公安課内のあれこれ
名前を設定して下さい☆
唯夏通常、夢設定のデフォには「ナツキ」という名前を使用しています。
が!
今回、それが使えなくなってしまいました(笑)
何故かは本編で……
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ある日のお昼休みが終わった頃。
津軽さんが、銀室長に呼ばれて室長室へ行った。
暫くしてからブツブツと何かを呟きながら室長室から出て来た津軽さんは、手元のメモのようなものから視線を外さないまま溜め息をついた。
「モモ~」
「今日、百瀬さん休みですけど……」
「あ~~そうだった……」
津軽さんは、どうしようかな…と小さく呟きながら頭を搔くと、不意にぱっと何かを思い付いたようなキラキラした眼差しを私に向けた。
「ウサちゃん!丁度いいからデートしよ!」
「!!??!?」
公安課ルーム内の空気が、急に不穏なものになる。
「は!? まだ勤務時間中ですけど?」
「いいの、いいの!室長から許可貰ってるから!」
空気を読まない津軽さんは、半ば鼻歌交じりにスーツのジャケットを着込むと室内に声を響かせた。
「じゃ、ウサちゃんとデート行って来ま~す!」
「………………」
公安課ルームに居た皆さんからの視線を痛い程受けながら、手を引かれて出掛ける羽目になった。
ー ー ー ー ー
「ちょっと待って下さい、津軽さん!」
「ん~?」
「何処に行くんですか?」
「お使い。銀室長の」
手にしたメモをヒラヒラとちらつかせ、津軽さんは再び溜め息を付いた。
「なんかね~。買って来てって頼まれたんだけど、何だか分かんないんだって」
「分からない?何がですか?」
「コレ」
津軽さんが見せてくれたメモには、何やらファンシーな名前が書かれている。
(はじっコぐらし!?)
(これを、ホントに銀室長が買うの!?)
信じられない気持ちで、津軽さんの顔とメモを交互に見つめていると。
「奥さんに頼まれたんだってさ」
「へぇ…… ぇ?奥さん!?」
こんな可愛らしいもののお使いを室長に頼む奥様って何者!!??
…そんな考えが表情に出ていたのか、津軽さんが笑いながら言った。
「姪御さんのとこの子が、欲しいって」
「あ……そうなんですね……」
妙にホッとして、溜め息をついた。
(でも、待って?)
(もしかして、あの室長が尻に敷かれてる…とか!?)
変な考えがぐるぐると頭の中を巡る。
…と、その時不意に津軽さんの足が止まった。
「!!?」
鼻を思い切り津軽さんの背中にぶつけて、抗議の一声でも挙げようかと顔を見上げると。
「しー、静かにして」
言葉と共に、視線で確認を促す。
その視線の先に居たのは……今日、休みを取っている彼だった。
「えっ!? 百瀬さん!?」
つい、大きな声を出してしまい、津軽さんに口を塞がれる。
「バレちゃうから!声出しちゃダメ」
「………!!」
うんうんと頭を縦に振り、手を外して貰う。
百瀬さんの隣を女の子が楽しそうに歩いている。
(彼女!!)
(あれ、でもあの後ろ姿…?)
彼女の顔は見えないが、百瀬さんの表情は心做しか柔らかく、微笑んでいるように見える。
(あんな顔出来るんだ……)
「彼女には優しいんだね」
「後で色々イジってやろうっと」
「駄目です…!もう、行きましょう…!」
ふふふ、と意地悪に笑う津軽さんの袖を引っ張り、何とかそこから離れようとしていると。
踵を反してこちらを向いた百瀬さんと目が合ってしまった。
「………!!」
「チッ……」
盛大な舌打ちが聞こえる。
「尊くん、舌打ちなんかしちゃ駄目だよ!」
そう言って振り返ったのは…見慣れた顔だった。
「あっ、唯夏さん!」
「ちゆちゃん!!」
「お久しぶりです、元気でしたー?」
そう言いながら、百瀬さんの腕を引っ張り歩いてくる。
「……っ、おい……!」
引っ張られて嫌々歩いてくる百瀬さんにはお構い無しで、ちゆちゃんは私と津軽さんを見てにこにこと笑う。
「今日は、唯夏さん達もデート?」
「も!?って!?」
「そーなの、デートなんだー♡」
「いやいや、お使いの途中で…」
「ふぅん?」
何か言いたそうに首を傾げるちゆちゃんと、居心地悪そうな百瀬さんの取り合わせが妙にアンバランスだ。
「千雪」
「捜査中かも知れなかったんだから、話し掛けちゃダメだろ」
百瀬さんは津軽さんにぺこりと頭を下げ、ちゆちゃんの手を引いて去ろうとする。
「だってさ、唯夏さんと班長さんが一緒にいる時になんて、滅多に会えないじゃない!」
「会った時には、ちゃんとご挨拶しなきゃ駄目なんだよ?」
「……分かったよ……」
百瀬さんは深い溜め息をつき、諦めたように腕を組んだ。
えぇ~~!?
あの、津軽班の野犬が!百瀬さんが大人しく言う事を聞いてる!?
ちゆちゃん恐るべし…!
それから他愛のない話を少しして、二人とは別のお店に行くと言って別れた。
ー ー ー ー ー
それにしても、今日は。
銀室長と、奥様といい…
百瀬さんと、ちゆちゃんといい…
以外な一面を見てしまった気がする。
公安刑事と一緒に居るからには、旦那さんや彼氏を尻に敷くくらいの度胸は必要なのかも知れない。
「モモもあぁ見えて実は、こっそり尻に敷かれるタイプなのかもねぇ」
「!?」
私の考えを読んだような津軽さんの言葉に驚いて、顔を見上げると。
その唇が綺麗な弧を描く。
「俺は、敷かれないけどね?」
「な……っ!何言ってるんですか!敷きませんよ!」
赤くなった頬を見られたくなくて、俯きながら津軽さんの腕を引いて歩き出す。
「早く、買い物済ませて帰らないと…」
「えー!せっかくのウサちゃんとのデートなのにー?」
「デートじゃありません!」
「公安課に早く帰っても、つまんないだけじゃん」
津軽さんは、本当につまらなさそうに口を尖らせる。
「こういう時くらい、ゆっくり独り占めさせろよ…」
小さく呟かれた最後の言葉は、喧騒に紛れて溶けていった…。