「……ねえ、僕は久しぶりに滝夜叉丸の戦輪を見たいよ」
「うん? ならば、そこに置いてあるのを見ればいいだろう」


……いつもなら〝そうかそうか、そんなに私の戦輪を見たいか!〟と無理やり自分の戦輪技術を見せつけてくる癖に。
まあ、いつも通りだったら僕もわざわざ戦輪が見たいだなんて言わないけど。

滝夜叉丸が戦輪を練習しているところなんて数万回は見れたんだから。


……初対面では、どうしようもない自惚れだと思った。
同室だと聞かされた時には、僕は一人部屋がいいと先生に抗議したこともある。


才能があるからと自惚れている人間なんて、すぐに落第すると思っていた。

でも滝夜叉丸は毎日飽きずに戦輪の練習をしていたし、
〝努力が見られるのは恥ずかしい〟とわざわざ図書館に人のいない時間を調べあげて、その時間に本を借り夜部屋で勉強をしていた。


滝夜叉丸は、努力家だった。
そんな彼が戦輪を放ったらかしにするなんて、僕には信じられなかった。


「……そうじゃなくて、僕は滝夜叉丸の戦輪の腕がどれだけ落ちているか見たいんだ。
最近ずっとやっていないじゃないか」
「何? 私の腕が落ちているわけないだろう。私とりん子はいつだって一心同体……」


……僕は、なんだかんだ言って滝夜叉丸を尊敬していたのに。


なんだか裏切られたような気分になって、
僕は思い切りため息を着いた後に滝夜叉丸に悪態を付けながら部屋を飛び出た。


「喜八郎っ……!?」

そんな悲痛な滝夜叉丸の声を無視して、
僕は握りしめた拳によってぐしゃぐしゃにされた写真とやらをどこに埋めようかと、いやに冷静に考えていた。