恋、其れ即ち
あなたの名前はなんですか?(夢小説機能)
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「……紗十子?」
耳元で突然そう囁かれ、肩が飛び跳ねた。
その反応がお好みだったらしい三郎先輩は隠すことなくニヤニヤと私を笑った。
「な、なんですか……」
いつも苗字で呼んでくるのに。
そう言うと先輩からお前がぼーっとしているからだ、と返ってきた。
……そ、そんなにぼーっとしてたかな、私。
「さては雷蔵……伝え忘れたのか?
あのな。雷蔵は忍務に行っていて、今この学園にいないんだ」
「あ、あぁ、そう、なんですか……」
いつもいる場所にいないから、もしかして知らない間に嫌われたのかと思ったんだけど、そうではないらしい。
……いや、忍務に出かけていることも、それはそれで心配ではあるのだけど。
五年生にもなると忍務も本格的なものになり、死の危険が伴うようなものもあると聞いたことがある。
もし、このまま戻ってこなかったら……。
「そ……んな暗い顔するなよ。あいつは迷い癖こそ悩ましいが、それを除けば成績優秀な先輩なんだから。
後輩の紗十子がそんなに気にする必要はないよ」
「それはそうですけど……雷蔵先輩がいなくなったらと思うと、なんか、嫌だなあ、と」
絞り出すように言葉を繰り出す私を見て、三郎先輩は目を見開いた後に鼻で笑った。
「薄情だな?」
「……え、あ、いや。雷蔵先輩以外は嫌と思わないとか、そういう訳じゃなくて!」
「つまり雷蔵のことが好きなんだろ? 違うのか? いやそうだろう。なあ、紗十子」
また意地の悪い笑みを浮かべながら、追い詰めるように言葉を重ねる。
さ、三郎先輩ってやっぱり意地悪……!