FGO夢詰め
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私…マスター○○は悩んでいた。
悩みの種はサポート編成…ひとつのクラスにつき一騎ずつサーヴァントを選出し、設定すれば、別の次元に居るフレンドさんの元へ私の可愛いサーヴァント達が出稼ぎ…いや、出張してくれるという機能。これは大変便利かつありがたく、私自身も何度フレンドさんのサーヴァント達に助けられたか分からない。
もちろん、私のサーヴァント達は(マスター的な贔屓目があったとしても)皆優秀だし、弱いから恥ずかしくて出せない〜などのような下らない…というか失礼な事でこんなに頭を抱えたりはしない。
問題は『ひとつのクラスにつき一騎ずつ』という点なのだ。
「アサシン…アサシン…なあ……」
夕飯も済ませた時間のマイルームのベッドに腰掛け、私はサポート編成の編集画面を映すタブレット端末とにらめっこしていた。さっきからアサシンの箇所をタップしては戻る…を繰り返している。
うちにいるアサシン…の中でも、特に良く育っているのは全部で3人。
オルレアンで大活躍してくれた最古参、佐々木小次郎さん。礼儀正しく可愛らしい風魔小太郎くん。石を溶かして()なんとか来てくれた岡田以蔵さん。
この3人は私が勝手にアサシン組と呼んでいて、ほぼ同時進行で育成したり再臨させたりしては、よく一緒にクエストに向かうなどしているのだが……
「主殿…またあんな武士をサポートとして設定しているのですか…?」
「うわっ!?びっくりした…小太郎くん、話しかける時は気配遮断切ってからにしてってば〜」
「あっ!ごごごめんなさい…つい……!」
不意に右側から現れたのは小太郎くん。恐らくいつも通りマイルームの天井裏にでも居たのだろう。それで私がサポート編成で迷ってる…というか今はとりあえず小次郎さんで設定してるから文句言いたくなったって感じのが近いか。
などと考えていたら、突然マイルームのドアが開き、大きくてよく響く声が飛び込んで来た
「おーい、ますたぁ!ましゅが、おまんはここにおる言うてたき、来てやったぜよ!」
「あ、以蔵さんいらっしゃい。どうしたの?」
いや別に、暇だっただけじゃき。とだけ以蔵さんは言って、いそいそと近くに寄って来る。うん、意図は不明だ。
「主殿、失礼するぞ…と、小太郎殿も居るとは。ちと間が悪かったか…?」
「チッ…噂をすれば湧いてきやがりましたか、武士め……」
「小次郎さんもいらっしゃい。どうしたの皆揃って。」
喧嘩腰になる小太郎くんの肩を撫でてなだめつつ、それぞれの顔を見渡す。
小次郎さんが、ベッド近くにある椅子に座りながら、ふむ…と考え出した。
「いや、特に理由は無いのだが…あえて挙げるなら…最近はライダーとのバトルが少ないからマスター殿と話す事が少なくて寂しい…といったところか……?」
ちょっと意外な答えに、少し面食らう。まあ小次郎さんのニヤついた顔付きからして冗談半分か、もしくはからかっているだけと言ったところだろうけども。
「ええ〜…いや、まあ確かに最近あんまりライダー戦は無かったけどさ〜」
上手いこと流してやろうとやんわりとした返事をすると、他2人が少し慌てた様子で口を開いた。
「べ、別に僕はそんな…主殿とはいつでも一緒に居られますし…」
「ほうじゃほうじゃ!寂しいのはおまんだけじゃろ小次郎!!」
そこまで怒ることないじゃないでしょう、と思いつつ見守る。あ…また小次郎さんが含み笑いを…
「ええ〜?ホントでござるか〜?」
私の両脇で、ブツンと、何かがキレる様な音がした……ような気がする。
「即ち此処は阿鼻叫喚───」
「おまん…わしを…笑うたか…?」
「わー!コラコラ二人共ストーーーップ!!!」
マイルームで宝具なんかぶっ放されたらたまったもんじゃない!今にも小次郎さんに技をかけようとする2人の服の裾を必死に掴み、なんとか隣に座らせる。その様子を見てクツクツと笑いをこぼす小次郎さんを睨みつけた。
「小次郎さんっ!あんまり意地悪しないでください!!」
「いやぁすまない、面白くてつい。」
「主殿!!やはりこんな武士なんかさっさとその辺に捨てましょう!!!」
「わしもそれには賛成じゃ!!簀巻きにして海に流しちゃる!!」
「何で君達はそんなに仲が悪いの…って小次郎さんが全部原因か……」
思わず眉間に手をやり押さえつけた。小次郎さん、別に悪い人では無いのだが、戯れが過ぎるというか、悪ふざけが過ぎるというか…
呆れる私を見ても尚、事の発端である小次郎さんは飄々とした態度を崩さずに話を変えてきた。
「まあまあ、それよりマスターはさっきから…えー、タブレットだったか…を持って何をしていたんだ?ゲームってやつか?」
「何でアンタはそうマイペースなんだよ…まあいいか、サポートのアサシン枠をどうしようかなーって思っててね…」
君達3人の内の誰かにはするつもりなんだよねー、と端末を操作してみせる。
「ああ、たまに別のマスターに呼ばれるあれか。うむ、あれは実に愉快なものよ。」
心底楽しそうにニコニコと微笑む小次郎さんだが、相反して私の両隣にいる2人は面白くなさそうだ。
「主殿、さっきのやり取りでこの武士がどれだけ使えないかは分かった筈です。ここは僕が…!!」
「いんや、小太郎には荷が重いぜよ。ここは剣の天才であるこのわしが…!」
2人揃ってキラキラ…いや、ギラギラとした目でこちらに迫る。そんなにサポート編成に登録されたいのか…?何にしろ事態の収束に手間がかかる。
「うーん…まあ予想はしてたけど本人達に相談するべき話じゃ無かったね。てかさ、なんでそんなにサポートになりたいの?戦い不足?」
もし私のもとに居るのが嫌だから…とかだったらヤダなーと思いつつ、ポロッと疑問を投げかける。
すぐに返事が来ないので、両隣を見回せば、何やら気まずそうな面持ちで口ごもってしまっていた。そんなに聞かれたくないような理由があるのかな…まさかホントに私のサーヴァントになって後悔してるとか……
少し不安になり、ふと小次郎さんの方を見れば、相変わらず黙ってれば綺麗な顔に、何が面白いのか笑みを浮かべていた。つい呆れた顔をしてしまう。
そんな時、小太郎くんが口を開いた。
「そ、それは…その……」
明らかに歯切れが悪い。私とは反対に向けた顔からは表情なんて読み取れる筈も無く、小太郎くんの真意が見えない。
「あ、別に…言いづらい事なら無理に言ってくれなくても…」
「あ、いや…その…」
やはり理由を明言するのを避けているように見える。
何だか悲しくなってきてしまった。小太郎くんだけでなく、以蔵さんまでそっぽ向いて黙ったままだ。
空気がシン…と重くなる。私はつい俯いてしまった。
おかしいな…2人とは…結構仲良くなれてきた気がしてたんだけど…私の勘違いだったのかな…
その時、静かな水面で魚が跳ねるように、小次郎さんが言葉を投げかけた。
「小太郎殿。」
たった一言。それだけ。
ふと顔を上げれば、さっきまでの悪戯顔はどこへやら。どこか不機嫌そうな…それでいて諭すような視線を小太郎くんに送る小次郎さんが視界に入った。その視線を追いかけるように顔をゆっくりと右へと移動させれば、赤く染めた顔をこちらに向ける小太郎くんと目が合った。
「……主殿、僕は…僕達は…もっと主殿の役に立ちたいのです。些細な事で良い、どんなに小さな事でも良い。主殿の役に立ちたい…その一心なのです。」
隣に腰掛けていた小太郎くんは、ベッドから降りて床に跪いた。そっと右手を握られる。
「その…何だか気恥ずかしくなってしまって…先程は失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。その、僕は、貴方様の喜ぶお顔が見たいので、サポートに加えて欲しいのです……こんな理由では、いけませんでしょうか。」
握られた右手に、より一層強く、包み込むような意志を持って力が加わるのを感じる。
なるほど、さっきは恥ずかしくてあんな態度をしていたのか。腑に落ちる感覚と共に、安心感が胸に広がる。それにしても小太郎くん、なんて良い子なんだろうか…!
小太郎くんの心意気に感激を覚え、感謝の言葉を並べる私を一瞥した小次郎さんは、今度は以蔵さんの方に向き直った。
「さて、以蔵殿も恥ずかしがってないできちんとマスターの質疑に応答したらどうだ?まさか其方ともあろう者が、この程度で機嫌を損ねるような子供っぽい真似はしないであろうよ。なぁ?」
「ふんっ、じゃあかしいわい。」
以蔵さんの方に顔を向ければ、まだ不貞腐れたようにそっぽを向いている。
こっち向いてくれないのかな…
じっと、以蔵さんのモフモフした髪の毛を見つめていれば、視線が鬱陶しいのか、段々と逃げるように縮こまっていく。
「だーーーーっ!!ええ加減にせい!!!うざい!!!!」
ついに耐えきれなくなったのか、以蔵さんは振り返りざまに吠えるように叫んだ。びっくりして思わず仰け反る。
「ご、ごめんね以蔵さん…つい…」
イライラとした態度を隠す気もない以蔵さんは、暫し私を見つめて、大きく息を吐いく。
「ええか、これ以上そないに見られたら適わんから、特別に教えちゃる!わしの考えてる事なんざ、たったひとつ!人を斬る事じゃ!!」
ぐっと近付いて、睨みつけられる。先程とは立場が逆転してしまった。
以蔵さんの琥珀色の真っ直ぐな瞳を見つめれば、不意に視線を逸らされる。伏せられた目が、以蔵さん自身の手を捉えて離さない。
「わしには…わしにはそれしかできんきのぅ…だから…だから、少しでも多く人を斬るには、さぽーとに登録してもらうのが早いと思っただけぜよ!!………これで満足か?」
ぶすくれた態度…いや、よくよく見れば微かに覗く耳が赤い。照れ隠しの虚勢で威嚇してるのだ。
「充分すぎる理由だよ、以蔵さん…!」
無理に言わせたみたいになってホントにごめんね、と付け加えれば、別に今更気にせん、と素っ気なく返される。
「とにかく皆がどれだけ一生懸命かはよーくわかった!これからは週替わりで当番制にでもしてみようか?」
「はっは、それは良い提案だ。」
先程まで黙って見守ってた小次郎さんが口を開く。
そういえば、この2人から言葉を引き出すきっかけを作ったのは小次郎さんだ。もしかして…
「謀った…?」
「はて、なんの事やら。」
悩みの種はサポート編成…ひとつのクラスにつき一騎ずつサーヴァントを選出し、設定すれば、別の次元に居るフレンドさんの元へ私の可愛いサーヴァント達が出稼ぎ…いや、出張してくれるという機能。これは大変便利かつありがたく、私自身も何度フレンドさんのサーヴァント達に助けられたか分からない。
もちろん、私のサーヴァント達は(マスター的な贔屓目があったとしても)皆優秀だし、弱いから恥ずかしくて出せない〜などのような下らない…というか失礼な事でこんなに頭を抱えたりはしない。
問題は『ひとつのクラスにつき一騎ずつ』という点なのだ。
「アサシン…アサシン…なあ……」
夕飯も済ませた時間のマイルームのベッドに腰掛け、私はサポート編成の編集画面を映すタブレット端末とにらめっこしていた。さっきからアサシンの箇所をタップしては戻る…を繰り返している。
うちにいるアサシン…の中でも、特に良く育っているのは全部で3人。
オルレアンで大活躍してくれた最古参、佐々木小次郎さん。礼儀正しく可愛らしい風魔小太郎くん。石を溶かして()なんとか来てくれた岡田以蔵さん。
この3人は私が勝手にアサシン組と呼んでいて、ほぼ同時進行で育成したり再臨させたりしては、よく一緒にクエストに向かうなどしているのだが……
「主殿…またあんな武士をサポートとして設定しているのですか…?」
「うわっ!?びっくりした…小太郎くん、話しかける時は気配遮断切ってからにしてってば〜」
「あっ!ごごごめんなさい…つい……!」
不意に右側から現れたのは小太郎くん。恐らくいつも通りマイルームの天井裏にでも居たのだろう。それで私がサポート編成で迷ってる…というか今はとりあえず小次郎さんで設定してるから文句言いたくなったって感じのが近いか。
などと考えていたら、突然マイルームのドアが開き、大きくてよく響く声が飛び込んで来た
「おーい、ますたぁ!ましゅが、おまんはここにおる言うてたき、来てやったぜよ!」
「あ、以蔵さんいらっしゃい。どうしたの?」
いや別に、暇だっただけじゃき。とだけ以蔵さんは言って、いそいそと近くに寄って来る。うん、意図は不明だ。
「主殿、失礼するぞ…と、小太郎殿も居るとは。ちと間が悪かったか…?」
「チッ…噂をすれば湧いてきやがりましたか、武士め……」
「小次郎さんもいらっしゃい。どうしたの皆揃って。」
喧嘩腰になる小太郎くんの肩を撫でてなだめつつ、それぞれの顔を見渡す。
小次郎さんが、ベッド近くにある椅子に座りながら、ふむ…と考え出した。
「いや、特に理由は無いのだが…あえて挙げるなら…最近はライダーとのバトルが少ないからマスター殿と話す事が少なくて寂しい…といったところか……?」
ちょっと意外な答えに、少し面食らう。まあ小次郎さんのニヤついた顔付きからして冗談半分か、もしくはからかっているだけと言ったところだろうけども。
「ええ〜…いや、まあ確かに最近あんまりライダー戦は無かったけどさ〜」
上手いこと流してやろうとやんわりとした返事をすると、他2人が少し慌てた様子で口を開いた。
「べ、別に僕はそんな…主殿とはいつでも一緒に居られますし…」
「ほうじゃほうじゃ!寂しいのはおまんだけじゃろ小次郎!!」
そこまで怒ることないじゃないでしょう、と思いつつ見守る。あ…また小次郎さんが含み笑いを…
「ええ〜?ホントでござるか〜?」
私の両脇で、ブツンと、何かがキレる様な音がした……ような気がする。
「即ち此処は阿鼻叫喚───」
「おまん…わしを…笑うたか…?」
「わー!コラコラ二人共ストーーーップ!!!」
マイルームで宝具なんかぶっ放されたらたまったもんじゃない!今にも小次郎さんに技をかけようとする2人の服の裾を必死に掴み、なんとか隣に座らせる。その様子を見てクツクツと笑いをこぼす小次郎さんを睨みつけた。
「小次郎さんっ!あんまり意地悪しないでください!!」
「いやぁすまない、面白くてつい。」
「主殿!!やはりこんな武士なんかさっさとその辺に捨てましょう!!!」
「わしもそれには賛成じゃ!!簀巻きにして海に流しちゃる!!」
「何で君達はそんなに仲が悪いの…って小次郎さんが全部原因か……」
思わず眉間に手をやり押さえつけた。小次郎さん、別に悪い人では無いのだが、戯れが過ぎるというか、悪ふざけが過ぎるというか…
呆れる私を見ても尚、事の発端である小次郎さんは飄々とした態度を崩さずに話を変えてきた。
「まあまあ、それよりマスターはさっきから…えー、タブレットだったか…を持って何をしていたんだ?ゲームってやつか?」
「何でアンタはそうマイペースなんだよ…まあいいか、サポートのアサシン枠をどうしようかなーって思っててね…」
君達3人の内の誰かにはするつもりなんだよねー、と端末を操作してみせる。
「ああ、たまに別のマスターに呼ばれるあれか。うむ、あれは実に愉快なものよ。」
心底楽しそうにニコニコと微笑む小次郎さんだが、相反して私の両隣にいる2人は面白くなさそうだ。
「主殿、さっきのやり取りでこの武士がどれだけ使えないかは分かった筈です。ここは僕が…!!」
「いんや、小太郎には荷が重いぜよ。ここは剣の天才であるこのわしが…!」
2人揃ってキラキラ…いや、ギラギラとした目でこちらに迫る。そんなにサポート編成に登録されたいのか…?何にしろ事態の収束に手間がかかる。
「うーん…まあ予想はしてたけど本人達に相談するべき話じゃ無かったね。てかさ、なんでそんなにサポートになりたいの?戦い不足?」
もし私のもとに居るのが嫌だから…とかだったらヤダなーと思いつつ、ポロッと疑問を投げかける。
すぐに返事が来ないので、両隣を見回せば、何やら気まずそうな面持ちで口ごもってしまっていた。そんなに聞かれたくないような理由があるのかな…まさかホントに私のサーヴァントになって後悔してるとか……
少し不安になり、ふと小次郎さんの方を見れば、相変わらず黙ってれば綺麗な顔に、何が面白いのか笑みを浮かべていた。つい呆れた顔をしてしまう。
そんな時、小太郎くんが口を開いた。
「そ、それは…その……」
明らかに歯切れが悪い。私とは反対に向けた顔からは表情なんて読み取れる筈も無く、小太郎くんの真意が見えない。
「あ、別に…言いづらい事なら無理に言ってくれなくても…」
「あ、いや…その…」
やはり理由を明言するのを避けているように見える。
何だか悲しくなってきてしまった。小太郎くんだけでなく、以蔵さんまでそっぽ向いて黙ったままだ。
空気がシン…と重くなる。私はつい俯いてしまった。
おかしいな…2人とは…結構仲良くなれてきた気がしてたんだけど…私の勘違いだったのかな…
その時、静かな水面で魚が跳ねるように、小次郎さんが言葉を投げかけた。
「小太郎殿。」
たった一言。それだけ。
ふと顔を上げれば、さっきまでの悪戯顔はどこへやら。どこか不機嫌そうな…それでいて諭すような視線を小太郎くんに送る小次郎さんが視界に入った。その視線を追いかけるように顔をゆっくりと右へと移動させれば、赤く染めた顔をこちらに向ける小太郎くんと目が合った。
「……主殿、僕は…僕達は…もっと主殿の役に立ちたいのです。些細な事で良い、どんなに小さな事でも良い。主殿の役に立ちたい…その一心なのです。」
隣に腰掛けていた小太郎くんは、ベッドから降りて床に跪いた。そっと右手を握られる。
「その…何だか気恥ずかしくなってしまって…先程は失礼な態度をとってしまい申し訳ありませんでした。その、僕は、貴方様の喜ぶお顔が見たいので、サポートに加えて欲しいのです……こんな理由では、いけませんでしょうか。」
握られた右手に、より一層強く、包み込むような意志を持って力が加わるのを感じる。
なるほど、さっきは恥ずかしくてあんな態度をしていたのか。腑に落ちる感覚と共に、安心感が胸に広がる。それにしても小太郎くん、なんて良い子なんだろうか…!
小太郎くんの心意気に感激を覚え、感謝の言葉を並べる私を一瞥した小次郎さんは、今度は以蔵さんの方に向き直った。
「さて、以蔵殿も恥ずかしがってないできちんとマスターの質疑に応答したらどうだ?まさか其方ともあろう者が、この程度で機嫌を損ねるような子供っぽい真似はしないであろうよ。なぁ?」
「ふんっ、じゃあかしいわい。」
以蔵さんの方に顔を向ければ、まだ不貞腐れたようにそっぽを向いている。
こっち向いてくれないのかな…
じっと、以蔵さんのモフモフした髪の毛を見つめていれば、視線が鬱陶しいのか、段々と逃げるように縮こまっていく。
「だーーーーっ!!ええ加減にせい!!!うざい!!!!」
ついに耐えきれなくなったのか、以蔵さんは振り返りざまに吠えるように叫んだ。びっくりして思わず仰け反る。
「ご、ごめんね以蔵さん…つい…」
イライラとした態度を隠す気もない以蔵さんは、暫し私を見つめて、大きく息を吐いく。
「ええか、これ以上そないに見られたら適わんから、特別に教えちゃる!わしの考えてる事なんざ、たったひとつ!人を斬る事じゃ!!」
ぐっと近付いて、睨みつけられる。先程とは立場が逆転してしまった。
以蔵さんの琥珀色の真っ直ぐな瞳を見つめれば、不意に視線を逸らされる。伏せられた目が、以蔵さん自身の手を捉えて離さない。
「わしには…わしにはそれしかできんきのぅ…だから…だから、少しでも多く人を斬るには、さぽーとに登録してもらうのが早いと思っただけぜよ!!………これで満足か?」
ぶすくれた態度…いや、よくよく見れば微かに覗く耳が赤い。照れ隠しの虚勢で威嚇してるのだ。
「充分すぎる理由だよ、以蔵さん…!」
無理に言わせたみたいになってホントにごめんね、と付け加えれば、別に今更気にせん、と素っ気なく返される。
「とにかく皆がどれだけ一生懸命かはよーくわかった!これからは週替わりで当番制にでもしてみようか?」
「はっは、それは良い提案だ。」
先程まで黙って見守ってた小次郎さんが口を開く。
そういえば、この2人から言葉を引き出すきっかけを作ったのは小次郎さんだ。もしかして…
「謀った…?」
「はて、なんの事やら。」
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