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ミナはあの後置いておいたザフトのMSに乗り込み、本当のアジトに向かった。
そして用意された部屋………いや、正確には牢に入り泣きながら自分のしてきたこと、そしてイザークのことを思い返していた。
スパイとしてプラントに入りこみ、まずアカデミーに入った。
今まで軍に興味はなかったが、私は才能があるのかもしれない。
まぁコーディネーターだからかもしれないが。
成績は常にトップをキープ。
このままいけば目標のジュール隊に入れるかもしれない。
いや、入らなくてはいけないのだ。
それが私への命令なんだから……
『人とはなるべく関わらず、会話は必要最低限に。
戦闘では実力は惜しまず見せろ。そうすれば自然と信用は得られる。』
そう教えられた…
だからアカデミーから徹底してきた。
話しかけてくれる人もいたけど、人付き合いが苦手なふりをしてなんとか切り抜けた。
……心苦しかった。
でも私はただ1つの目的のためにやり遂げた。
アカデミーは首席で卒業することが叶い、命令通りにジュール隊に入隊が叶った。
ここからが本番だった。
『名は?』
『……は、はい…ミナ・ミューラルであります…』
実際目の前にしたイザークの気迫は凄かった。
さすがエリート部隊の隊長……
こんな人に私は敵うのかな…?
それからは毎日リーダーと通信をし、ジュール隊のスケジュールや様子等逐一報告していた。
『イザーク・ジュールの信用を得ろ。彼にのみ話せ。』
そんな命令を受けた。
……でも相手は隊長、赤服とはいえ入ったばかりの新入隊員と話す時間などあるわけがない。
そもそも興味がないだろう。
どうしたら信用を得られるのか……とりあえずシミュレーション、演習、戦闘すべて本気で取り組んだ。
でもこれでは普通の兵と何も変わらない。
どうしたものか……
何も策がないまま、半年が過ぎた。
イザークとは何もないまま1日1日を過ごす。
信用を得るには時間が必要な為、リーダーに何か言われるようなことはなかった。
ある日、スパイと言っても報告以外何もすることのなかった私は、資料室へと来ていた。
"ザフトの歴史"を調べる為。
高い位置にある本はなかなか取れず必死に手を伸ばしていると、後ろから手が伸びてきた。
反射的に振り向くと……まさかのイザーク・ジュール隊長が目の前にいらっしゃるではありませんか!!
ど、どうしよう…
なぜこの本を?みたいな…まぁ当然出てくるであろう質問をされたが、多分私はオロオロしていたんだろう……
イザークがイライラしている様子がすぐにわかった。
ミナはしばらく人と会話をしていない。
任務の際やリーダーとの通信では話しているが、業務的な内容だった為に、ミナにとって会話することが難しくなっていたのだ。
今演じているミナが本当の自分になってしまうのではないかとまで思ってしまう…
それでもこれは隊長に取り入るチャンス…ものにしなくては…!
そして思ったことを素直に話した。
過去の事も知らなきゃいけないと思った、と。
それ以上は話さなかったが、自分が壊そうとしているザフトが何でできたのか…何の為に戦っているのかを私は知らなくてはいけない気がしたのだ……
そして彼のことも知らなくてはいけないと思った。
だから聞いた。
『……隊長は……なんで戦うんですか?』
いきなりこんな質問してくるなんておかしな奴だと思われただろうか?
それでもイザークは答えてくれた……
『プラントの為に決まっているだろう。テロ組織がプラントを狙ってきているなら俺はそれを落とす。』
そうだよね…そうだと思った。
でも彼はかの戦争を戦ってきた英雄……
その言葉の意味がはるかに重いことを私は知っていた。
そして彼も尋ねる。
『俺も聞いていいか?なぜ貴様はいつもそんなに震えている』
驚いた…
震えている自覚なんてなかった。
でも手を見ると自分の手は確かに震えていた。
いつから?
イザークはいつもと言っていた…ということは入隊からずっとなのだろうか?
覚悟はしたつもりだった。
これから私がするのは殺人……
だから自分の良心は捨て、目的のために戦おうと。
でも、それでも私は……まだ覚悟が足りなかった?
わからない……
それでも戦うことが怖いのかと聞かれたら、それは違うとわかった。
私が怖いと思うことは多分……
大切なものを『失うことが、です』
このまま留まるとボロが出てしまいそうだったので、本を受け取りすぐに部屋に戻った。
「元々は諸権利を取得する為に作られたんだ。でもナチュラルからの被害をきっかけに警察保安組織と合併し、モビルスーツを主戦力とする軍事組織でもあるザフトが新たに創立並びに建軍された……か。」
1から調べてみると、胸が痛くなる内容が多かった。
ザフトは自分たちの種族を守る為に軍事組織になったのだ。
コーディネーターを、プラントを守る為に……ナチュラルから。
そんな彼らをこれから壊さなくてはいけない……
たしかに軍があるから殺しあったし、たくさんの悲しみを生んだのかもしれない。
それが今でもテロリストやクーデターが続く理由なのだろう…
私を使う組織だってそうだ。
コーディネーターに家族、友人を殺された…だから復讐する為に作られた組織。
でも復讐したら気は晴れるのだろうか?
憎しみはさらなる憎しみを生む…いつだかか、ラクス・クライン議長が言っていただろうか。
こんなことしても意味はないのに……
最初に仕組んだのはそっちだったのに……
……ジュール隊長だって、プラントを守っているだけなのに。
あぁ……やりたくないなぁ………。
私とイザークが接触したことを報告すると、数日後作戦を実行すると告げられた。
作戦といっても私はとにかく最終的にはイザークを殺せたらいい、というアバウトなものだったが……
組織はこっちが不審がるように攻めるから、作戦を立てイザークを引き込め、みたいなことを言われた。
とは言われても考えもつかない……
この手のことははっきり言って素人だし。
考えても何も出てこずイライラした私はしばらくシミュレーションルームに篭った。
でもさすがな度が過ぎたのかな?
イザークに見つかってしまった。
台から出ると目の前にはイザーク・ジュールがいたのだ。
あれは焦った。
台の中では完全に素だったから出たときにボロが出なくて本当に良かった…
普段のミナを演じ切ってよしっと思っていたのも束の間、部屋に帰る途中で私の意識は飛んで行った。
そして気づいたら白い天井。
しかも……
『た、隊長!?私どうして…?』
なんで目の前に隊長がいるのー!?
どうなってしまったの私!!!
『どうしてではない。貴様が倒れて俺が運んだんだ。』
『…え?倒れた?』
『過労に睡眠不足、栄養失調……貴様、睡眠も食事もとっていなかったのか?』
『あの……えっと……』
あぁ、やばい…
作戦が始まる緊張感で眠れないし、ご飯は前からだけど全然食べていなかった。
これは怒られるかな…?
イザークは自分にも周りにも厳しいことに有名だし……体調管理がなってないって軍人としてもだめだもんね……
うぅ、なんて答えようかなぁ……
意識したわけではないが、返答に困っている様子がいつものミナのようだったかもしれない。
イザークは痺れを切らし答えを急かしてきた上に、少し睨みを利かせている。
今誤魔化しても通じないだろうし、正直に応えることにした。
それにしても怒っているイザークの迫力ったらすごいすごい……
これは震えてしまう……
でもイザークの口からでてきたのはお怒りの言葉ではなく、労いの言葉だった。
『あまり無理をするな。体が壊れては元も子もないぞ。』
『…っ…は、はい……』
怒られない…?
今怒る雰囲気だったよね?
拍子抜けして思わず固まってしまった。
でも隊長に心配をかけたのだからお礼を言わなくては…!
私は急いでイザークにお礼を伝えた。
『ジュール隊長は優しいですね……こんな私に……』
こんな私に…スパイの私に……
あなたをみているとなにかを思い出す……
いつも私を心配して労いの言葉をかけてくれるだれかを……
『……お前はどうしてそんな顔をする?何を背負っている?…どうして戦う?』
質問攻めするイザークをふと見つめると、イザークは神妙な面持ちをしていた。
イザークもこんな顔をするのかと私はまた驚いてしまった。
自分でどんな顔をしているか正直わからないからその質問には答えられない。
何を背負う、なぜ戦うのか…その答えを言うことは許されない。
私はスパイなんだから……
でもこれくらいは許されるだろうか?
『私は……大切なものを守る為に全てを捨てました。いえ、捨てるんです……』
『捨てる…?』
あの時なんでこんなことを言ったのか自分でもわからない。
まぁ、何も話さないと信用は得られないと思ったからか。
それと……なんとなくイザークには話してもいいかなって思ったのかもしれない。
そして次の瞬間、驚くことにイザークは私の頭に手を置いてきたのだ。
こんなことをするイザークにあたふたする私……
『たいちょ『黙っていろ』
耐えきれず出した声も発することは許されず、私はただじっとしているしかなかった。
でも頭からじんわり感じる体温が心地よくて、私はただ目をつぶり落ちてくるイザークの声を聞いていた。
『お前はジュール隊の隊員だ。全ては無理だろうが、何かあれば隊長の俺に話せ。力になれるかどうかはわからないが話せば楽になるということもあるだろう?』
その声は今まで聞いたことのないような暖かくて優しい声色だった。
いつも厳しい怒声を響かせているイザークとは思えない。
別人なのではないか?と思い、顔を覗こうとするがそれは許されないのか手に力が入った。
だが、それで我に帰ったのか手がバッと離れ
『いつ奴らが来るかわからないからお前は休んでいろ。明日は動くんじゃないぞ!』
『え……あ……』
『隊長命令だ!!いいな!?』
『は、はい!……お心遣いありがとうございます!』
イザークの気迫に負け、思わず敬礼してしまった。
本当はそういうわけにもいかないだろうと思ったのだが、隊長命令とあれば従わないわけにはいかない…
そんな私をみて安心したのか、イザークは医務室を出ようと扉に向かっていった。
このまま見送るつもりだったが、さっきはイザークの勢いに負けてお礼を言ってしまった……
しっかり気持ちを込めてお礼を言いたくてイザークを引き止める。
『隊長……本当に、ありがとうございます』
イザークは2度目のお礼に戸惑っているようであったが、返事をすると静かに医務室を後にした。
イザークと過ごした時間を思い出すと、なんだか心が温かくなった。
それと同時に罪悪感でいっぱいになる。
これから自分がすることを考えると……