「嵐」のあとの嵐
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Heroine side
『ザー―――』
あっという間に暗くなった空から、雨が降り出した。
それは、みるみるうちに強くなっていく。
「うっわー… 凄い雨だねー」
「ゲリラ豪雨ですね…」
行確を終え帰庁途中だった私と津軽さんは、慌てて近くの喫茶店の軒先に逃げ込む。
店員さんが席を案内してくれるが、二人とも結構濡れてしまっていたため、席に座るのを躊躇った。
「どうしましょうか…」
「今日は、このまま直帰するしかないかなー」
津軽さんはそう言いながら、スマホを取り出す。
「……モモ? あぁ。こっちはOK。雨に降られてさ、そっち帰れないから……」
津軽さんの電話を隣で聞きながら、ハンカチで濡れた髪を拭く。
(何だか…ちょっと寒い)
無意識に震える自分の体を抱いた。
急に濡れた服のせいで、体温が少しずつ奪われているのかも知れない。
「……クシュン」
小さなくしゃみをした私に、津軽さんははっと視線を向ける。
電話を切り、スーツのジャケットを脱ぐと私の肩に被せ、手を取り歩き出した。
「津軽さん?」
「帰ろ?」
「公安課、戻らなくていいんですか?」
「モモには、このまま帰るって言ったから」
店員さんが貸してくれた傘を差しながら、手を引かれまだ強めの雨の中を歩く。
傘を私の方へ傾けてくれているらしく、津軽さんの肩はさっきよりも濡れてしまっている。
(ジャケットも貸してくれたし)
(何だかんだ言ってても、優しい所はあるんだよね……)
* * *
ほぼずぶ濡れになりながら、やっとの思いでマンションまで辿り着いた時…重大なミスに気付いた。
「あ……っ!」
「どうしたの?」
「家の鍵、ロッカールームのバッグの中です…」
もともと帰庁予定だったため、財布以外の荷物は全部置いてきてしまっている。
こんなに濡れたままでは、取りに戻ることも出来ないだろう。
「どうしよう……」
「そうだなぁ……」
同時に呟きが漏れ、驚いて顔を見上げると…そこには柔らかく微笑む瞳があった。
「俺の部屋に、おいで」
「!!?」
「このままでいたら、風邪ひいちゃうでしょ?」
「でも…」
津軽さんは口ごもる私の唇を指で制し、私の手を引いたまま廊下を戻る。
「えっ…ちょ……」
「班長命令」
「!!?」
半ば強引にエレベーターに押し込まれ…結局、津軽さんの部屋にお世話になる事になってしまった。
(仕方無い)
(背に腹はかえられない…よね)
* * *
「はい、これ使って」
私にタオルを渡すと、津軽さんはネクタイを解き濡れたシャツを無造作に脱ぎながら、やや乱暴に髪を拭く。
その姿は、見てはいけないと思いつつも目を奪われる。
(!!)
(なんでこう、無駄に格好良いの……)
「ウサちゃん?」
「えっ? あっ! はい!?」
赤くなった頬を見られたくなくて、タオルを被りながら俯いて誤魔化した。
でもきっと、津軽さんには全てお見通しなんだろうと思う。
「シャワーだけでいい?それとも、バスタブにお湯溜める?」
「……へ?」
「身体冷えちゃったんだから、温まらないとねー」
女の子なんだしー、と言いながらバスルームへ向かう津軽さんの背中を見て、頬は更に熱くなる。
(こんな時だけ女の子扱い!?)
完全にイケメンの無駄遣いだと思う。
でも、強く出られないのは惚れた弱み…と言うべきか。
(こうやって、どんどん好きにさせていくんだから、ズルい…)
この気持ちは囚われたまま、逃れられない底無し沼に堕ちていく……。
「シャワー、ありがとうございました」
まだ少し湿った髪を軽くまとめながら、津軽さんに借りた服を着てリビングに戻った。
ダボダボのパーカーと、裾の長いスウェットパンツ。
身長差はあるが、それを差し引いても余りある長さ…足首でだぶつき、うっかり踏んでしまいそうだ。
ソファに座ろうと屈んで、前に座っていた津軽さんと目が合った。
「その格好、反則」
「えっ?」
「……ブラ、付けてないんだ?」
「……! ななななんで……」
さすがに、濡れたブラは着けられなかったし、パーカーがダボダボだから誤魔化せると思ったのに……。
思わず腕で胸元を隠す。
(何で分かったの……)
「分かるよ、ナツキの事なら」
「!!?」
考えを見透かされて、頬がカッと熱くなった。
(そんなに顔に出てる!?)
慌てて顔を両手で覆い隠そうとすると、溜め息と、苦笑いするような声が降りてきた。
「せっかく、今日は何もしないでおこうと思ったのに……」
「ぇ……」
気付けば、視界には天井と、私を見下ろす津軽さんの顔。
ソファに押し倒されたのだと気付いた時には、柔らかく冷たいものが唇を塞いでいた。
(……キス…!)
「そんな格好、襲ってくれって言ってるようなものじゃない?」
「そんなつもりじゃ……」
ノーブラなんて…、と呟いた津軽さんはキスをしながら器用にパーカーをたくし上げ、顕になった肌に唇を這わせる。
「ナツキが煽るのが、いけないんだよ……?」
「煽ってな…!………んっ!」
肌に触れるひんやりした唇が、肩から胸へと滑り降りる。
だんだんと熱を持ちはじめたそれは、胸の尖端を軽く啄んだ。
「ゃぁぁ……っ」
ビクンと跳ねた身体と胸の双丘を掌で優しく撫でると、その指先が下へ降りてゆく。
唇は優しく重ねられたままで、角度を変え何度も求められる。
頭の芯が、痺れる―――
「ナツキってさ、色白だよね」
「……っ!」
胸元にピリッと軽い痛みが走った。
「ほら」
「綺麗な花びらだね」
軽く唇を舐めるその表情は、見惚れるほど妖艶で―――
微かに細められた瞳に熱が灯るのが分かった。
「……も、ダメ」
津軽さんは、何処から取り出したのか小さな袋を咥え、噛み切りながら身体を起こした。
「こんなにした責任、取って貰わなきゃ」
「……!!」
(ちょっ……ま…!?)
(物理的に無理!!)
津軽さんの屹立したソレを見てしまって、慌てて視線を伏せる。
恥ずかしさに顔を上げられないでいると、クスッと笑う声が落ちてきた。
「そもそも、初めてじゃないだろ」
(俺と、さ)
そう言う津軽さんの声は妙に色っぽい。
(いや、確かにそうですけども!)
あの時の事は正直、実感が無くて今でも夢を見たのかと思う程なのに。
今、こうしている事は紛れもない現実で……。
重なる肌が熱く、抱きしめてくる腕は優しい。
「ナツキ」
「俺を、ナカに挿れて……?」
抱きしめられた腕から逃れるように胸を押し返したけれど、形ばかりの抵抗は意味を成さなかった。
蕩けきった頭の隅では、熱を孕んだ視線と艶っぽい声には逆らえるはずも無い。
「そ……なの…はい…な……っ」
「こんなに濡れてるのに?」
「ゃぁ……」
秘部に沈められた長い指が水音を立てた。
私の腰が跳ねるのを見た津軽さんの唇が、綺麗な弧を描く。
「もう、無理とか言わせないから」
再び唇が肌を滑り降り、貫かれるような圧迫感が押し寄せた。
「~~~ッ!」
「あぁッ………ん!」
最奥まで達した熱が、溢れる蜜を纏って律動を始めた―――
「ナツキのココと、俺の…ナカでキスしてる」
「……んっや、ぁ……」
そう言って、津軽さんは腰をぐいっと詰めてくる。
奥が苦しくて、耐えきれず甘い声を零した。
「ナツキのイヤ、は嫌じゃないもんね……?」
「……ちが……っ…」
執拗に攻め立てられ、意識すら飛びそうな快感が全身を駆け巡る。
律動は絶えず続き、息をするのも覚束無い。
「ぁぁ……んッ、は……っ」
腰を打ち付けられる度に聞こえる水音。
唇から零れるのは、吐息と、ただ甘い嬌声だけ。
「つが……さ……」
うわ言のように名前を呼び、手を伸ばした。
ふわっと微笑み、耳元に囁かれるのは少し掠れた声。
「もっと、感じて」
「もっと、俺を…」
(これ以上感じたら、どうにかなっちゃう…)
「だ…め……」
「おかしく……な…ちゃ……」
ふるふると頭を振り、小さな抵抗を見せたけれど。
「なっていいよ」
「俺はもう……なってるから」
長い睫毛に縁取られた、瞳の奥に滲む劣情。
眉間を寄せたその表情は、今までに見た事のない『雄』の顔。
「ゃ……!ぁぁっ……」
肌がゾクリと粟立つような感覚を覚えて、そのまま意識が白く弾けた―――
ふと気付けば、ベッドの上で津軽さんに腕枕をされていて。
気遣わし気に覗き込む瞳には、優しい光が映っていた。
「大丈夫?」
「……じゃ、ないです……」
あれから、あまり時間も経っていないのかも知れない。
言いようのない怠さが体に残っている。
津軽さんは、そっかー…なんて言ったけど、腰に回した腕を緩めてくれる気配は無かった。
(もう、このままでいいか…)
半分開き直って、その胸に顔を埋めた。
* * *
翌日の公安課ルーム。
「………」
私のデスクに、百瀬さんが無言で書類の山を積み上げる。
「何ですか、これ!?」
「仕事。お前の」
「うわぁ……お仕事いっぱいで良かったね、ウサちゃん」
津軽さんの、いつも通りの口調と掴めない態度にこっそりと溜め息をついた……。
『ザー―――』
あっという間に暗くなった空から、雨が降り出した。
それは、みるみるうちに強くなっていく。
「うっわー… 凄い雨だねー」
「ゲリラ豪雨ですね…」
行確を終え帰庁途中だった私と津軽さんは、慌てて近くの喫茶店の軒先に逃げ込む。
店員さんが席を案内してくれるが、二人とも結構濡れてしまっていたため、席に座るのを躊躇った。
「どうしましょうか…」
「今日は、このまま直帰するしかないかなー」
津軽さんはそう言いながら、スマホを取り出す。
「……モモ? あぁ。こっちはOK。雨に降られてさ、そっち帰れないから……」
津軽さんの電話を隣で聞きながら、ハンカチで濡れた髪を拭く。
(何だか…ちょっと寒い)
無意識に震える自分の体を抱いた。
急に濡れた服のせいで、体温が少しずつ奪われているのかも知れない。
「……クシュン」
小さなくしゃみをした私に、津軽さんははっと視線を向ける。
電話を切り、スーツのジャケットを脱ぐと私の肩に被せ、手を取り歩き出した。
「津軽さん?」
「帰ろ?」
「公安課、戻らなくていいんですか?」
「モモには、このまま帰るって言ったから」
店員さんが貸してくれた傘を差しながら、手を引かれまだ強めの雨の中を歩く。
傘を私の方へ傾けてくれているらしく、津軽さんの肩はさっきよりも濡れてしまっている。
(ジャケットも貸してくれたし)
(何だかんだ言ってても、優しい所はあるんだよね……)
* * *
ほぼずぶ濡れになりながら、やっとの思いでマンションまで辿り着いた時…重大なミスに気付いた。
「あ……っ!」
「どうしたの?」
「家の鍵、ロッカールームのバッグの中です…」
もともと帰庁予定だったため、財布以外の荷物は全部置いてきてしまっている。
こんなに濡れたままでは、取りに戻ることも出来ないだろう。
「どうしよう……」
「そうだなぁ……」
同時に呟きが漏れ、驚いて顔を見上げると…そこには柔らかく微笑む瞳があった。
「俺の部屋に、おいで」
「!!?」
「このままでいたら、風邪ひいちゃうでしょ?」
「でも…」
津軽さんは口ごもる私の唇を指で制し、私の手を引いたまま廊下を戻る。
「えっ…ちょ……」
「班長命令」
「!!?」
半ば強引にエレベーターに押し込まれ…結局、津軽さんの部屋にお世話になる事になってしまった。
(仕方無い)
(背に腹はかえられない…よね)
* * *
「はい、これ使って」
私にタオルを渡すと、津軽さんはネクタイを解き濡れたシャツを無造作に脱ぎながら、やや乱暴に髪を拭く。
その姿は、見てはいけないと思いつつも目を奪われる。
(!!)
(なんでこう、無駄に格好良いの……)
「ウサちゃん?」
「えっ? あっ! はい!?」
赤くなった頬を見られたくなくて、タオルを被りながら俯いて誤魔化した。
でもきっと、津軽さんには全てお見通しなんだろうと思う。
「シャワーだけでいい?それとも、バスタブにお湯溜める?」
「……へ?」
「身体冷えちゃったんだから、温まらないとねー」
女の子なんだしー、と言いながらバスルームへ向かう津軽さんの背中を見て、頬は更に熱くなる。
(こんな時だけ女の子扱い!?)
完全にイケメンの無駄遣いだと思う。
でも、強く出られないのは惚れた弱み…と言うべきか。
(こうやって、どんどん好きにさせていくんだから、ズルい…)
この気持ちは囚われたまま、逃れられない底無し沼に堕ちていく……。
「シャワー、ありがとうございました」
まだ少し湿った髪を軽くまとめながら、津軽さんに借りた服を着てリビングに戻った。
ダボダボのパーカーと、裾の長いスウェットパンツ。
身長差はあるが、それを差し引いても余りある長さ…足首でだぶつき、うっかり踏んでしまいそうだ。
ソファに座ろうと屈んで、前に座っていた津軽さんと目が合った。
「その格好、反則」
「えっ?」
「……ブラ、付けてないんだ?」
「……! ななななんで……」
さすがに、濡れたブラは着けられなかったし、パーカーがダボダボだから誤魔化せると思ったのに……。
思わず腕で胸元を隠す。
(何で分かったの……)
「分かるよ、ナツキの事なら」
「!!?」
考えを見透かされて、頬がカッと熱くなった。
(そんなに顔に出てる!?)
慌てて顔を両手で覆い隠そうとすると、溜め息と、苦笑いするような声が降りてきた。
「せっかく、今日は何もしないでおこうと思ったのに……」
「ぇ……」
気付けば、視界には天井と、私を見下ろす津軽さんの顔。
ソファに押し倒されたのだと気付いた時には、柔らかく冷たいものが唇を塞いでいた。
(……キス…!)
「そんな格好、襲ってくれって言ってるようなものじゃない?」
「そんなつもりじゃ……」
ノーブラなんて…、と呟いた津軽さんはキスをしながら器用にパーカーをたくし上げ、顕になった肌に唇を這わせる。
「ナツキが煽るのが、いけないんだよ……?」
「煽ってな…!………んっ!」
肌に触れるひんやりした唇が、肩から胸へと滑り降りる。
だんだんと熱を持ちはじめたそれは、胸の尖端を軽く啄んだ。
「ゃぁぁ……っ」
ビクンと跳ねた身体と胸の双丘を掌で優しく撫でると、その指先が下へ降りてゆく。
唇は優しく重ねられたままで、角度を変え何度も求められる。
頭の芯が、痺れる―――
「ナツキってさ、色白だよね」
「……っ!」
胸元にピリッと軽い痛みが走った。
「ほら」
「綺麗な花びらだね」
軽く唇を舐めるその表情は、見惚れるほど妖艶で―――
微かに細められた瞳に熱が灯るのが分かった。
「……も、ダメ」
津軽さんは、何処から取り出したのか小さな袋を咥え、噛み切りながら身体を起こした。
「こんなにした責任、取って貰わなきゃ」
「……!!」
(ちょっ……ま…!?)
(物理的に無理!!)
津軽さんの屹立したソレを見てしまって、慌てて視線を伏せる。
恥ずかしさに顔を上げられないでいると、クスッと笑う声が落ちてきた。
「そもそも、初めてじゃないだろ」
(俺と、さ)
そう言う津軽さんの声は妙に色っぽい。
(いや、確かにそうですけども!)
あの時の事は正直、実感が無くて今でも夢を見たのかと思う程なのに。
今、こうしている事は紛れもない現実で……。
重なる肌が熱く、抱きしめてくる腕は優しい。
「ナツキ」
「俺を、ナカに挿れて……?」
抱きしめられた腕から逃れるように胸を押し返したけれど、形ばかりの抵抗は意味を成さなかった。
蕩けきった頭の隅では、熱を孕んだ視線と艶っぽい声には逆らえるはずも無い。
「そ……なの…はい…な……っ」
「こんなに濡れてるのに?」
「ゃぁ……」
秘部に沈められた長い指が水音を立てた。
私の腰が跳ねるのを見た津軽さんの唇が、綺麗な弧を描く。
「もう、無理とか言わせないから」
再び唇が肌を滑り降り、貫かれるような圧迫感が押し寄せた。
「~~~ッ!」
「あぁッ………ん!」
最奥まで達した熱が、溢れる蜜を纏って律動を始めた―――
「ナツキのココと、俺の…ナカでキスしてる」
「……んっや、ぁ……」
そう言って、津軽さんは腰をぐいっと詰めてくる。
奥が苦しくて、耐えきれず甘い声を零した。
「ナツキのイヤ、は嫌じゃないもんね……?」
「……ちが……っ…」
執拗に攻め立てられ、意識すら飛びそうな快感が全身を駆け巡る。
律動は絶えず続き、息をするのも覚束無い。
「ぁぁ……んッ、は……っ」
腰を打ち付けられる度に聞こえる水音。
唇から零れるのは、吐息と、ただ甘い嬌声だけ。
「つが……さ……」
うわ言のように名前を呼び、手を伸ばした。
ふわっと微笑み、耳元に囁かれるのは少し掠れた声。
「もっと、感じて」
「もっと、俺を…」
(これ以上感じたら、どうにかなっちゃう…)
「だ…め……」
「おかしく……な…ちゃ……」
ふるふると頭を振り、小さな抵抗を見せたけれど。
「なっていいよ」
「俺はもう……なってるから」
長い睫毛に縁取られた、瞳の奥に滲む劣情。
眉間を寄せたその表情は、今までに見た事のない『雄』の顔。
「ゃ……!ぁぁっ……」
肌がゾクリと粟立つような感覚を覚えて、そのまま意識が白く弾けた―――
ふと気付けば、ベッドの上で津軽さんに腕枕をされていて。
気遣わし気に覗き込む瞳には、優しい光が映っていた。
「大丈夫?」
「……じゃ、ないです……」
あれから、あまり時間も経っていないのかも知れない。
言いようのない怠さが体に残っている。
津軽さんは、そっかー…なんて言ったけど、腰に回した腕を緩めてくれる気配は無かった。
(もう、このままでいいか…)
半分開き直って、その胸に顔を埋めた。
* * *
翌日の公安課ルーム。
「………」
私のデスクに、百瀬さんが無言で書類の山を積み上げる。
「何ですか、これ!?」
「仕事。お前の」
「うわぁ……お仕事いっぱいで良かったね、ウサちゃん」
津軽さんの、いつも通りの口調と掴めない態度にこっそりと溜め息をついた……。