第五章「生長」
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「この、十六年間……あなたに、色々なものを背負わせたわ。
勉学、習い事、運動、作法……兵助が何も言わないことをいいことに、重すぎる期待をしていた。
……兵助だって、私たちと同じ人間なのに。何も分かってやれなかったわ。
ただの自己満足に過ぎないかもしれないけれど、それでも謝らさせてほしい。
本当に、本当に……ごめんなさい」
再び、俺とそっくりな、黒の長いくせっ毛がたらんと垂らされた。
……違う。違うんだ。
確かに、辛かった。
それは否定出来ないし、実際、俺は重すぎる期待をプレッシャーに感じていた。
最初は父さんや母さんが褒めてくれるからって頑張っていたけど、
そのうち努力になんの価値も感じなくなって、ただ結果だけを求めるようになって……。
百恵と出会うまで、本当に、毎日が地獄みたいだった。
でも――俺が今、話したいのはそれのことじゃなくて。
〝自分を殺すということは、分かり合おうとすることへの拒絶だ〟
わけが分からなかったその言葉は、今はその通りだと思える。
だから、だから俺は――今、やっと自分を殺すことをやめるのだ。
「違うよ、母さん――何も言わなかった、俺も悪かったんだ。
それに俺は、母さんに謝って欲しいわけでもないんだ。
俺は――ただ、その。普通の家族に、戻って欲しいって、そう思って、今日はそれを言おうと思ったんだ」
母さんも……父さんと仲直りしたいと思ってたんでしょ?
この間帰ってきたとき、母さんの部屋が明かりつけっぱなしで、
何かと思って部屋に入るとアルバムが開いてたから、つい、見ちゃって。
謝るべきなのは、俺なのかもしれない。
だってきっと、二人の仲を引き裂いたのはこの俺自身だから。