そのいち
あなたの名前はなんですか?(夢小説機能)
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初めての彼女がいわゆる地雷女で、束縛が激しく携帯のチェックはあたりまえ。幼なじみの名前とか、男友達でもとにかく彼女以外の人と話したりするだけですごい怒られて、中学卒業で自然消滅するまで付き合わされた。
どんな理由があろうと浮気は悪であることは理解しているけれど、その反動でか、俺は高校になって色々と羽目を外すようになった。最高七股。正直隠す気はなかったし、お互い承知の上で付き合っている状態だった。そんなこんなで来る者拒まずの俺は彼女がいない時はなかった。
「勘右衛門、私ね、実は」
高校時代、切羽詰まったように顔を赤くしてそう言った名前を見て俺は軽蔑した。あー、結局名前も他と同じような女の子なんだって。この時の俺は、今以上に女のことを見下していて、そういう思考回路だった。
彼女は俺の浮気に何も言わなかった。本気で俺の事好きっぽかったのに、いいのかな、という感じで名前に対しては比較的に良心があったが、まあ何も言わないならいいんだろう、と思って考えるのをやめた。
そして、事件は唐突に訪れた。
「勘右衛門のバカっ、大っ嫌い……!」
そうして、平手打ちを一発くらったのだ。高校三年、冬空の下。女と遊びすぎたせいで、大学のレベルがひとつ落ちた。それに対して彼女は怒った。もちろん女遊びについてもお咎めをくらったけど、なんとなく嬉しいと思った。そして俺は、まるで彼女を繋ぎ止めるかのように合鍵を渡したのだ。
「ごめん、でもさ俺、名前が本命の彼女だから。これ、受け取ってよ」
そこで、目覚ましの音が鳴る。
「あれ……夢? そうか、夢……だよな」
どうしてこんな夢を見たんだろう。まあ、別に夢に意味なんかないか。眠たい目を擦りながら起き上がってリビングへ出ると、そこには誰もいなかった。名前の姿が見えない。唯一俺の部屋に住む、彼女の一人だ。小さい頃からずっと一緒の幼なじみ。
ふうん、出かけてるのか。まあ別にいいや、なんて思いながら冷蔵庫を開いて、アイスコーヒーをドボドボとガラスのコップに入れて、戻す。そして、コップに入れたアイスコーヒーを一気に飲んで、ようやく目が覚める。
「……あれ、こんな殺風景だったっけ」
ひやりとした汗が俺の額を伝った。ちらちらと周りを見ると、確かに色々と家具や荷物が減っていた。でも俺が買ったものは確かにここにあって、つまりは名前が買ったものたちが忽然と姿を消していた。その異変の答えは明白で、俺はいとも簡単にそれを飲み込んだ。ふうん、出て行ったんだ。名前。よく見たら忘れていったワンピースが洗濯カゴにあって、なんとなくそこに放置した。
別にいいよ。俺は好きじゃなかったし。彼女なんか何人もいる。じゃあまたなんで名前の夢なんか。そこで言い返せなくなって、俺は今更気付いて笑った。
何を今更。認めてどうする、どうしようもない。認めるならあの高三の冬に認めるべきだった。彼女を引き止めた時点で。きっと薄々、名前のことを本当に想っていると気が付いたんだと思う。
でも、認められなかったんだ。誰かを本当に好きなるなんて、思えば初めてだったから。最初の地雷女だって相手からだったし、その後名前以外のやつは告白を受ける以前は名前すら知らないような女ばっかりで。もう自分でも訳分からなくなって、大学に入ってから女遊びが更に酷くなった。大人しく認めていれば、今頃名前と楽しく朝食を食べていたのかもしれない。
家の中を見るのが辛くて、ベランダから外を見る。雲ひとつない青空でも嵐でもない中途半端な空がまるで俺みたいでため息をつく。ああでもなんか、洗濯物は乾きそうだ。ちょうどいいかもしれない。ワンピースを乾かしてみる。風に揺れる。……当たり前だ。
いつだって名前は雷みたいに突然だった。あの告白も、高三の平手打ちも、今回のことだって。落雷先の大きな木は割れて裂けて、凶器みたいに、俺の胸を刺していった。これでもまだ足りないくらいだ。でも、俺はもう彼女に接することは許されないから、いつまでも元気でいてほしいと願うことしか出来なかった。
どんな理由があろうと浮気は悪であることは理解しているけれど、その反動でか、俺は高校になって色々と羽目を外すようになった。最高七股。正直隠す気はなかったし、お互い承知の上で付き合っている状態だった。そんなこんなで来る者拒まずの俺は彼女がいない時はなかった。
「勘右衛門、私ね、実は」
高校時代、切羽詰まったように顔を赤くしてそう言った名前を見て俺は軽蔑した。あー、結局名前も他と同じような女の子なんだって。この時の俺は、今以上に女のことを見下していて、そういう思考回路だった。
彼女は俺の浮気に何も言わなかった。本気で俺の事好きっぽかったのに、いいのかな、という感じで名前に対しては比較的に良心があったが、まあ何も言わないならいいんだろう、と思って考えるのをやめた。
そして、事件は唐突に訪れた。
「勘右衛門のバカっ、大っ嫌い……!」
そうして、平手打ちを一発くらったのだ。高校三年、冬空の下。女と遊びすぎたせいで、大学のレベルがひとつ落ちた。それに対して彼女は怒った。もちろん女遊びについてもお咎めをくらったけど、なんとなく嬉しいと思った。そして俺は、まるで彼女を繋ぎ止めるかのように合鍵を渡したのだ。
「ごめん、でもさ俺、名前が本命の彼女だから。これ、受け取ってよ」
そこで、目覚ましの音が鳴る。
「あれ……夢? そうか、夢……だよな」
どうしてこんな夢を見たんだろう。まあ、別に夢に意味なんかないか。眠たい目を擦りながら起き上がってリビングへ出ると、そこには誰もいなかった。名前の姿が見えない。唯一俺の部屋に住む、彼女の一人だ。小さい頃からずっと一緒の幼なじみ。
ふうん、出かけてるのか。まあ別にいいや、なんて思いながら冷蔵庫を開いて、アイスコーヒーをドボドボとガラスのコップに入れて、戻す。そして、コップに入れたアイスコーヒーを一気に飲んで、ようやく目が覚める。
「……あれ、こんな殺風景だったっけ」
ひやりとした汗が俺の額を伝った。ちらちらと周りを見ると、確かに色々と家具や荷物が減っていた。でも俺が買ったものは確かにここにあって、つまりは名前が買ったものたちが忽然と姿を消していた。その異変の答えは明白で、俺はいとも簡単にそれを飲み込んだ。ふうん、出て行ったんだ。名前。よく見たら忘れていったワンピースが洗濯カゴにあって、なんとなくそこに放置した。
別にいいよ。俺は好きじゃなかったし。彼女なんか何人もいる。じゃあまたなんで名前の夢なんか。そこで言い返せなくなって、俺は今更気付いて笑った。
何を今更。認めてどうする、どうしようもない。認めるならあの高三の冬に認めるべきだった。彼女を引き止めた時点で。きっと薄々、名前のことを本当に想っていると気が付いたんだと思う。
でも、認められなかったんだ。誰かを本当に好きなるなんて、思えば初めてだったから。最初の地雷女だって相手からだったし、その後名前以外のやつは告白を受ける以前は名前すら知らないような女ばっかりで。もう自分でも訳分からなくなって、大学に入ってから女遊びが更に酷くなった。大人しく認めていれば、今頃名前と楽しく朝食を食べていたのかもしれない。
家の中を見るのが辛くて、ベランダから外を見る。雲ひとつない青空でも嵐でもない中途半端な空がまるで俺みたいでため息をつく。ああでもなんか、洗濯物は乾きそうだ。ちょうどいいかもしれない。ワンピースを乾かしてみる。風に揺れる。……当たり前だ。
いつだって名前は雷みたいに突然だった。あの告白も、高三の平手打ちも、今回のことだって。落雷先の大きな木は割れて裂けて、凶器みたいに、俺の胸を刺していった。これでもまだ足りないくらいだ。でも、俺はもう彼女に接することは許されないから、いつまでも元気でいてほしいと願うことしか出来なかった。