海外アニメ中心短編集
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小さい頃、怖い夢をよく見ていた。
今ではあまり覚えは無いのだが、爬虫類に嫌悪感と警戒心を抱くようになったのは、その夢のせいであろう。今でも時たまうなされる。
ひんやりとした感触と、ギョロギョロとした目玉、スルスルと這い回り、音もなく近付いて、ギザギザとした白い歯が浮かぶ。ああ、なんだっていうんだ、あの………モンスターは…。
どうして小さかった頃の事を思い出してしまったのか分からないが、最近はやけにそういう事…あの悪夢を思い出す事が増えた。
嫌だなぁ、何かの前兆とかだったらどうしよう…
などと考えつつ、家路を急ぐ。用事を済ませていたら、すっかり辺りは暗くなっていた。最近は物騒だし、嫌な予感がするし、つい早足で歩いてしまう。
だからだろうか、足下をよく見ずにいたら、ぐにゃっとした何かを靴の裏で感じた。思わず小さく悲鳴を上げて、踏んづけた「なにか」を探して下を向く。
何も無い。
おかしい、そんなはずは…と、もう一度その辺りを足で探ると、得体の知れない声が暗闇で響いた…と思った瞬間、私の足元から紫の尻尾が姿を見せる。
「あっ………」
思わず呼吸が止まった。
紫の尾からゆっくりと足を離す。何本もの腕。ギョロギョロと動く目玉。スルスルと動いて、這い回り、音もなく姿を現して………!
「あな、た……は………」
なんとか絞り出した声は、相手に届いているのかも怪しいくらいに弱々しかった。どうしよう、身体が硬くなっているのが嫌でも分かる。動けない。浅い呼吸を繰り返して相手を凝視する。
「……人間か…?」
返ってきた声は、存外掠れて小さなものだった。思わず身体の緊張がほぐれる。
「………大丈夫…ですか…?」
「大丈夫そうに見えるか…?こんな干物みたいになったトカゲモンスターが……だとしたらお前は病気だよ…」
聞き覚えのある声だ…と思う。曖昧だ。だって私の記憶の中だと、彼は唸り声しか上げないから。でも、目の前に居るソイツは全然違う。彼の言葉を借りるなら干物同然だった。恐怖なんかより、悲愴感を覚える程に、惨めに見えた。
「ねえ、大丈夫じゃないなら…その……どうしよ、家《うち》に…来る…?」
なんとかしたいと思いつつも、他に良い案が浮かばない。本当は関わらずにいられるならそうしたいけど、助けてあげなきゃという使命感にかられてしまっては、後戻りするのは難しい。
「ちっ…お前はオレが怖くないんだな………」
飛び出した言葉に目を見開いた。
「こ、怖いに決まってるよ!でも、放っておけないから…その……」
「仕方なくって訳…?ああそう…ホントは怖いんだ。フーン……気に入った、お前の家に行くよ。」
ヨロヨロとした足取りで私の後ろを歩いていた彼は、私の家に入るなり近くに置いてあったソファに倒れ込んだ。
明るい場所でよく見ると、あちこちに傷が付いている。治りかけてるものも混ざってるから、よっぽど長い事、ろくな手当もせずにいたのだろう。一先ず消毒薬と包帯を用意してみるが、流石に触るのには抵抗がある。どうしよう…
「…触れもしないってのは驚いたな、筋金入りの怖がりじゃないか…嫌いじゃないぜ、そういうの」
先の事を話せば、薄気味悪い笑みを浮かべられた。
何本もの腕が滑るように自身の身体に包帯を巻いていくのも見つめる。手持ち無沙汰な両手を忙しなく動かしてみる。
私と彼は、ポツリポツリと自己紹介をし合った。
「ん…?…そういや、なんだか見覚えがある顔だな……気のせいか?随分前の仕事先に居たガキによく似てる。」
ランドール、だと名乗った彼はボソリと呟いた。
どういう意味だろう。理解が追いつきそうもない。いや、でも待って…私の事を子供の時から知ってるって事?……でも、だとしたら本当にコイツは…
「小さい時、悪夢に出て来た…怪物…さん…?」
「ちっ、やっぱりそうか…名前なんかいちいち覚えてねえが…良い悲鳴を上げてた気がするな。」
悲鳴…確かにあの悪夢…いや、本当は現実だったのだろう夜は、決まって大声で泣き叫んだような気がする。
「あの、ところで…ランドール…さん…は、なんでこんな所に…行き倒れて…?」
「………追放されたんだ、にっくきサリバンを陥れるのに失敗してな。」
ただでさえあまり良くない目付きが、より一層苦虫を噛み潰したようなものへと変化する。思わず息を飲んで仰け反ってしまう。
「じゃあ、その…行く宛は無いって……こと…?」
「…安心しな、今夜1晩だけ泊めてくれりゃ早急に出て行くさ。」
胸を撫で下ろすと同時に、果たしてこんな傷だらけなのに一晩で何とかなるのだろうかという疑惑もある。いやいや、私は何を考えているんだ。お人好しも大概にしないと、食べられてしまうかもしれない。
とりあえず何か作って食べようと立ち上がり、そそくさと台所に向かう。食べれないものとかないかとか、そもそも人間の食べ物で良いのかなどと聞きながら、二人分の簡単な夕飯を
拵える。
目の間の椅子に大きなトカゲが腰掛けているというのは不思議な光景だ。もう二度と味わえないだろう。いや、味わいたくはない…かな。
「それじゃあ、改めて…今晩だけだけど…よろしくね…?」
「…ああ、よろしく。」
心底どうでもいいといった声の返事を、口に運んだ白飯と共に飲み込んだ。
どうかこれが今晩だけの悪い夢でありますように、と願いながら、非日常的展開に胸を踊らせる自分をも押さえ込んだ。
今ではあまり覚えは無いのだが、爬虫類に嫌悪感と警戒心を抱くようになったのは、その夢のせいであろう。今でも時たまうなされる。
ひんやりとした感触と、ギョロギョロとした目玉、スルスルと這い回り、音もなく近付いて、ギザギザとした白い歯が浮かぶ。ああ、なんだっていうんだ、あの………モンスターは…。
どうして小さかった頃の事を思い出してしまったのか分からないが、最近はやけにそういう事…あの悪夢を思い出す事が増えた。
嫌だなぁ、何かの前兆とかだったらどうしよう…
などと考えつつ、家路を急ぐ。用事を済ませていたら、すっかり辺りは暗くなっていた。最近は物騒だし、嫌な予感がするし、つい早足で歩いてしまう。
だからだろうか、足下をよく見ずにいたら、ぐにゃっとした何かを靴の裏で感じた。思わず小さく悲鳴を上げて、踏んづけた「なにか」を探して下を向く。
何も無い。
おかしい、そんなはずは…と、もう一度その辺りを足で探ると、得体の知れない声が暗闇で響いた…と思った瞬間、私の足元から紫の尻尾が姿を見せる。
「あっ………」
思わず呼吸が止まった。
紫の尾からゆっくりと足を離す。何本もの腕。ギョロギョロと動く目玉。スルスルと動いて、這い回り、音もなく姿を現して………!
「あな、た……は………」
なんとか絞り出した声は、相手に届いているのかも怪しいくらいに弱々しかった。どうしよう、身体が硬くなっているのが嫌でも分かる。動けない。浅い呼吸を繰り返して相手を凝視する。
「……人間か…?」
返ってきた声は、存外掠れて小さなものだった。思わず身体の緊張がほぐれる。
「………大丈夫…ですか…?」
「大丈夫そうに見えるか…?こんな干物みたいになったトカゲモンスターが……だとしたらお前は病気だよ…」
聞き覚えのある声だ…と思う。曖昧だ。だって私の記憶の中だと、彼は唸り声しか上げないから。でも、目の前に居るソイツは全然違う。彼の言葉を借りるなら干物同然だった。恐怖なんかより、悲愴感を覚える程に、惨めに見えた。
「ねえ、大丈夫じゃないなら…その……どうしよ、家《うち》に…来る…?」
なんとかしたいと思いつつも、他に良い案が浮かばない。本当は関わらずにいられるならそうしたいけど、助けてあげなきゃという使命感にかられてしまっては、後戻りするのは難しい。
「ちっ…お前はオレが怖くないんだな………」
飛び出した言葉に目を見開いた。
「こ、怖いに決まってるよ!でも、放っておけないから…その……」
「仕方なくって訳…?ああそう…ホントは怖いんだ。フーン……気に入った、お前の家に行くよ。」
ヨロヨロとした足取りで私の後ろを歩いていた彼は、私の家に入るなり近くに置いてあったソファに倒れ込んだ。
明るい場所でよく見ると、あちこちに傷が付いている。治りかけてるものも混ざってるから、よっぽど長い事、ろくな手当もせずにいたのだろう。一先ず消毒薬と包帯を用意してみるが、流石に触るのには抵抗がある。どうしよう…
「…触れもしないってのは驚いたな、筋金入りの怖がりじゃないか…嫌いじゃないぜ、そういうの」
先の事を話せば、薄気味悪い笑みを浮かべられた。
何本もの腕が滑るように自身の身体に包帯を巻いていくのも見つめる。手持ち無沙汰な両手を忙しなく動かしてみる。
私と彼は、ポツリポツリと自己紹介をし合った。
「ん…?…そういや、なんだか見覚えがある顔だな……気のせいか?随分前の仕事先に居たガキによく似てる。」
ランドール、だと名乗った彼はボソリと呟いた。
どういう意味だろう。理解が追いつきそうもない。いや、でも待って…私の事を子供の時から知ってるって事?……でも、だとしたら本当にコイツは…
「小さい時、悪夢に出て来た…怪物…さん…?」
「ちっ、やっぱりそうか…名前なんかいちいち覚えてねえが…良い悲鳴を上げてた気がするな。」
悲鳴…確かにあの悪夢…いや、本当は現実だったのだろう夜は、決まって大声で泣き叫んだような気がする。
「あの、ところで…ランドール…さん…は、なんでこんな所に…行き倒れて…?」
「………追放されたんだ、にっくきサリバンを陥れるのに失敗してな。」
ただでさえあまり良くない目付きが、より一層苦虫を噛み潰したようなものへと変化する。思わず息を飲んで仰け反ってしまう。
「じゃあ、その…行く宛は無いって……こと…?」
「…安心しな、今夜1晩だけ泊めてくれりゃ早急に出て行くさ。」
胸を撫で下ろすと同時に、果たしてこんな傷だらけなのに一晩で何とかなるのだろうかという疑惑もある。いやいや、私は何を考えているんだ。お人好しも大概にしないと、食べられてしまうかもしれない。
とりあえず何か作って食べようと立ち上がり、そそくさと台所に向かう。食べれないものとかないかとか、そもそも人間の食べ物で良いのかなどと聞きながら、二人分の簡単な夕飯を
拵える。
目の間の椅子に大きなトカゲが腰掛けているというのは不思議な光景だ。もう二度と味わえないだろう。いや、味わいたくはない…かな。
「それじゃあ、改めて…今晩だけだけど…よろしくね…?」
「…ああ、よろしく。」
心底どうでもいいといった声の返事を、口に運んだ白飯と共に飲み込んだ。
どうかこれが今晩だけの悪い夢でありますように、と願いながら、非日常的展開に胸を踊らせる自分をも押さえ込んだ。
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