第五章「生長」
あなたの名前はなんですか?(夢小説機能)
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あの後、兵助から巻き込んでしまったお詫びということでピンを貰った。
別に気にしなくてもいいのに……とは思ったけど、
買ってくれるなら貰っておこうと思ったので受取った。
「……そろそろ、帰ってくる時間帯だな」
手を繋いだり名前を呼び合うことに慣れた後に、
兵助の母が帰ってくる時間帯に遭遇できるように改札前に移動する。
……そんな作戦だけれども、本当にそんな上手くいくものなのかな。
まあ、やってみなきゃ分からないよね。
そう思っている最中に、兵助の母らしき女性と目が合った。
……わ、美人だなぁ、と思ってそのままでいたら、つかつかとヒールの足音をたてて女性は久々知に歩み寄った。
「……兵助?」
女性は戸惑っているような声音で、兵助を見つめた。
どうして、とか。色々言いたいことがあるのに、上手く言葉に出来ないみたいに、口を開閉させている。
……そういうの、興味ないだろうと思っていたんだろうな。
実際、興味なさそうだったし、ショックを受けているのかもしれない。
「えっと……あ、あの?」
そういえば私は戸惑っておかないと不自然だよな、と思って声をあげる。
すると、兵助が俺の母さんだよ、と補足してくれる。
……うん、なんか彼女感増したんじゃない? 知らないけど。
「母さん、俺の彼女、可愛いでしょ?」
そのセリフを吐くのを躊躇したのか、なんだか片言になっている。
思わず笑いそうになって顔を手で覆う。
……いやあ、可愛いのはどっちかなあ…………。
「あー……電車行っちゃうよ、百恵。じゃあね」
「う、うん……? じゃあね、兵助」
あとは、兵助が解決するだけだ。
きっと伝わらないだろうけど、なんとなく、唇を頑張ってね、の形にしてから、私は改札を抜けた。