朝天女様の部屋の前で待機していると、戸が開いた。

「おはよう、真島くん」

「おはようございます、天女様。……ふふ、おちゃめですね。寝癖がついてますよ?」


ええっ。どこっ、どこ!? と慌てる天女様に、私はくしを取り出して天女様の髪をとかしてやる。
すると、天女様はありがとうと笑った。


ううん、こんなことしてる場合じゃないんだけど……天女様を見るとつい世話を焼いてしまう。

……もしかして、私は正気だと思い込んでいる正気じゃない人だったりするのか?
いやいやいや、そんなはずはないはずだ……。


それより、横からの視線が異常に重い。


……長次先輩って案外ヤキモチ妬きなのかな……。

そう思って横を見るとそこには三郎……ではなく雷蔵がいた。
……雷蔵ってそんな顔するんだなぁ。まるで三郎だ。


これは予定外のことだったが……まあ長次先輩が呼んだのなら納得だ。
三郎は作戦がああだのこうだの言っていたが、正気になるのが早い分には別に構わないだろう。


「どうしたの?」
「いえ。今日は図書室に行こうと思うので、
図書室のことなら完璧なお二人も一緒に来てもらったんですよ」

中在家先輩と、不破先輩です。


……不破先輩って呼ぶの新鮮すぎる。よく間違えなかったな……。

ずっと呼んでいたのは不破じゃなくて雷蔵な上に、先輩ときた。
別に雷蔵先輩でもいいんじゃないかと一瞬思ったけど、雷蔵の顔が許されなさそうな顔つきだったのでやめておいた。