次に行った店は久々知のおすすめの店だった。


『伊織……聞きたいことがあるんだが』
『なんですか?』


兵助が突然、矢羽根を使って話しかけてきた。


……もしかして、私だと気付いたのかな。


『伊織……お前、千鶴だろ』
『あっ、俺もそれ思ってた!』


どうやらその予想はドンピシャだったらしい。


なんで分かったの、と聞くとそれぞれ違う答えが返ってきた。

兵助はさっきのあんこウォーズの言い返し方から分かったらしく、
尾浜に至っては出発の時点で気づいていたという。


……さすが三郎、作戦通りだ。


『……天女様に危害を加える気はないのは、千鶴の性格からして分かる』
『率直に聞くけど、なんで天女様に近付くんだ?』


まだ目が覚めていない様子の二人に、私は説得を始めようとした。


『ここは私と雷蔵に任せろ。千鶴は天女様の相手を頼む』
『……分かった』

有無を言わせない三郎に、私は了承を返した。