俺の名前は竹谷八左衛門。
今、目の前でとてつもなくくだらない戦争が始まっている。


「は? こしあんなぞ言語道断、一番はつぶあんに決まっているだろッ!」

「いやいやいや。つぶあんは食感が気持ち悪いから嫌な人もいますけど、万人受けがいいのはこしあんですから」

「それはあんこの旨みが分かってないから言えるんだよ! つぶあんは味に深みがあってね……」



上から順に、勘右衛門、伊織、天女様。
全ては伊織の一言から始まった戦争だった。


“みなさんは、つぶあん派ですか? こしあん派ですか?”


……俺は思った。

美味いよ、あんこ。
俺だって強いて言えばこしあんの方が好きだよ。


……でもさ、よく考えてみろ?

どっちも胃の中に入れば同じだぞ?
そんな争ったって死ぬわけじゃないんだからどっちでもいいだろ。



「どっちにも良いところはあるし悪いところもあるんだから、言い争うのはやめなよ」
「そうだぞ、雷蔵の言う通りだ。そのくだらん言い争いをやめろ」


俺と同じ穏便派の二人が言い争っているところを仲介しようと間に入ると
くだらんとはなんですか! と火に油を注いでしまったらしい。