恋、其れ即ち
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「じゃあ、少しずつ慣れていけばいいよ。
……そうだね、ひとまず僕にだけでもいいから、挨拶してみよっか」
赤面症であがり症。
人と話すのが苦手だと告白した私に、そんな言葉を掛けてくれたのは不破先輩だった。
そんな簡単に言わないでくださいよ。
なんて一瞬思ったけれど、その柔らかい笑顔を見たらそんな言葉はすぐに消えた。
それからというもの、くのたまと忍たまの接点は本来そこまで多くないけれど、
不破先輩とは食堂で出会う度挨拶し、毎日のように会い言葉を交わしていた。
最初の頃は交わしていた、ではなくほとんど一方的に声を掛けて頂いていた。
挨拶を返せず二三日経ったあと、私はやっと先輩におはようございます、と掠れた声で返事をしたのだ。
周りの先輩方はなんと言っているのか聞き取れなかったみたいだが、不破先輩は聞き取れたみたいで、
にこりと微笑みながら私の頭をぽんぽんと撫でて、よく出来ましたと耳元で囁いてくれた。
笑い方だけじゃなくて、中身もぜんぶ優しい人なのだなあ。
そんな呑気なことを考えていた。
だけども撫でられているうちに周りの視線が気になりだして、私は謝りながらもその場から退散した。
……そして、何日か経った今日。
同郷であり親友である弓を見つけ出して、私はその正面に座った。
「ねえ。紗十子は不破先輩と親密な仲なの?」
「……親密というか、ただ面倒を見てもらっているだけだよ」
というよりも、なぜ不破先輩の名前を。そう言ったところ、弓は目を見開いた。
どうやら不破先輩は先輩の中でも有名らしい。
なんでも成績優秀冷静沈着、温厚篤実で優柔不断が玉に傷……だという。
確かに先輩は優しいし成績優秀そうだけれど、優柔不断という所が引っかかった。
……不破先輩が迷ってるところ、見たことないんだけどなあ。
「じゃあ、次は早めに食堂に来てみて。
不破先輩はきっと、どれにするか迷っているはずだから」
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