FGO夢詰め
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魔霧に包まれるロンドンで相見えた彼は、傍から見ても苦しそうで、話を聞きながら胸が締め上げられたのをよく覚えている。
だが、憤りと悲愴感が湧き上がると同時に───彼を救いたいと思った。
望まぬ戦いを強いられる彼を。
流せぬ涙で心を湿らせているであろう彼を。
でも、だから、仕方なく、他に方法が無くて…………私は彼を倒した。
消えていった時のあの彼は…チャールズ・バベッジは…どんな顔をしていたのだろうか。
「はぁ、はぁ……危なかったですね……」
「…うん………まだ震えが止まんないや…あはは……」
ロンドンでの冒険を終えて、私とマシュはカルデアへと帰還して来た。
初めて…ではないけれど、あそこまで明確な死への恐怖は、難を逃れた後でさえ尾を引いては、離れようとしない。
「お疲れ様、2人共!無事かい?」
「ダ・ヴィンチちゃん…!うん、無事だよ…」
「それなら良かった…」
「ドクターはどうされたのですか?姿が見当たりませんが…」
「ああ、彼なら青い顔して出てったよ…何気にかなりのショックを受けていたようだったからね。そっとしといてやろう。」
メディカルチェックを一通り受け、マイルームで一息つく。
今回も大冒険だったな…敵も皆手強くて……苦戦した場面も何回かあって
………最後に出て来たアイツ以外…全員、そこまで悪い奴だったようには見えなかったな……
ベッドに横になり、天井を見上げる。
ああ、そういえば、聖晶石がいくつか貯まっていた筈だ。そろそろ新たな仲間を迎えたいし、久々に召喚を試みようか。
召喚サークルを立ち上げ、石を配置する。一般人からの成り上がりである私にとって、小難しい呪文も無しに英霊達を呼ぶ事のできるこのシステムには感謝してもしきれない。
回転した魔術粒子によって、辺り一面が眩い光に包まれる。さて、今回は誰が応じてくれるのかな………
「我が名は蒸気王。ひとたび死して、空想世界と共にある者…」
吹き上げる蒸気。
鈍く輝く鋼鉄の鎧。
赤色に光を放つ目のようなライト。
片手に持つ武器は小ぶりだが……間違いはない…でも、そんな……
「…な、んで………?」
思わず膝をつき、その巨体を見上げる。心臓が煩い…でも、嫌な煩さではない。
「……何故と問われても私には答えようはない、ただ我は貴様の『呼びかけ』に応えたまでだ。そこに疑問はあるまい。」
「それは…そう、だけど……」
「…なるほど、貴様とは初めて会った気がしないが、そこに何かしら原因があるのだろうと我は推察する。仲間であったか、敵であったか…どちらにしろ因縁があった事に代わりないであろうが…それでも、まだ我について疑問と思うか?」
まるで私の顔を覗き込むような仕草で、彼は私に話しかける。それはどこか稚拙で、でも明らかにあの時に会った彼と同じ温かさがあった。
ああ、いけない、来てもらったばかりで困らせてしまった。ごめんね、なんでもないよ。と答えてから、案内の為に共に部屋を出た。
一通りカルデアの中を案内し終え、話をしようと自室に通す。好きなこと、嫌いなこと、聖杯への願いなど、ダ・ヴィンチちゃんから随分前に資料と記録の為に訊くように指示されていた内容を質問する。
「…最後に、ひとつ、いいかな。」
「もちろんだ、構わない。」
一度、小さく息を吸って、バベッジさんに向き直る。
「えっと…これは私の自己満足にしかならないんだけどね、その……私、貴方に謝らなくちゃいけない事があるの。」
「ふむ、我は貴様から謝罪を受けねばならぬ記憶は無いのだが…前に会った我が貴様との関わりで何かあった…ということだろうか。」
流石に頭が切れる。私はうなづいて、ロンドンで出会った『B』について話した。
「だから、その…仕方がない…なんて理由で、無理矢理に戦わされた貴方を倒してしまって…申し訳なくて…」
顔を上げてバベッジさんの顔の辺りを伺う。表情は読めないが、静かに何かを考えているのであろうという事はなんとなく察した。
小さな音を立てて、いくつかの蒸気が噴出される。
「なるほど、理解した。我は、それによって貴様の得た答えが『善』であったと結論する。」
「善…?どうして…」
「簡単な事だ。貴様の行動は全て『この世界の救済』への糸口であり、その過程で『世界の希望』である貴様の障害となった私が…Bが倒されねばならなかっただけである。」
でも…でもあの時の貴方は…確かに私達の味方だった…魔術師の介入がなければ……きっと…私達が貴方を倒す理由なんて無かった……それでも、貴方はこの行動を『善』と見なすの…?
なんだか分からなくなってきてしまった。私の道は…辿ってきた、辿って行くこの道は…本当に正しいの…?目頭がじわじわと熱くなるのを嫌でも感じる。バベッジは、少し困ったように一度蒸気を吹かし、また優しい声で言った。
「結果的には善であった…いや、善でなければなるまい……貴様は、その為に在るのだから。」
「バベッジさん……」
思わず、彼の大きくて硬い手に触れる。
鋼鉄である筈のそれは、蒸気のせいなのか、どこか温かいような気がした。
だが、憤りと悲愴感が湧き上がると同時に───彼を救いたいと思った。
望まぬ戦いを強いられる彼を。
流せぬ涙で心を湿らせているであろう彼を。
でも、だから、仕方なく、他に方法が無くて…………私は彼を倒した。
消えていった時のあの彼は…チャールズ・バベッジは…どんな顔をしていたのだろうか。
「はぁ、はぁ……危なかったですね……」
「…うん………まだ震えが止まんないや…あはは……」
ロンドンでの冒険を終えて、私とマシュはカルデアへと帰還して来た。
初めて…ではないけれど、あそこまで明確な死への恐怖は、難を逃れた後でさえ尾を引いては、離れようとしない。
「お疲れ様、2人共!無事かい?」
「ダ・ヴィンチちゃん…!うん、無事だよ…」
「それなら良かった…」
「ドクターはどうされたのですか?姿が見当たりませんが…」
「ああ、彼なら青い顔して出てったよ…何気にかなりのショックを受けていたようだったからね。そっとしといてやろう。」
メディカルチェックを一通り受け、マイルームで一息つく。
今回も大冒険だったな…敵も皆手強くて……苦戦した場面も何回かあって
………最後に出て来たアイツ以外…全員、そこまで悪い奴だったようには見えなかったな……
ベッドに横になり、天井を見上げる。
ああ、そういえば、聖晶石がいくつか貯まっていた筈だ。そろそろ新たな仲間を迎えたいし、久々に召喚を試みようか。
召喚サークルを立ち上げ、石を配置する。一般人からの成り上がりである私にとって、小難しい呪文も無しに英霊達を呼ぶ事のできるこのシステムには感謝してもしきれない。
回転した魔術粒子によって、辺り一面が眩い光に包まれる。さて、今回は誰が応じてくれるのかな………
「我が名は蒸気王。ひとたび死して、空想世界と共にある者…」
吹き上げる蒸気。
鈍く輝く鋼鉄の鎧。
赤色に光を放つ目のようなライト。
片手に持つ武器は小ぶりだが……間違いはない…でも、そんな……
「…な、んで………?」
思わず膝をつき、その巨体を見上げる。心臓が煩い…でも、嫌な煩さではない。
「……何故と問われても私には答えようはない、ただ我は貴様の『呼びかけ』に応えたまでだ。そこに疑問はあるまい。」
「それは…そう、だけど……」
「…なるほど、貴様とは初めて会った気がしないが、そこに何かしら原因があるのだろうと我は推察する。仲間であったか、敵であったか…どちらにしろ因縁があった事に代わりないであろうが…それでも、まだ我について疑問と思うか?」
まるで私の顔を覗き込むような仕草で、彼は私に話しかける。それはどこか稚拙で、でも明らかにあの時に会った彼と同じ温かさがあった。
ああ、いけない、来てもらったばかりで困らせてしまった。ごめんね、なんでもないよ。と答えてから、案内の為に共に部屋を出た。
一通りカルデアの中を案内し終え、話をしようと自室に通す。好きなこと、嫌いなこと、聖杯への願いなど、ダ・ヴィンチちゃんから随分前に資料と記録の為に訊くように指示されていた内容を質問する。
「…最後に、ひとつ、いいかな。」
「もちろんだ、構わない。」
一度、小さく息を吸って、バベッジさんに向き直る。
「えっと…これは私の自己満足にしかならないんだけどね、その……私、貴方に謝らなくちゃいけない事があるの。」
「ふむ、我は貴様から謝罪を受けねばならぬ記憶は無いのだが…前に会った我が貴様との関わりで何かあった…ということだろうか。」
流石に頭が切れる。私はうなづいて、ロンドンで出会った『B』について話した。
「だから、その…仕方がない…なんて理由で、無理矢理に戦わされた貴方を倒してしまって…申し訳なくて…」
顔を上げてバベッジさんの顔の辺りを伺う。表情は読めないが、静かに何かを考えているのであろうという事はなんとなく察した。
小さな音を立てて、いくつかの蒸気が噴出される。
「なるほど、理解した。我は、それによって貴様の得た答えが『善』であったと結論する。」
「善…?どうして…」
「簡単な事だ。貴様の行動は全て『この世界の救済』への糸口であり、その過程で『世界の希望』である貴様の障害となった私が…Bが倒されねばならなかっただけである。」
でも…でもあの時の貴方は…確かに私達の味方だった…魔術師の介入がなければ……きっと…私達が貴方を倒す理由なんて無かった……それでも、貴方はこの行動を『善』と見なすの…?
なんだか分からなくなってきてしまった。私の道は…辿ってきた、辿って行くこの道は…本当に正しいの…?目頭がじわじわと熱くなるのを嫌でも感じる。バベッジは、少し困ったように一度蒸気を吹かし、また優しい声で言った。
「結果的には善であった…いや、善でなければなるまい……貴様は、その為に在るのだから。」
「バベッジさん……」
思わず、彼の大きくて硬い手に触れる。
鋼鉄である筈のそれは、蒸気のせいなのか、どこか温かいような気がした。