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「いや〜働いた働いた〜…もう暫くは勘弁ですわ〜」
「最近、不足気味だったとは言え…これだけ種火の収集を連続して行うと…流石に疲れますね…」
「うふふ、あら皆でお出かけするの、私は楽しくて好きよ!」
ガヤガヤと話をしつつ、たった今種火周回を終えたパーティメンバー達がカルデアに戻って来た。
「おや、マスターはどこに…?」
「あ、先輩は今バイタルチェックに向かっていますよ。」
「んじゃもうオレも休ませてもらいますわ〜。宝具打ちすぎて眠くてかなわねえや…」
大きな欠伸を漏らしながら、ロビンフッドは自室へと帰って行く。それを皮切りにして、他のサーヴァント達もめいめい好きな部屋へと足を運んだ。
所変わって管制室では、マスターである○○のバイタルチェックが丁度終わったようだ。
「よし、特に異常は無いね!お疲れ様。」
優しい笑顔を向けるのは、カルデアの頼れる(?)ドクター、ロマニだ。
「うん、ありがとうドクター!」
「それにしてもあんなに連続で種火を集めに行くなんて、ちょっと普段より無茶したんじゃないかい?…まさか明日も行くとか言い出さないよね?」
人懐っこい顔を曇らせながら、ドクターは詰問する。言えない…明日も行こうと思ってたなんて絶対に言えない…!
「あはは!ロマニは本当に過保護だなあ!○○ちゃんの父親か何かかい?」
高らかな笑い声を響かせるのはダ・ヴィンチちゃん。その言葉に、ロマニは顔を赤くして反論をする。
「ちがっ…僕は医者として○○ちゃんの体調の心配をだね…!」
「なら上司として、明日一日を強制休暇としてしまうなんてどうだい?」
強制休暇…!?ドクターにそんな権限があるのか…?
「う…今、○○ちゃんにそこそこ失礼な事を思われた気がしなくも無いけど…まあいいや、アイデアとしては素晴らしいしね。という訳で、明日はレイシフト禁止!体をゆっくり休める事!分かっかい?」
本当に子供相手に言い聞かせるように話されては参ってしまう。丁度点検と調整もしたかったし!なんて理由も付け加えられてしまった。
「うう…まあしょうがない…」
「まあまあ、そう落ち込むことはないぜ、○○ちゃん。どうかな?せっかくのいい機会だし、英霊達の為に日頃の感謝を込めて酒盛りなんて…」
「それはダ・ヴィンチちゃんが飲みたいだけでは!?」
つっこみを入れれば、図星とでも言いたげにダ・ヴィンチちゃんの口元が弧を描いた。
「おっと、バレたか。まあでも良い提案な事に代わりはないだろう?」
なんなら私の秘蔵のワインも出すよ〜?なんて言われたが、そもそも私は未成年だから、そんな言葉で釣ろうとされても困ると言いますか…
う〜ん…でも…サーヴァントの皆は喜ぶかな…だったら盛大にパーティしても楽しいかも…飲めないのは私だけじゃないし…!
「じゃあやりますか!」
「やったー!決まりだね!じゃあここから放送で伝えるといいよ。きっとみーんな大喜びで『マスター最高!』『愛してる!!』と、君を讃えまくるだろうさ!」
喜び方が大袈裟すぎるなあ、と思いつつも、管制室のマイクを借りて、カルデア内全域に放送をかけた。
『あーテステス…こちらマスターです。サーヴァントの皆さん、およびスタッフの皆さん、今日は種火周回お疲れ様です。それで、なんとドクターとダ・ヴィンチちゃんの粋な計らいにより、明日は急遽お休みとなりました!そして、これまたダ・ヴィンチちゃんの提案・提供により、今夜はえーっと、宴会をします!という訳で、カルデアキッチンの皆さんはパーティ料理の準備、力自慢の皆さんはダ・ヴィンチちゃん秘蔵のお酒を持ってくるお手伝いをお願いしますね!もちろん、他の皆さんも暇でしたらキッチンのお手伝い等お願いします!それでは〜!』
ふう、まあこんなところか。
とりあえず一旦マイルームに戻って着替えてシャワーを浴びてこよう…
「それじゃ、私は酒蔵にワインを取りに行くよ。君の放送のおかげで人手も足りそうだ!」
ダ・ヴィンチちゃんもご機嫌に管制室を後にする。
「いいねぇ、僕もたまには飲もうかな〜…」
「良いじゃないですか、息抜きは大事ですよ。」
「でもね〜以前ダ・ヴィンチちゃんに無理矢理強いお酒飲まされた事があるからな…」
「…まあ無理の無い程度に楽しんでください。」
ドクター下戸そうだもんなーなんて苦笑しながら、私も管制室を出た。
着替えとシャワーを終え、キッチンの様子を見ようと覗きに行けば、そこには予想外の人数の英霊達が手伝いとして駆り出していた。
ちょうど近くにいたブーティさんに声をかければ、テーブルを拭いて回るよう指示され、空いているテーブルを片っ端から布巾で磨き始めた。
「お!マスター!!」
食器を運んでいたプニキから声をかけられる。うん、見るからに上機嫌だ。
「プニキもお手伝いに来てたんだね。」
「そりゃあな!早く旨い酒飲みたいしよー!!」
あ、やっぱりお酒とか好きなんだ…てかプニキって年齢は…まあいいか…いや良くないか…?足取りも軽く去って行くプニキを見守りながら首を傾げる。
「おお、主殿!其方も料理人達の手伝いか?」
「あ、小次郎さん…!」
今度は、これまた嬉しさを隠す気もなさそうな小次郎さんの登場だ。箸やらフォーク、スプーンやらを並べているらしい。
「主殿は未成年であるから飲めない、というのがちと残念だが…お酌なんぞ、頼めばやってくれたりするのかな?」
「あはは、まあそれくらいならやりますよ。」
おお、なら頼もう!と顔をほころばせながら、小次郎さんはまた手伝いに戻って行く。でも、こんなに大量にあるお箸とか、1人で並べてるのかな…?それって大変なんじゃ…
「主殿、失礼してよろしいですか?」
「うわっ!?びっくりした…小太郎くんか〜!!」
背後から声をかけてきたのは小太郎くん。流石忍者、気配遮断なんてお手の物って感じか…などと感心しながらその場を退けば、小太郎くんもお箸やフォークなどを並べ出した。あれ、小次郎さんもやってたような…?
「小太郎くんもそのお仕事なの?」
「…ええ、不本意ながらあの武士に捕まり強制的に手伝わされているんです。」
あら、不機嫌な声色。うつむき加減な上に長い前髪で目元が読み取れないが、思わずとは言え地雷を踏んだのは明確だった。
「なんじゃ、まだおまん文句垂れゆうがか。ええ加減にしぃや。」
テーブルを挟んだ向かい側から話しかけてきたのは以蔵さんだ。どうやら以蔵さんも2人と同じ仕事をしてるらしい。こっちも小次郎さんに捕まった口だろうなぁ、というのは何となく分かった。
「折角ますたぁが用意してくれた酒の席じゃ、そないな気持ちで準備手伝うてどうする。」
「だって、僕は別に…飲む訳でも無いのに…」
「それはますたぁやちっこい奴らも同じじゃ。だったら準備だけでもちっとは楽しんだらええぜよ。その方がますたぁも喜ぶ。なぁ?」
急にふられて驚いたが、そうだね、と頷く。
「…はい!」
それでは、と小太郎くんと以蔵さんは別の場所へと移動して行った。うーん、以蔵さんのお兄ちゃん力を見せつけられてしまったなあ…!来たばっかの時はあんなに狂犬みたいに威嚇気味だったのに…マスター嬉しいよ…!!
さて、お手伝いもほぼ終わりに向かう頃、ヘラクレスさんやベオウルフさんを始めとした、筋肉自慢な皆が運んでくれた大量のお酒も無事に到着したようだ。
「こっちはドイツの1854年モノで、こっちはイタリア。確か…1892年のかな。あと新しいのも欲しくてね〜2005年のアメリカのと、ついでに1997年の日本のも持ってきてもらっちゃった!」
ウキウキと上機嫌で語るダ・ヴィンチちゃん。うん、当たり前だけどワインなんて飲んだ事もないからどう違うのか全く分からないね。まあボトルじゃなくゴロゴロと置かれる大きなワイン樽達にはツッコミを入れたいけど。どんだけ飲む気だよ…
「あと、これはマスター達の分だ。」
ベオウルフさんがそう言って持ってきたのはオレンジジュースとりんごジュースの大きな瓶。
「わー!ありがとうベオベオ!!」
「おう。大人だけで楽しんでもいけねえからな。」
流石勇者ベオウルフさん…!!
私やアンデルセン先生を抜いたちびっこ達は大喜びだよ…!
かくして私主催という名目で大宴会が始まった。
皆が手伝いをしてくれたお陰で大皿に盛られて出てきたのは、美味しそうなフライドポテトやサラダ、唐揚げなど。
どうやらバイキングっぽくめいめいで取ったりする仕様にするらしい。
小次郎さんや、『じゃあ自分も…』と言い出した他の皆にお酒をついで回る。とにかく皆が楽しそうで、それが一番嬉しかった。
早速酔っ払い出した荊軻さんや日本人サーヴァント達が騒ぎ出す。
「あ〜しあわしぇ〜!!お酒美味しい〜!!」
「この、わいんっちゅう酒も中々にうまいなぁ!!わしゃ気に入ったぜよ!!」
「そいつは良かった!日本酒も用意してあるから、そっちもどうだい?」
「おお!流石ダ・ヴィンチ殿、手配が行き届いておる!!」
響き渡る笑い声、奇声、一部の魔女様は泣き出してるし…やっぱ大丈夫かな、これ…
でも、親戚の集まりみたいで楽しいかも…
「ねえ、君もお酒を飲むの?大人じゃないのに?」
「五月蝿いぞ小童。俺の中身はおっさんだ。こんな良い機会に飲まんでいられるか。」
「あはは、いいねぇ!僕も飲んでみたいや!!」
男の子達(約1名おっさん)は3人で固まってるらしい。うーん、遠目から見る分には可愛い。
「先輩!こちらだったのですね。」
「あ、マシュ。」
「皆さん大いにはしゃいでいらして…開いて良かったですね、宴会!」
「そうだね、皆が楽しんでくれて私も嬉しいよ。」
「ふふ、先輩らしいご感想です。そういえば、こちらの料理は食べましたか?ロールサンドという品なんですが、大変絶品で…」
「え、食べてない。場所教えてよ、一緒に取りに行こ!」
はい!と返事され、マシュと行動を共にする。たまの息抜き、めいっぱい楽しまなくっちゃね!
気が付けば夜の11:00。
大騒ぎだった宴会も、あちらこちらで酔い潰れたサーヴァント達の寝息が聞こえるようになってきた。隣に座るマシュも眠そうだ。
「そろそろお開きかな。子供達は先に寝るように言ったから残ってないけど…」
この惨状はかなり酷い。うん、酷い。
散らかったテーブルに、潰れて眠りこけるサーヴァント、そしてまだまだ飲む気満々の人達まで居るようだ。
「みんなー、寝てる人達を起こすか運ぶかしてくれるー?そろそろお開きにしよー」
ええー!?なんて元気な声も聞こえるが、そんなのは一部。とりあえず片付けてからまた飲んで良いから!と言えば、わーい!と一斉に片付けを始める。お酒が入ってるとは言えなんてチョロい大英雄達だ…
「ほらー、ちょっとそこ…ってロビンさん?珍しいね、酔い潰れて寝てるの…」
「やあマスター!こいつ今日カードゲームでツキがまったく回らなくってね!いつもより呑みすぎたみたいなんだっ!」
本人の代わりに返事をしたのは、恐らく潰した犯人であろう、ビリー君。
「君も結構酔ってるみたいだけど…まあいいか、ほらロビンさーん、寝るなら自分のお部屋で寝てくださーい。」
私もビリーくんもロビンさんを運べる程大柄ではないので、とりあえず隣に座って肩を揺する。できるだけ起こす方向でいかないとね。
「う…マスター…?」
あ、気が付いた。よしよしこのまま立たせて部屋へ…と思った矢先、雪崩込むようにしてロビンさんに抱きつかれる。
「うぇあ!?ちょ、ロビンさ…大丈夫ですっ!?」
「んん〜…」
あ、ダメだめちゃくちゃ酔ってるぞ、この人。普段ならこんな事死んでもしない、やりたくてもやらない人の筈なのだ。証拠写真を撮って後でからかってもいいけど、生憎私は175cm/65kgの成人男性にのしかかられて身動き取れるほど強靭じゃない。
いつもなら森の中の様な香りがする髪の近くは強いお酒の匂いが混じっている。これは、このままだと香りで酔うのでは、と錯覚させられそうな程だ。
「ロビンさーん、ちょっと、もういい加減にして下さいよー」
「んぐぅ…」
寝てやがる。
「ふわあ〜…ボクも眠くなっちゃった、先に部屋戻ってるから、そいつは任せたよ、マスター♡」
「えっ!?待ってよビリーくん!ちょっとホント…あーもう、ロビンさーん!起きてー?」
あー、ダメだ。動かないし動けない。誰か助けてよー…
「これは…どういう状況だ…?」
後ろから降ってきた声に、唯一動かせる首を回して見上げれば、そこにはこちらも酔っているらしいヘクトール。しかし流石トロイアの戦士!潰れて眠る森の狩人とは違い、ちゃんと意識はある!助かった!!
「ナイスタイミングだよ、ヘクおじ〜!動けないから助けて〜!」
「んん〜なるほどなあ、いいぜいいぜ、オジサンに任せな。」
頭をポンポンと2、3度軽く叩かれる。良かった〜、天は我に味方した!
「ホレホレお兄さん〜いい加減起きろ〜、オジサンのマスターをあんまり困らせないでおくれ〜」
いや、ちょっと待ってくれヘクトールさん、ロビンさんの背中をその右手でバシバシ叩かないであげてくれ。めっちゃ痛そう…てかロビンさんこれでも起きないの!?心配になってきたんだけど…!!
「こりゃあダメだ。すっかり安心しちまってるよ、はっはっ!」
「笑い事じゃないんですけど…てかロビンさん大丈夫なの…?」
なんとか届く脇のあたりをつついてみるも、反応は無し。耳元で規則正しい寝息が聞こえるだけだ。
「はぁ〜あ、オジサンも疲れちゃったよ〜?」
「あ…じゃあもう良いよ…ありがとうね、部屋に戻ってゆっくり寝て…待て待て待て、なんで私の隣に座って…?」
「オジサンもここで寝るんで。じゃ、おやすみ〜」
「ちょっ!?毛布的なテンションでマントかけるのやめて…!?まだロビンさんが乗っかってて重…あ、寝た…!」
うわあ、本格的に身動きが取れなくなってきたんですけど…!
前門に虎後門に狼じゃないけど、右側にロビンさん、左側にヘクトール…なんだこれ…
「おおーい主殿〜!何故そんなとこに座り込んで…ややっ!?」
ゲッ…小次郎さん[酔っ払い]…
こちらもまた上機嫌でウザそ…いえいえ手間のかかりそうなご様子。
いいからこの人達をどけてくれ…という念を込めて見つめれば、小次郎さんは顎に手を当て、しげしげとこちらを見つめ返してくる。なんのつもりだ。
「う〜ん…なんだか羨ましい事になっている様子…」
「は?何がです?この状況のどこが羨ましいって…え…こわ…」
「私も主殿に寄っかかって寝たい。」
「おいこら佐々木小次郎。」
「というか寝むい。」
「ご自分のお部屋でお休みください。」
というか、この人達をどけてってば!と訴えるも、酔って意識がフワフワしてるのか、小次郎さんはミリとも聞いてなさそうだ。
「まあとりあえず主殿、足元をお借りするぞ。」
「待って、なにがどういう因果関係でそんな発言に至ったのかな?」
「だって左右が空いていないからなあ…もう足元に座りこませて頂くしかあるまいよ。」
「分かった分かった、自分のお部屋に行きなさい。」
てかもう何回コント風の会話をしなきゃならないの!?あ〜もう…ため息をついた隙に、小次郎さんは足元で胡座をかき、船を漕ぎ始めた。
もういい加減に暑いし、重い。誰でもいい…助けてくれ…
「マスター…その様子は一体…大丈夫か…?」
アヴィケブロン!
うわー、良かったー!アヴィケブロンなら大丈夫だ!なんたって今回の宴会で一口もお酒を飲んでない!隅っこでジュース飲んでたの私見た!!
「うわーん、助けてアヴィケブロンー!動けないの〜!!」
「うん、そうだろうね。少し待ってくれ。ゴーレムで3人をそこから除こう。」
うう…流石ゴーレムマスター…!頼りになる…!!
パチン、とアヴィケブロンの指が鳴らされ、現れた三体のゴーレムがあっという間に3人を掴み上げて運んで行く。
ようやく自由に動ける…!!
「いやあ〜本当に助かったよアヴィケブロン!ありがとう!!」
「喜んでもらえたのなら何よりだ。自室へ戻るのなら送ろうか。」
「あはは、ありがとう。じゃあ一緒についてきてもらっちゃおうかな。」
まだまだ飲む気のサーヴァント達におやすみーと声をかけ、食堂を出る。
部屋の前でアヴィケブロンとわかれて、ベッドに座り込んだ。
いやあ、それにしても疲れた。宴会中も結構皆に絡まれたりしたし大変だったけど、あの3人には一番参った。
まあロビンさんは特にそうだけど、あまり甘えるとか寄っかかるとかしない人達だし、たまになら良いけど…いっぺんは勘弁して欲しいな。
まあ明後日からのバトルでの活躍に期待しよう…
まあでも…なんだかんだ楽しかったな…
ふふっと軽くこぼれた笑いを噛み締めて、私は眠りについた。
「最近、不足気味だったとは言え…これだけ種火の収集を連続して行うと…流石に疲れますね…」
「うふふ、あら皆でお出かけするの、私は楽しくて好きよ!」
ガヤガヤと話をしつつ、たった今種火周回を終えたパーティメンバー達がカルデアに戻って来た。
「おや、マスターはどこに…?」
「あ、先輩は今バイタルチェックに向かっていますよ。」
「んじゃもうオレも休ませてもらいますわ〜。宝具打ちすぎて眠くてかなわねえや…」
大きな欠伸を漏らしながら、ロビンフッドは自室へと帰って行く。それを皮切りにして、他のサーヴァント達もめいめい好きな部屋へと足を運んだ。
所変わって管制室では、マスターである○○のバイタルチェックが丁度終わったようだ。
「よし、特に異常は無いね!お疲れ様。」
優しい笑顔を向けるのは、カルデアの頼れる(?)ドクター、ロマニだ。
「うん、ありがとうドクター!」
「それにしてもあんなに連続で種火を集めに行くなんて、ちょっと普段より無茶したんじゃないかい?…まさか明日も行くとか言い出さないよね?」
人懐っこい顔を曇らせながら、ドクターは詰問する。言えない…明日も行こうと思ってたなんて絶対に言えない…!
「あはは!ロマニは本当に過保護だなあ!○○ちゃんの父親か何かかい?」
高らかな笑い声を響かせるのはダ・ヴィンチちゃん。その言葉に、ロマニは顔を赤くして反論をする。
「ちがっ…僕は医者として○○ちゃんの体調の心配をだね…!」
「なら上司として、明日一日を強制休暇としてしまうなんてどうだい?」
強制休暇…!?ドクターにそんな権限があるのか…?
「う…今、○○ちゃんにそこそこ失礼な事を思われた気がしなくも無いけど…まあいいや、アイデアとしては素晴らしいしね。という訳で、明日はレイシフト禁止!体をゆっくり休める事!分かっかい?」
本当に子供相手に言い聞かせるように話されては参ってしまう。丁度点検と調整もしたかったし!なんて理由も付け加えられてしまった。
「うう…まあしょうがない…」
「まあまあ、そう落ち込むことはないぜ、○○ちゃん。どうかな?せっかくのいい機会だし、英霊達の為に日頃の感謝を込めて酒盛りなんて…」
「それはダ・ヴィンチちゃんが飲みたいだけでは!?」
つっこみを入れれば、図星とでも言いたげにダ・ヴィンチちゃんの口元が弧を描いた。
「おっと、バレたか。まあでも良い提案な事に代わりはないだろう?」
なんなら私の秘蔵のワインも出すよ〜?なんて言われたが、そもそも私は未成年だから、そんな言葉で釣ろうとされても困ると言いますか…
う〜ん…でも…サーヴァントの皆は喜ぶかな…だったら盛大にパーティしても楽しいかも…飲めないのは私だけじゃないし…!
「じゃあやりますか!」
「やったー!決まりだね!じゃあここから放送で伝えるといいよ。きっとみーんな大喜びで『マスター最高!』『愛してる!!』と、君を讃えまくるだろうさ!」
喜び方が大袈裟すぎるなあ、と思いつつも、管制室のマイクを借りて、カルデア内全域に放送をかけた。
『あーテステス…こちらマスターです。サーヴァントの皆さん、およびスタッフの皆さん、今日は種火周回お疲れ様です。それで、なんとドクターとダ・ヴィンチちゃんの粋な計らいにより、明日は急遽お休みとなりました!そして、これまたダ・ヴィンチちゃんの提案・提供により、今夜はえーっと、宴会をします!という訳で、カルデアキッチンの皆さんはパーティ料理の準備、力自慢の皆さんはダ・ヴィンチちゃん秘蔵のお酒を持ってくるお手伝いをお願いしますね!もちろん、他の皆さんも暇でしたらキッチンのお手伝い等お願いします!それでは〜!』
ふう、まあこんなところか。
とりあえず一旦マイルームに戻って着替えてシャワーを浴びてこよう…
「それじゃ、私は酒蔵にワインを取りに行くよ。君の放送のおかげで人手も足りそうだ!」
ダ・ヴィンチちゃんもご機嫌に管制室を後にする。
「いいねぇ、僕もたまには飲もうかな〜…」
「良いじゃないですか、息抜きは大事ですよ。」
「でもね〜以前ダ・ヴィンチちゃんに無理矢理強いお酒飲まされた事があるからな…」
「…まあ無理の無い程度に楽しんでください。」
ドクター下戸そうだもんなーなんて苦笑しながら、私も管制室を出た。
着替えとシャワーを終え、キッチンの様子を見ようと覗きに行けば、そこには予想外の人数の英霊達が手伝いとして駆り出していた。
ちょうど近くにいたブーティさんに声をかければ、テーブルを拭いて回るよう指示され、空いているテーブルを片っ端から布巾で磨き始めた。
「お!マスター!!」
食器を運んでいたプニキから声をかけられる。うん、見るからに上機嫌だ。
「プニキもお手伝いに来てたんだね。」
「そりゃあな!早く旨い酒飲みたいしよー!!」
あ、やっぱりお酒とか好きなんだ…てかプニキって年齢は…まあいいか…いや良くないか…?足取りも軽く去って行くプニキを見守りながら首を傾げる。
「おお、主殿!其方も料理人達の手伝いか?」
「あ、小次郎さん…!」
今度は、これまた嬉しさを隠す気もなさそうな小次郎さんの登場だ。箸やらフォーク、スプーンやらを並べているらしい。
「主殿は未成年であるから飲めない、というのがちと残念だが…お酌なんぞ、頼めばやってくれたりするのかな?」
「あはは、まあそれくらいならやりますよ。」
おお、なら頼もう!と顔をほころばせながら、小次郎さんはまた手伝いに戻って行く。でも、こんなに大量にあるお箸とか、1人で並べてるのかな…?それって大変なんじゃ…
「主殿、失礼してよろしいですか?」
「うわっ!?びっくりした…小太郎くんか〜!!」
背後から声をかけてきたのは小太郎くん。流石忍者、気配遮断なんてお手の物って感じか…などと感心しながらその場を退けば、小太郎くんもお箸やフォークなどを並べ出した。あれ、小次郎さんもやってたような…?
「小太郎くんもそのお仕事なの?」
「…ええ、不本意ながらあの武士に捕まり強制的に手伝わされているんです。」
あら、不機嫌な声色。うつむき加減な上に長い前髪で目元が読み取れないが、思わずとは言え地雷を踏んだのは明確だった。
「なんじゃ、まだおまん文句垂れゆうがか。ええ加減にしぃや。」
テーブルを挟んだ向かい側から話しかけてきたのは以蔵さんだ。どうやら以蔵さんも2人と同じ仕事をしてるらしい。こっちも小次郎さんに捕まった口だろうなぁ、というのは何となく分かった。
「折角ますたぁが用意してくれた酒の席じゃ、そないな気持ちで準備手伝うてどうする。」
「だって、僕は別に…飲む訳でも無いのに…」
「それはますたぁやちっこい奴らも同じじゃ。だったら準備だけでもちっとは楽しんだらええぜよ。その方がますたぁも喜ぶ。なぁ?」
急にふられて驚いたが、そうだね、と頷く。
「…はい!」
それでは、と小太郎くんと以蔵さんは別の場所へと移動して行った。うーん、以蔵さんのお兄ちゃん力を見せつけられてしまったなあ…!来たばっかの時はあんなに狂犬みたいに威嚇気味だったのに…マスター嬉しいよ…!!
さて、お手伝いもほぼ終わりに向かう頃、ヘラクレスさんやベオウルフさんを始めとした、筋肉自慢な皆が運んでくれた大量のお酒も無事に到着したようだ。
「こっちはドイツの1854年モノで、こっちはイタリア。確か…1892年のかな。あと新しいのも欲しくてね〜2005年のアメリカのと、ついでに1997年の日本のも持ってきてもらっちゃった!」
ウキウキと上機嫌で語るダ・ヴィンチちゃん。うん、当たり前だけどワインなんて飲んだ事もないからどう違うのか全く分からないね。まあボトルじゃなくゴロゴロと置かれる大きなワイン樽達にはツッコミを入れたいけど。どんだけ飲む気だよ…
「あと、これはマスター達の分だ。」
ベオウルフさんがそう言って持ってきたのはオレンジジュースとりんごジュースの大きな瓶。
「わー!ありがとうベオベオ!!」
「おう。大人だけで楽しんでもいけねえからな。」
流石勇者ベオウルフさん…!!
私やアンデルセン先生を抜いたちびっこ達は大喜びだよ…!
かくして私主催という名目で大宴会が始まった。
皆が手伝いをしてくれたお陰で大皿に盛られて出てきたのは、美味しそうなフライドポテトやサラダ、唐揚げなど。
どうやらバイキングっぽくめいめいで取ったりする仕様にするらしい。
小次郎さんや、『じゃあ自分も…』と言い出した他の皆にお酒をついで回る。とにかく皆が楽しそうで、それが一番嬉しかった。
早速酔っ払い出した荊軻さんや日本人サーヴァント達が騒ぎ出す。
「あ〜しあわしぇ〜!!お酒美味しい〜!!」
「この、わいんっちゅう酒も中々にうまいなぁ!!わしゃ気に入ったぜよ!!」
「そいつは良かった!日本酒も用意してあるから、そっちもどうだい?」
「おお!流石ダ・ヴィンチ殿、手配が行き届いておる!!」
響き渡る笑い声、奇声、一部の魔女様は泣き出してるし…やっぱ大丈夫かな、これ…
でも、親戚の集まりみたいで楽しいかも…
「ねえ、君もお酒を飲むの?大人じゃないのに?」
「五月蝿いぞ小童。俺の中身はおっさんだ。こんな良い機会に飲まんでいられるか。」
「あはは、いいねぇ!僕も飲んでみたいや!!」
男の子達(約1名おっさん)は3人で固まってるらしい。うーん、遠目から見る分には可愛い。
「先輩!こちらだったのですね。」
「あ、マシュ。」
「皆さん大いにはしゃいでいらして…開いて良かったですね、宴会!」
「そうだね、皆が楽しんでくれて私も嬉しいよ。」
「ふふ、先輩らしいご感想です。そういえば、こちらの料理は食べましたか?ロールサンドという品なんですが、大変絶品で…」
「え、食べてない。場所教えてよ、一緒に取りに行こ!」
はい!と返事され、マシュと行動を共にする。たまの息抜き、めいっぱい楽しまなくっちゃね!
気が付けば夜の11:00。
大騒ぎだった宴会も、あちらこちらで酔い潰れたサーヴァント達の寝息が聞こえるようになってきた。隣に座るマシュも眠そうだ。
「そろそろお開きかな。子供達は先に寝るように言ったから残ってないけど…」
この惨状はかなり酷い。うん、酷い。
散らかったテーブルに、潰れて眠りこけるサーヴァント、そしてまだまだ飲む気満々の人達まで居るようだ。
「みんなー、寝てる人達を起こすか運ぶかしてくれるー?そろそろお開きにしよー」
ええー!?なんて元気な声も聞こえるが、そんなのは一部。とりあえず片付けてからまた飲んで良いから!と言えば、わーい!と一斉に片付けを始める。お酒が入ってるとは言えなんてチョロい大英雄達だ…
「ほらー、ちょっとそこ…ってロビンさん?珍しいね、酔い潰れて寝てるの…」
「やあマスター!こいつ今日カードゲームでツキがまったく回らなくってね!いつもより呑みすぎたみたいなんだっ!」
本人の代わりに返事をしたのは、恐らく潰した犯人であろう、ビリー君。
「君も結構酔ってるみたいだけど…まあいいか、ほらロビンさーん、寝るなら自分のお部屋で寝てくださーい。」
私もビリーくんもロビンさんを運べる程大柄ではないので、とりあえず隣に座って肩を揺する。できるだけ起こす方向でいかないとね。
「う…マスター…?」
あ、気が付いた。よしよしこのまま立たせて部屋へ…と思った矢先、雪崩込むようにしてロビンさんに抱きつかれる。
「うぇあ!?ちょ、ロビンさ…大丈夫ですっ!?」
「んん〜…」
あ、ダメだめちゃくちゃ酔ってるぞ、この人。普段ならこんな事死んでもしない、やりたくてもやらない人の筈なのだ。証拠写真を撮って後でからかってもいいけど、生憎私は175cm/65kgの成人男性にのしかかられて身動き取れるほど強靭じゃない。
いつもなら森の中の様な香りがする髪の近くは強いお酒の匂いが混じっている。これは、このままだと香りで酔うのでは、と錯覚させられそうな程だ。
「ロビンさーん、ちょっと、もういい加減にして下さいよー」
「んぐぅ…」
寝てやがる。
「ふわあ〜…ボクも眠くなっちゃった、先に部屋戻ってるから、そいつは任せたよ、マスター♡」
「えっ!?待ってよビリーくん!ちょっとホント…あーもう、ロビンさーん!起きてー?」
あー、ダメだ。動かないし動けない。誰か助けてよー…
「これは…どういう状況だ…?」
後ろから降ってきた声に、唯一動かせる首を回して見上げれば、そこにはこちらも酔っているらしいヘクトール。しかし流石トロイアの戦士!潰れて眠る森の狩人とは違い、ちゃんと意識はある!助かった!!
「ナイスタイミングだよ、ヘクおじ〜!動けないから助けて〜!」
「んん〜なるほどなあ、いいぜいいぜ、オジサンに任せな。」
頭をポンポンと2、3度軽く叩かれる。良かった〜、天は我に味方した!
「ホレホレお兄さん〜いい加減起きろ〜、オジサンのマスターをあんまり困らせないでおくれ〜」
いや、ちょっと待ってくれヘクトールさん、ロビンさんの背中をその右手でバシバシ叩かないであげてくれ。めっちゃ痛そう…てかロビンさんこれでも起きないの!?心配になってきたんだけど…!!
「こりゃあダメだ。すっかり安心しちまってるよ、はっはっ!」
「笑い事じゃないんですけど…てかロビンさん大丈夫なの…?」
なんとか届く脇のあたりをつついてみるも、反応は無し。耳元で規則正しい寝息が聞こえるだけだ。
「はぁ〜あ、オジサンも疲れちゃったよ〜?」
「あ…じゃあもう良いよ…ありがとうね、部屋に戻ってゆっくり寝て…待て待て待て、なんで私の隣に座って…?」
「オジサンもここで寝るんで。じゃ、おやすみ〜」
「ちょっ!?毛布的なテンションでマントかけるのやめて…!?まだロビンさんが乗っかってて重…あ、寝た…!」
うわあ、本格的に身動きが取れなくなってきたんですけど…!
前門に虎後門に狼じゃないけど、右側にロビンさん、左側にヘクトール…なんだこれ…
「おおーい主殿〜!何故そんなとこに座り込んで…ややっ!?」
ゲッ…小次郎さん[酔っ払い]…
こちらもまた上機嫌でウザそ…いえいえ手間のかかりそうなご様子。
いいからこの人達をどけてくれ…という念を込めて見つめれば、小次郎さんは顎に手を当て、しげしげとこちらを見つめ返してくる。なんのつもりだ。
「う〜ん…なんだか羨ましい事になっている様子…」
「は?何がです?この状況のどこが羨ましいって…え…こわ…」
「私も主殿に寄っかかって寝たい。」
「おいこら佐々木小次郎。」
「というか寝むい。」
「ご自分のお部屋でお休みください。」
というか、この人達をどけてってば!と訴えるも、酔って意識がフワフワしてるのか、小次郎さんはミリとも聞いてなさそうだ。
「まあとりあえず主殿、足元をお借りするぞ。」
「待って、なにがどういう因果関係でそんな発言に至ったのかな?」
「だって左右が空いていないからなあ…もう足元に座りこませて頂くしかあるまいよ。」
「分かった分かった、自分のお部屋に行きなさい。」
てかもう何回コント風の会話をしなきゃならないの!?あ〜もう…ため息をついた隙に、小次郎さんは足元で胡座をかき、船を漕ぎ始めた。
もういい加減に暑いし、重い。誰でもいい…助けてくれ…
「マスター…その様子は一体…大丈夫か…?」
アヴィケブロン!
うわー、良かったー!アヴィケブロンなら大丈夫だ!なんたって今回の宴会で一口もお酒を飲んでない!隅っこでジュース飲んでたの私見た!!
「うわーん、助けてアヴィケブロンー!動けないの〜!!」
「うん、そうだろうね。少し待ってくれ。ゴーレムで3人をそこから除こう。」
うう…流石ゴーレムマスター…!頼りになる…!!
パチン、とアヴィケブロンの指が鳴らされ、現れた三体のゴーレムがあっという間に3人を掴み上げて運んで行く。
ようやく自由に動ける…!!
「いやあ〜本当に助かったよアヴィケブロン!ありがとう!!」
「喜んでもらえたのなら何よりだ。自室へ戻るのなら送ろうか。」
「あはは、ありがとう。じゃあ一緒についてきてもらっちゃおうかな。」
まだまだ飲む気のサーヴァント達におやすみーと声をかけ、食堂を出る。
部屋の前でアヴィケブロンとわかれて、ベッドに座り込んだ。
いやあ、それにしても疲れた。宴会中も結構皆に絡まれたりしたし大変だったけど、あの3人には一番参った。
まあロビンさんは特にそうだけど、あまり甘えるとか寄っかかるとかしない人達だし、たまになら良いけど…いっぺんは勘弁して欲しいな。
まあ明後日からのバトルでの活躍に期待しよう…
まあでも…なんだかんだ楽しかったな…
ふふっと軽くこぼれた笑いを噛み締めて、私は眠りについた。