第四章「回帰」
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「……あ、百恵。いいな、その髪型」
「でしょでしょ?」
ダンス教室の帰りに偶然、髪を切った百恵に会った。
……久々知おすすめの美容院に行くと聞いた時は驚いたけど、なんだ、普通の服装じゃないか。
いつも通り着飾らない百恵のファッションになんとなく安心する。
雷蔵と出会ってライブに行くことになってからというもの、百恵はなんだから変わりつつある。
変わった……というよりか、昔を思わせるような熱さを感じるようになった。
俺はどんな百恵だって好きだけど、欲を言うならやっぱりあの頃の百恵が一等輝いて見えた。
百恵は、努力の天才だ。
彼女を知る人は、誰しも一度は彼女の一生懸命さに憧れたことがあると思う。
いつからか形は変わってしまったが、元はといえば俺もその一人だったんだ。
いつも一生懸命でがむしゃらな百恵が好きだった。
けど、俺は百恵が変わっても百恵が好きであり続けた。
恋と執着の区別はなんなんだろう。
俺は百恵に恋をしてるって言えるのかすら、自信がないままで。
俺はまだ見ぬ王子さまのために頑張る百恵なんか、見たくなかったんだ。
もし頑張った結果王子さまが見つかったら、百恵が俺から離れていくのは目に見えて分かっている。
だから俺は、百恵に何も言えなかった。
あの少年――兵助がきっと何かを言ったんだ。
きっかけのあの少年だからこそ言えたことで、俺には言えなくて、あの少年だからこそ百恵も受け入れたんだ。
「ふふ……」
「? どしたの、尾浜」
俺はやっぱり、百恵のことが好きだ。
どこか陰鬱さを孕むような顔よりも、底抜けに明るいくらいの顔が良く似合う。
最初から、前みたいに戻って欲しいっていえば良かったのかな。
そんな言葉がよぎったけれど、百恵が帰ってきたこの事実に変わりはない。
「……おかえり、百恵」
一拍間を開け、なにそれ、と笑う百恵に、俺の中で何かが始まりそうな予感がした。