海の見える丘にやって来た。
一番よく見える所にベンチまでこさえてあるが特に人は居ない。恐らく昔は絶景を誇る名所だったのだろう。
そこに行けば、彼に会えるのだ。
「やあ、また来たのかい？よくまぁ飽きずに通うねェ」
そう言うと、ベンチに腰掛けた緑の羽根をしたオウムは、自身の隣をポンポンと叩いて座るよう促した。
言われるままにそこに座ると、隣の彼は静かに話し出す。
「ここは本当に素晴らしい場所さ。バイーアの次くらいに気に入ってる。どうだい、良い眺めじゃないか。感想を聞かせて？」
目の前では、赤く強く光る太陽が、似た色に染まった海の中にゆっくりと飲み込まれていた。
空も海も木々も飛んでるいる鳥も、なんなら空気だって全部赤く輝いていて。燃えてるみたいだ。全部、何もかも、全部が。
そう思うと、不思議と涙が溢れてきてしまった。
それに気が付いたのか、ホセは一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに優しく私の頭を撫でた。
「泣くほど感動したのかい？それなら良かった。」
「ほ、せ…」
どうしよう、涙が止まらない。流れていく涙をそのままにして、ホセの方を向くのは嫌だ。何度も目を擦ってみるが、全く意味をなさない。私は顔を覆って俯いた。
ごめんなさい、こんな弱い私を見せてしまって。貴方に心配かけさせたりなんかしたくないのに、ごめんなさい。お願い、止まってと懇願しても、涙は後から後から流れていく。

不意に、抱きしめられる感覚。
え、と顔から手を離せば、ホセが私を腕の中に抱きとめていた。
優しく、優しく頭を撫でられる。
「ねえセニョリータ、ボクの大切な人。そんなに可愛い姿は他の人には見せないで…ボクだけに独占させておくれ…ね、良いだろう？キミの涙を知っているのはボクだけがいいんだ。」

どんなキミだって愛するキミに変わりはないんだから。

なんて、そんなの、ズルいよ。
やっぱり涙は止まらなかった。