朝……ふと目を覚まし隣を見ると、滝夜叉丸がうっとりとした表情であの女の顔が書いてある紙を見ていた。


「……なぁにこれ」

鏡を見て私は美しいとか騒いで僕を起こしていたくせに、今では朝は静かだ。
いつもうっとうしいとか思ってたけどいざそのウザさが消えると、なにかが足りないと思う。

……たまに見るあの女を巡っての三木ヱ門と滝夜叉丸の言い争いは、
あの女が来る前とちっとも変わっていなくて、それも手伝ってなんだか物悲しくなる。



「これは写真といって、カメラというカラクリを使って作る絵らしい。
……ああ、天女様可愛らしい」


あの女が来たという平成のものなのか。道理で見ないものだと思った。

……それにしても実物とそっくりな、ちょっと可愛い系の顔だ。
僕はどちらかというと美人系の顔立ちである千鶴先輩の方が好きだけど、それはもはや好みの違いかもしれない。


瓜二つに描かれた絵を見て、僕はとあることを思いついた。

「それ、一枚頂戴」
「何!? 喜八郎ついに素直になったのか……! いくらでもやるぞ」
「一枚でいいって」


どうも滝夜叉丸は僕があの女を好きだと勘違いをしているらしい。

いつも素直になれとうるさくて軽くあしらっていたけど、その僕があの女の絵を欲しがるものだから感動してるみたいだ。