そのいち
あなたの名前はなんですか?(夢小説機能)
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放課後の空き教室。
まだまだ明るいその中で、二人の少年少女は椅子に座って勉強をしていた。
その少女の方――名前はなぜ勉強をしているのかというと、
今度のテストで再試になると友達と遊ぶ予定を立てていた日が潰れてしまうから、今更必死こいて勉強していた。
名前は高校二年生になれたのが不思議なくらい、これまで勉強をしてこなかった。
そんな人間がいきなり教室で再試にならないよう勉強をしようとしても、無理なものは無理である。
そんな名前のために、優しい友人たちは助っ人をある少年に頼んだ。
(よりにもよって、なぜタカ丸さんを)
名前は実のところ、もう一方の少年ーー斉藤タカ丸に好意を抱いている。
それを知ってか知らずか(大方、知っていてからかわれたのだろうが)、
名前の友人達はタカ丸に名前に勉強を教えてあげるよう伝えてしまったのだ。
それに快く応えてくれたタカ丸に集中出来ないからと断るのも出来ず、
名前は好きな人と同じ空間で、なんとか筆を進めていた。
(そもそも、なんでタカ丸さんは頼まれてくれたんだろうか)
タカ丸は男女関係なく人気者だ。
どちらかといえば女子からの人気がある上、一部の男子からは恨まれている節があるが、
ほとんどは彼の社交性やその憎めないふわふわとした、それでもどこか大人びた彼の人柄に惹かれている。
例に漏れず、名前もその中の一人だ。
だから本来ならばタカ丸にそこまで親しくないクラスの女子の勉強を見るなんて、
いくら人がいいとはいえそんな暇ではないだろうと名前は思った。
「名前ちゃん、筆が止まってるよ」
タカ丸に指摘され、ふと顔を上げて思ったより近い距離に変な声を出すのを我慢して名前は息を飲み込んだ。
そんな様子を見て、タカ丸はふふ、と笑を零した。
その瞳はまるで愛おしいものを見るような色をしているが、名前はそれに気が付かずにバツが悪くてまた机に顔を向ける。
「そうだなぁ……名前ちゃん、何かと欲しいものある?」
「…………えっ?」
「いや、ご褒美みたいなものがあった方が、名前ちゃんも頑張れるのかなって」
名前にとってはこの状況自体が褒美のようなものであるけれど、そんなことが口にできるはずもない。
しかし、タカ丸と話しているせいで頭がタカ丸で一杯になっている名前は、
具体的なものが何一つ思い浮かばずに、結局突拍子もない言葉を発した。
「えっと……タカ丸さんがくれたものなら、なんでも嬉しいです」
それは最早告白とも取れる言葉だった。さすがのタカ丸も、これには目を見開かずに入られない。
しかも、名前はおそらく自分の言った言葉を自分でもあまり理解出来ていない様子であった。
タカ丸はとうとう数十秒なにも言葉を返すことが出来なかった。
これは、コミュ力の高い彼にとってはまずないであろう秒数である。
「………………そっかあ……」
些か何とも思いませんでした、と主張するには長すぎる合間だった。
名前は未だにこの状況に混乱しているようで、彼にしては遅すぎる返事にも気付かずに、はいとだけ呟いた。
しかし、ここで終わるタカ丸ではない。
彼は案外負けず嫌いなのだ。血なまぐさい争いこそ好まないが、この類のことや論争になれば別である。
……そうして、タカ丸は名前の額にキスを落とした。
見事名前の顔は真っ赤に染まり、その様子を見てタカ丸は柔らかく笑うのだった。
まだまだ明るいその中で、二人の少年少女は椅子に座って勉強をしていた。
その少女の方――名前はなぜ勉強をしているのかというと、
今度のテストで再試になると友達と遊ぶ予定を立てていた日が潰れてしまうから、今更必死こいて勉強していた。
名前は高校二年生になれたのが不思議なくらい、これまで勉強をしてこなかった。
そんな人間がいきなり教室で再試にならないよう勉強をしようとしても、無理なものは無理である。
そんな名前のために、優しい友人たちは助っ人をある少年に頼んだ。
(よりにもよって、なぜタカ丸さんを)
名前は実のところ、もう一方の少年ーー斉藤タカ丸に好意を抱いている。
それを知ってか知らずか(大方、知っていてからかわれたのだろうが)、
名前の友人達はタカ丸に名前に勉強を教えてあげるよう伝えてしまったのだ。
それに快く応えてくれたタカ丸に集中出来ないからと断るのも出来ず、
名前は好きな人と同じ空間で、なんとか筆を進めていた。
(そもそも、なんでタカ丸さんは頼まれてくれたんだろうか)
タカ丸は男女関係なく人気者だ。
どちらかといえば女子からの人気がある上、一部の男子からは恨まれている節があるが、
ほとんどは彼の社交性やその憎めないふわふわとした、それでもどこか大人びた彼の人柄に惹かれている。
例に漏れず、名前もその中の一人だ。
だから本来ならばタカ丸にそこまで親しくないクラスの女子の勉強を見るなんて、
いくら人がいいとはいえそんな暇ではないだろうと名前は思った。
「名前ちゃん、筆が止まってるよ」
タカ丸に指摘され、ふと顔を上げて思ったより近い距離に変な声を出すのを我慢して名前は息を飲み込んだ。
そんな様子を見て、タカ丸はふふ、と笑を零した。
その瞳はまるで愛おしいものを見るような色をしているが、名前はそれに気が付かずにバツが悪くてまた机に顔を向ける。
「そうだなぁ……名前ちゃん、何かと欲しいものある?」
「…………えっ?」
「いや、ご褒美みたいなものがあった方が、名前ちゃんも頑張れるのかなって」
名前にとってはこの状況自体が褒美のようなものであるけれど、そんなことが口にできるはずもない。
しかし、タカ丸と話しているせいで頭がタカ丸で一杯になっている名前は、
具体的なものが何一つ思い浮かばずに、結局突拍子もない言葉を発した。
「えっと……タカ丸さんがくれたものなら、なんでも嬉しいです」
それは最早告白とも取れる言葉だった。さすがのタカ丸も、これには目を見開かずに入られない。
しかも、名前はおそらく自分の言った言葉を自分でもあまり理解出来ていない様子であった。
タカ丸はとうとう数十秒なにも言葉を返すことが出来なかった。
これは、コミュ力の高い彼にとってはまずないであろう秒数である。
「………………そっかあ……」
些か何とも思いませんでした、と主張するには長すぎる合間だった。
名前は未だにこの状況に混乱しているようで、彼にしては遅すぎる返事にも気付かずに、はいとだけ呟いた。
しかし、ここで終わるタカ丸ではない。
彼は案外負けず嫌いなのだ。血なまぐさい争いこそ好まないが、この類のことや論争になれば別である。
……そうして、タカ丸は名前の額にキスを落とした。
見事名前の顔は真っ赤に染まり、その様子を見てタカ丸は柔らかく笑うのだった。