「こ、こんばんは……」
「ん、こんばんは」

……あの、よかったら、一緒にご飯食べませんか。
こ、この間、の埋め合わせ、のつもり、なんですけど……。

勇気を振り絞って出した震えた声を、不破先輩は馬鹿にすることなく、優しく微笑んでくれた。


「……うん、ありがとう。えっと……高円寺ちゃんは、どっちのメニューにする?」
「わ、たし、は……こっち、ですかね」
「じゃあ、僕もこっちにしよっかな」

※

「不破先輩と、三郎先輩って、仲がいいんですね」
「五年ろ組の名物コンビと名高いからね」

それなりに仲はいいよ。たまに、勘弁してと思うこともあるけどね。

まあ、悪戯好きそうだし、変装されている側としては色々迷惑を被ったりするんだろうなあ……。
いや、今のはさすがに三郎先輩に失礼に当たるかな……ごめんなさい。


「というか、三郎先輩って呼んでるんだね」
「あ、は、はい。それでいいって言われたので……」
「三郎とは、いつはじめて話したの?」

……な、なんかいつもと雰囲気違うな……。
なんだろう。笑顔は柔らかいのに雰囲気が冷たいというか、ひんやりしているような……。

ううん、なんだ、これ。とりあえず話してみよう。


「あの、先生方には秘密ですよ。バレちゃったら三郎先輩が怒られちゃいますから」
「……ははあ、さては三郎がくのいち教室に入ってきたんだね?
マラソン中にやたら会わないと思ったらそんな所にいたとは……で、どんな話を?」

忍たまの五年生の方々は実技授業でマラソンをしていたのか……。
あの変装の腕前からして相当優秀な先輩だろうと思っていたのだけれど、思っていたより悪戯好きが高じているらしい。

……授業をサボるとは、むしろ問題児なのかな?
いや忍者としてそこに“いない”とバレていないということはむしろ優秀なのだろうか。
カンニングが忍者として優秀とされるくらいだし……ここにいるとつくづく優秀の概念があやふやになってくるな。