第一章「日常」
あなたの名前はなんですか?(夢小説機能)
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「今日、テスト返しだなー」
登校中。五月名物の体育祭もおわって、もうすぐ生憎の雨の季節である。
なんの気なしに放たれた尾浜の言葉は私の心を深く傷付けた。
思いっきり尾浜の方に顔を向けると、キョトンとした目で見られた。
「せっかく忘れてたのに、尾浜のバカ……」
「あ~ごめんごめん! 購買の先着限定パン買ってあげるから機嫌直して?」
「えっ、ほんと!? ありがとう尾浜、これからも仲良くしよ!?」
相も変わらず百恵は現金だなあ、と呟く尾浜を視線で黙らせて、私は上機嫌で駅へと向かった。
* * *
「萩窪百恵」
「……はい」
席から立ち上がり、私は先生のいる教卓まで足を進める。
……あー、教室ってこんな狭かったっけ。
もっと広くてもいいんだよ、教室さん。
嫌だ嫌だと脳内でダダを捏ねていると教卓までの距離はすぐに詰められてしまった。
「……分かってるな」
先生にそう小声で伝えられて、私は力なく答えることしか出来なかった。
結果がダメなことは分かりきってはいたんだけどね。
実際返ってくるともうダメなんだ。私の心が腐っていく……。
席へ戻る最中にチラリ尾浜を見ると自然と目が合って、ウィンクをかまされてしまった。
……もう、やっぱり勉強してたんじゃん。
尾浜は毎回してないしてないと言いつつ、きっちりしているタイプなのだ。
まあお家が厳しいらしいからやらないわけないよね……と毎回のように反省してる気がする。
でも信じちゃうのはなんでなんだろう。
あんなうさんくさいの中々いないと思うんだけど自分でも不思議だ。
「……では、平均点以下の生徒は補習に参加するように」
はあ……あと五時限もこんな感じなのか。
とりあえず今日は先着限定パンだけが生きがいになりそうだなあ……。