと話すその姿に、これが本当のミナなのではないかと思わずにはいられない。
「本部に捜査部隊を出すよう申請を出してみる。」
「お、お願いしますっ…!」
ミナは敬礼し、ブリッジを後にした。
イザークはその後ろ姿を見送り、
普段みせなかったミナの表情を思い出し、戦闘の時もこんな顔をしていたのかもしれないなと想像していた。
それから数日後、本部より今回のテロ組織の捜査隊が出動し、ジュール隊はその報告待ちをしている状態だった。
今日も報告がないまま、イザークはディアッカと共に雑務をこなしていた。
「おーい。捜査隊の報告とやらはまだ来ないのかー?」
雑務に飽きたディアッカが机に突っ伏しながら言う。
イザークは呆れたようにため息をつく。
「来ていたらこんなことしていない。」
「ですよねぇ」
ディアッカは諦めたのかまた書類とにらめっこを始める。
「でもさ、もし奴らのアジトとかわかっちゃったらどうすんの?」
「それは潰すしかないだろう。奴らはプラントを狙ってきているんだ…まぁ、機能できないくらいにはせんとな。」
「そうだよなぁ……」
そんな会話を挟みながらも、書類を着々と片付けていく。
「そういえばミナなんだけどさ…」
ディアッカが呟いたその名前に、イザークは手を止めた。
何故そうなったのかわからなかったが、なんとか平静を保つ為、息を吐きディアッカの言葉を待った。
「最近シミュレーションルームに籠りっぱなしみたいだぜ?」
「…何?」
「すげぇよな。あいつもうエースパイロットみたいなもんなのに…これ以上強くなってどうするつもりなのかねぇ。」
「……俺が知るか。」
「だよなぁ。あいついまだに任務以外では誰とも口聞いてないみたいだぜ?個人的なことは何1つ聞けないし、謎が多すぎるよな。」
「……」
イザークは驚いていた。
ディアッカは昔から人付き合い良く友達も多かった。
そんな彼でもまだミナとは話せていないのか。
では何故自分は資料室で会話できた?
イザークはどちらかというと無愛想で話しづらいタイプだ。
たしかにあの時本を取ってあげたが、それだけで話す理由になるのだろうか?
「なんだよイザーク、黙っちゃって………まさかミナのこと気になってんのか!?」
「そんな訳ないだろう!!というか貴様ぁ!!そんなこと言っている暇があったらさっさと書類を片付けろ!!!」
へいへい、とディアッカは再び書類に目を向けた。
図星ではあったが、そんな自分が信じられず否定するように怒鳴りつけた。
なんで俺があんな女1人に……
イザークはモヤモヤする気持ちを忘れる為、書類整理に集中した。
なんとか書類を片付け終わり、気づいたらもう夜になっていた。
集中しすぎたせいで、時間も忘れてしまったらしい。
急ぎではないものもやってしまった。
ディアッカもいつのまにかいなくなっていた。
とりあえず食堂に行き、夕食を摂る。
そして自室に戻ろうとした時、先のディアッカの言っていたことを思い出す。
『シミュレーションルームに篭りっぱなしみたいだぜ?』
「……」
気づいたら足はシミュレーションルームへと向かっていた。
少し確認するだけだ…そう言い聞かせて。
中を覗くと1台のみ稼働していた。
誰が入っているのかも分からず諦めて出て行こうとした瞬間、運良く中から人が出てきた。
中に入っていたのは……ミナだった。
「…え!?……ジュール隊長……お、お疲れ様です。」
何故いるのか?とでも言いたげな顔をしていたが、焦った様子でミナは敬礼した。
「……精が出るな。だが、あまり無理をするなよ。」
「…は、はい……ありがとうございます…」
俯き加減でそう言うと、ミナはそそくさとシミュレーションルームを後にした。
どのくらいいたのだろうか…イザークはさっきミナのいた台を起動させ履歴を確認すると……そこにはびっしりミナの名前が書いてあり、時間は多少時間の空きはあるものの何日も連続でやっていたのである。
…テロ組織が来る少し前くらいから。
イザークは問い詰めようとミナを追いかける。
……が。
「なっ…!!」
やっと追いついた彼女の体は力なく宙に浮いていた。
イザークはすぐさまミナを抱え医務室へと連れていった。
診断は……過労と睡眠不足、それから栄養失調。
ミナは点滴を指した状態でベッドに横になったいた。
医師はなかなか去らないイザークがいることで仕事がしづらかったのか、治療が済むと医務室から出ていった。
何故あんなに何日もシミュレーションしていたのだろうか。
青白い彼女の顔を見つめる。
こんな顔をしていたのかと頬を撫でながら思った。
怯えているわけでもなく、ブリッジにいた際の凛々しい顔つきでもない……あどけなさの残るかわいらしい寝顔。
コロコロと変わるよく分からないこの女性に、なぜか釘付けになっている自分がいた。
イザーク自身それが何故なのかはまだ分からなかったが……
触れていた頬がすこし動いた。
そしてゆっくりと瞳が開く。
ぼやけた視界の中にイザークを捉えると彼女はいつもの弱々しい顔つきに戻り、ガバッと体を起こす。
「た、隊長!?私どうして…?」
「どうしてではない。貴様が倒れて俺が運んだんだ」
「…え?倒れた?」
状況が理解できずにぽかんとしている彼女に、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「過労に睡眠不足、栄養失調……貴様、睡眠も食事もとっていなかったのか?」
「あの……えっと……」
しどろもどろになるミナ。
イザークはこのミナは得意ではない。
「答えろ」
「…っ……は、はい……」
焦れったい思いになり答えを急かした。
ミナはキッと睨みつけるイザークに思わず、ビクッと体を震えさせた。
こればっかりは震えているのを自覚出来た。
怯えているミナをみたイザークはいかんと思い、顔を立て直す。
「あまり無理をするな。体が壊れては元も子もないぞ。」
「…あ、はい……」
怒られると思っていたのか、拍子抜けしたような顔をしていた。
何故そんなことをしたのか聞こうと思ったが、今はやめておいた。
少しとはいえおそらく自分がミナと話せる唯一の相手なのだろう。
こう言う役目は苦手だが、自分がミナを気遣わなければこの女はいつか壊れてしまいそうだった。
だから今は彼女につき、少しでも心安らかになってくれればと思っていたのだ。
「あの……ありがとうございます!」
ミナは戸惑った表情のまま微笑んだ。
相変わらずまともな笑った顔をみることはできないが、彼女が笑うと少し安心する。
だが、彼女はまた表情を変えた。
あの時資料室で見たあの生気のない目だった。
「ジュール隊長は優しいですね……こんな私に……」
「ミナ?」
そんな顔をしないでほしい。素直にそう思った。
俺はなんと言えばいいのだろう。
彼女は何を抱えているのだろう。
前はなにも聞くことができなかった…今なら少し聞いてもいいのではないか?
イザークはミナから目線を外し問う。
「お前はどうしてそんな顔をする?何を背負っている?…どうして戦う…?」
疑問が全て声にでてしまった。
彼女は答えてくれるだろうか?
外した視線を戻すと、彼女は少し驚いたように目を見開いたが少し微笑み口を開いた。
「私は……大切なものを守る為に全てを捨てました。いえ、捨てるんです……」
「捨てる…?」
彼女が言っている意味は全くわからなかった。
でもなぜだろう…確かに微笑んでいるその表情は泣いているように見えた。
瞳は笑っているのに……口元も上がっているのに……
こんな悲しい微笑みはあるんだろうか……
胸がズキンと痛くなるようなその表情を見ていたくなくて思わずミナの頭を撫でた。
「……!?……たいちょ「黙っていろ」
自然と体が動いた。
ミナは驚いていたが、動かずにじっとしていた。
「お前はジュール隊の隊員だ。全ては無理だろうが、何かあれば隊長の俺に話せ。力になれるかどうかは分からないが話せば楽になると言うこともあるだろう?」
折れそうになる彼女をみていられなかったのかもしれない。
ディアッカがみたら、仰天して明日は吹雪だ!!とか言い出すのかもしれない。
でもミナをこのまま放っておくことはできなかった。
しかし、少し冷静になり自分の行動を鑑みると途端に恥じらいが生まれハッと手を離した。
「いつ奴らがくるかわからないからお前は休んでいろ。明日は動くんじゃないぞ!」
「え……あ……」
「隊長命令だ!!いいな!?」
「は、はい!……お心遣いありがとうございます!」
イザークは敬礼するミナを確認し、医務室を出ようとすると
「あの!!」
いつもより大きいミナの声が響いた。
イザークは振り返ると、ミナは顔を赤くしてモジモジし何か言いたそうにしていた。
「なんだ?」
なるべく優しい声色で言った。
彼女の声をもっと聞いていたかった。
「隊長……本当に、ありがとうございます」
「…あぁ」
さっきも聞いたぞ?と思ったが、真剣な顔で言うので返事だけ返し医務室を後にした。
あのお礼の中にはどんな意味が含まれているのだろうか。
あれからイザークは時間があくとミナの所在を確認し、困っているようなら話しかけるという生活を続けている。
といっても隊長であるイザークに空いてる時間など少なく、1日に1回行ければいい方だった。
ディアッカはやけにミナを気にかけるイザークに驚きを見せていた。
あのイザークがこんなにも他人に執着する姿をこれまで見たことがあっただろうか。
でも、今まで色恋沙汰のなかった我が親友がとうとう恋に目覚めたのかと思ったら嬉しくなった。
「イザーク!最近ミナと仲良いよな。」
「相談に乗っていただけだ。」
「ふぅん……」
そして1番の驚きが、今まで誰も普通に話したことのないミナと初めて話した相手がイザークだったということだ。
仕事の話だったら誰しもミナと話したことはある。
だが、それ以外の事はしどろもどろになりこちらが諦めるといった感じだった。
確かに今までイザークの周りにはいないタイプではあったが、まさかあんなに根気強く話しかけに行くとは……
そんな様子にミナも心を開いたのかもしれない。
一度部屋に来て、なんだあの女は!と物に当たり散らしたこともあったが……
今はそんな日も懐かしい。
「イザークはああいうのがタイプなんだな!」
「なんでそうなるっ!!」
ディアッカは勘違いしている。
あれは本当のミナではない。
確信はないが彼女は本当の自分を隠しているんだろう。
それは何故だか知らないが、知っているのは自分だけだと思うと嬉しく感じる。
だからあえてディアッカには言うまい。