そのいち
あなたの名前はなんですか?(夢小説機能)
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クラスも名前も何も、誰のことも知らないそんな空間。
それぞれ授業をサボりながらやりたいことをやって、屋上で時間を過ごす。
それに明確な名前はないけれど、私が付けたあだ名は屋上の猫クラブだった。
お気に入りのヘッドフォンを耳にかけてからスマートフォンにジャックをさす。
音楽アプリをタップして、再生リストを開いてバックグラウンド再生。
もちろん順番はランダムで。
この操作にはもう慣れたものだ。
今日の天気は心地いい。
いつもは日陰が定番だけれども、風の涼しさと日の温かさのバランスが絶妙である。
だから私は今、日向ぼっこをしている。
ここだけが、私の場所なのだ。
そう思ったらなんだか気持ちまで暖かくなってきて、私はそっと瞼を閉じ始めていた。
頬を押されている感覚がして、目をゆっくり開けると犯人はヤンキーのような座り方で、私の頬に手を伸ばしていた。
「あ……起きた」
起きた……じゃないよ。と頭の中で反論の声を上げるが、その声は出すことなく終わる。
人と話すのが久しぶりすぎて、なんだか息が詰まっている。
犯人をよく見てみるとネクタイの色から私と同級生であり、
しかも腕には風紀委員の腕章が付けられていた。
……これほどまでの美形なら知っていそうなものだけど、私の記憶にはなかった。
学校に居場所がないとはいえ、私も他人に興味が無さすぎると思う。
風紀委員ってことは、ここの人達――屋上の猫を注意しにきたのかな。
……やめてほしい。やめてほしいけど。
それは私の都合である。でも、彼らにも都合がある。風紀を乱す者を取り締まる役目がある。
屋上の猫の役目は人に居場所を与えることだ。
私にとっては大切なものだけれど、風紀委員にはそんなことは知ったこっちゃないのだ。
だから私が何か異を唱えたところで、なんの意味もない。
本当に、ただのわがままにしかならないのだ。
そんな悩みとは裏腹に、犯人はよっこいしょと私の隣に腰を下ろした。
……もしかして、この人も遊びにきたのかな。
風紀委員も大変だろうし、気晴らしだろうか。
屋上の猫は気ままで来る者拒まずである。
いつしか来なくなってしまった人を寂しく思うようなところはあるけれど、ここに来た人を無下にする人はここにはいない。
例えそれが私たちの居場所を奪う引き金になろうともそれは変わらないのだ。
「あのさ」
さすがに気ままな屋上の猫といえども、声をかけられたことはない。
何せここに集うのは学校に居場所のいない人ばかりなものだから、そもそも他人に声をかけるという発想に至らないのだ。
「……なに」
少し刺々しい態度だっだろうか。
何せ家族以外の人と話すのが久しぶりなので、どう接したらいいか分からない。
……タメ口については犯人もそうだったし多分許してくれるだろう。うん。
「喉乾いたから、そのいろはす頂戴」
私の左手側に置かれているいろはすは、みかん味である。
しかし私が寝ている間ずっと日向に置かれていたものだから、キンキンに冷えていた液体はすっかり温まってしまっていた。
「……生ぬるいよ」
「腐ってないならいい」
いいから早く渡してよ、とでも言うように手を差し出してきた喜八郎に慌ててそれを手渡した。
蓋を開けて、見た目の繊細さとは裏腹に彼は豪快に飲み始めた。
「………………あ、これ」
間接キスだね。
どうしてそんなことを真顔で言えるのだろうか。
私は別に気にしてなかったのに、そういうことを言われたら意識してしまいそうになる。
「気にするタイプなの?」
「……いや、別に」
優しい風に頭を撫でられながら、ただなんとなく、世界が広がる予感がした。
それぞれ授業をサボりながらやりたいことをやって、屋上で時間を過ごす。
それに明確な名前はないけれど、私が付けたあだ名は屋上の猫クラブだった。
お気に入りのヘッドフォンを耳にかけてからスマートフォンにジャックをさす。
音楽アプリをタップして、再生リストを開いてバックグラウンド再生。
もちろん順番はランダムで。
この操作にはもう慣れたものだ。
今日の天気は心地いい。
いつもは日陰が定番だけれども、風の涼しさと日の温かさのバランスが絶妙である。
だから私は今、日向ぼっこをしている。
ここだけが、私の場所なのだ。
そう思ったらなんだか気持ちまで暖かくなってきて、私はそっと瞼を閉じ始めていた。
頬を押されている感覚がして、目をゆっくり開けると犯人はヤンキーのような座り方で、私の頬に手を伸ばしていた。
「あ……起きた」
起きた……じゃないよ。と頭の中で反論の声を上げるが、その声は出すことなく終わる。
人と話すのが久しぶりすぎて、なんだか息が詰まっている。
犯人をよく見てみるとネクタイの色から私と同級生であり、
しかも腕には風紀委員の腕章が付けられていた。
……これほどまでの美形なら知っていそうなものだけど、私の記憶にはなかった。
学校に居場所がないとはいえ、私も他人に興味が無さすぎると思う。
風紀委員ってことは、ここの人達――屋上の猫を注意しにきたのかな。
……やめてほしい。やめてほしいけど。
それは私の都合である。でも、彼らにも都合がある。風紀を乱す者を取り締まる役目がある。
屋上の猫の役目は人に居場所を与えることだ。
私にとっては大切なものだけれど、風紀委員にはそんなことは知ったこっちゃないのだ。
だから私が何か異を唱えたところで、なんの意味もない。
本当に、ただのわがままにしかならないのだ。
そんな悩みとは裏腹に、犯人はよっこいしょと私の隣に腰を下ろした。
……もしかして、この人も遊びにきたのかな。
風紀委員も大変だろうし、気晴らしだろうか。
屋上の猫は気ままで来る者拒まずである。
いつしか来なくなってしまった人を寂しく思うようなところはあるけれど、ここに来た人を無下にする人はここにはいない。
例えそれが私たちの居場所を奪う引き金になろうともそれは変わらないのだ。
「あのさ」
さすがに気ままな屋上の猫といえども、声をかけられたことはない。
何せここに集うのは学校に居場所のいない人ばかりなものだから、そもそも他人に声をかけるという発想に至らないのだ。
「……なに」
少し刺々しい態度だっだろうか。
何せ家族以外の人と話すのが久しぶりなので、どう接したらいいか分からない。
……タメ口については犯人もそうだったし多分許してくれるだろう。うん。
「喉乾いたから、そのいろはす頂戴」
私の左手側に置かれているいろはすは、みかん味である。
しかし私が寝ている間ずっと日向に置かれていたものだから、キンキンに冷えていた液体はすっかり温まってしまっていた。
「……生ぬるいよ」
「腐ってないならいい」
いいから早く渡してよ、とでも言うように手を差し出してきた喜八郎に慌ててそれを手渡した。
蓋を開けて、見た目の繊細さとは裏腹に彼は豪快に飲み始めた。
「………………あ、これ」
間接キスだね。
どうしてそんなことを真顔で言えるのだろうか。
私は別に気にしてなかったのに、そういうことを言われたら意識してしまいそうになる。
「気にするタイプなの?」
「……いや、別に」
優しい風に頭を撫でられながら、ただなんとなく、世界が広がる予感がした。