第一章「日常」
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「……はぁ」
今日も今日とて、王子さまは私の前に現れてくれなかった。
夕暮れ時にベランダでたそがれていると、隣の家のやつが出てきてしまった。
「ため息なんかつくなよなぁ。幸せ逃げるぞ?」
「……いつも思うんだけど、なんで私がここに来たって分かるの?」
特殊な髪質のやつは、にひひと歯を見せて愛の力かなって笑った。
どうせただの勘なんだろうなあ。
勘が冴えるから勘右衛門なんて古めいた名前なんじゃないかって、みんな言ってるくらいだから。
「てかさー王子って別に俺で良くないですかー?
だってほら、この状況。よーく考えてみ?
あんま言いたかないけどさ、
俺のお家って色々うるさいから掟とかいろいろぶち破って百恵と話してるの。
障害が多いほど恋は燃えるっていうおとぎ話の鉄板だよね!」
熱くなってるときの私の真似なのか、両腕の脇を閉めて小さめにガッツポーズをとる姿は、
さすがにベビーフェイスと言われる尾浜であってもキツい。
……全く、尾浜ってば全く分かってないんだから。
確かにそれはお約束かもしれないけど、王子さまってそれ以外にもいろいろ必要なんだもの。
「じゃあ百恵が求めてる王子さまって一体なんなの?」
「ヤダ。教えない」
「なんで?」
「だって教えたら、またしつこく構ってくるでしょ?」
あっ、バレちゃったーっ?
にこにこ笑っているのになんだか気味が悪いと思えてしまうのはなんでだろう。
まあいいや、尾浜に考えてることなんか昔からずっと分からないままなんだから。
なんとなく話が途切れた気がして、お互いに手を振りあってから窓を閉めた。
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