第三章「小さな歪み」
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「百恵」
「なに、尾浜?」
「折角だからさ、今日――」
一緒に、昼食でもとらない?
蝉の鳴き声がいよいようるさくなりはじめ、
じめじめとした暑さが肢体を襲う、そんな長期休暇前の夏のはじまり。
そんな日の登校中に掛けてきた尾浜の声は、少し不安げだった。
……私に特に断る理由なんてないのに、どうしてそこまで不安そうなんだろう。
不思議に思いつつ、私はそれを軽く了承した。
* * *
そして、今日の昼食。
普段女友達と食堂で一緒に食べている私は、新鮮な気持ちで教室のある席を借りてそこに座った。
「暑い……先生たち、なんでクーラー付けてくれないの」
スカートの裾とワイシャツの襟部分を引っ張って風を取り入れる。
……本当、熱中症とか熱射病やらになったらどうしてくれるんだろう。
クーラー代が勿体ないからか知らないけど、
使わないんだったらある意味がないからどんどん使った方がいいと思うんだけどなあ。
「百恵、それやめて?」
何を、という前に尾浜の視線を辿ると、スカートとワイシャツを握る手に向けられているのに気付いて私は文句を言った。
「えー……暑いんだけど?」
「仰いでやるから、なっ!」
机からノートを取り出した尾浜は、私の顔近くでぱたぱたとそれを振り出した。
「んー……ありがと」
本当にほんの少しだけだけども、何もないよりはマシだと思う。
尾浜は熱くなる一方だろうに、私がお礼を言うと嬉しそうに顔を綻ばせた。