第四章「回帰」
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“王子さま”がついに現れた!
……そう聞いたとき、俺がどんな気持ちで夜を過ごしたか果たして百恵は分かるだろうか。
分かるわけない。即座に否定させてもらうけど絶対分からない。
王子さまって誰なの、そう問いかけた声が震えていたのにも気付かないくらいだし。
……俺ちょっとめんどくさい彼女みたいなこと言ってるな、やめよう。
「図書委員会の不破雷蔵って人だよ! 知ってる?
あの鉢屋三郎の顔にそっくりなの!」
「いや待てそもそも鉢屋三郎って誰」
「あれ、言ってなかったっけ。
私の好きな高校生バンドグループ――のベース担当の人」
元秀才チルドレンの子役やってた人だよ、と言われてやっと思い出す。
勇気出してどこが好きなの、と聞いた時に顔って返ってきたときに
それは努力のしようがないと思ってライバル候補から外されたあの人だ。
* * *
「……うわ、確かにこりゃそっくりだな」
「でしょ!?」
特徴的な大きな鼻から髪色や髪の癖までまるきり全部一緒だ。
双子か、それまた親戚か……。
俺と兵助と南と阿佐ヶ谷と百恵。
不自然に図書室の席で、鉢屋三郎のそっくりさんの不破雷蔵とやらをじっと盗み見ていた。
「……で? 萩窪。声掛けないのか」
「いっちゃえよ。あなたが私の王子さまですって」
「ちょっ……いきなりそんなこと言ったら引かれるに決まってるでしょ」
南と阿佐ヶ谷が百恵の背中を押す。
兵助はやっぱりこの手のことについてはよく分からないのか、曖昧な笑みを浮かべている。
「ええっと……何か僕にご用ですか?」
いつの間にか不破雷蔵とやらは俺たちの視線を受けてこちらに来ていた。
それを見た百恵といえば肩を飛び跳ねさせた。
「えっと。私、鉢屋三郎っていうあるバンドのベースの人のファンなんですけど、その人にそっくりで、つい……」
「ふふ、そうなんですか。よく言われますから大丈夫ですよ。三郎とは親戚なんです」
「え!? 道理で似ていると思いました! 私、子役時代からのファンなんですよ」
「それは凄いなあ。三郎が聞いたら喜びそうだ」
なんか話し込んでるし。
……はあ、面白くない。百恵が嬉しそうなのはいいけど、なんか面白くない。