私はこの流れからある現代のネタを思い出したけど、そういえば三郎には分からないんだった。


私が三郎に変装術を教えて貰う為にお願いしたとき……。
ヘイ、三郎のあの独特の言い回しとか、あのピエロの真似も確かスルーされていた。

まぁ、ふざけているというニュアンスは伝わっていたみたいだけど。


『じゃあ私から』


……何気にこの流れでこう言い出す日本人って、そうそういないんじゃないか?
そう思うとなんだか貴重な体験をしているような気がしてきた。


『お前、喜八郎のことは好きか?』
『……うん、好きだよ』
『じゃあ、伊作先輩は?』
『好きだよ』


その後、ずっと名前を聞かれては答えるを繰り返して、私は質問の意図を掴みかねていた。


『……じゃあ、私の事は?』
『好きだよ』

そう言うと、三郎は微妙な顔をしながらそうか、と呟いた。


『最後にもう一つ聞くぞ。
……千鶴は、天女様のことも好きなのか?』

天女様か……。

天女様は謎の魅力で忍たま達を魅了しているけど、天女様自身仕組みがよく分かっていないらしい。

……まあ彼らの実力を心から信頼しているらしく、
天女様から委員会や鍛錬をするように言ってくれと遠回しに言ってみても、そんなものなくても……とかわされるのだけど。

私も私で、なんだか妹のようについ甘やかしてしまう毛がある。
それにあの笑顔は、なんか、見覚えがあるし。


総括すると、天女様自身は悪人ではないし、この騒動さえなければ、きっと私は純粋に友達になっているだろう。


『ああ、好きだよ』

三郎はもう一度、今度は真剣な顔でなるほどな、と呟いた。

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それからしばらく他愛のない話をし、気付けば数時間経っていた。


『ちょっと寒くなってきたから、私は帰るぞ。
千鶴も冷やすといけないから、千鶴も部屋に帰れよ』

『あ、うん……? ありがとう。またね』


またな、と手を振る三郎に私も手を振り返す。

……あの質問、どういう意味なんだろう。