もちろん、最上級生である六年生が一番有利で、順当にいけば彼らが勝ち上がる。

……つまり、天女様の町案内をするためには、六年生全員に大会で勝つか、
開催前に彼らを正気に戻して出場辞退させる必要があるってことだ。


『千鶴が勝ち上がれなかった場合……。
最悪私の出場権を譲り、私の計画通りに動いてもらう』

『……三郎は勝ち上がる前提なんだね』

『当たり前だ。一年の経験の差があれど、ここ最近全く鍛練せず
天女に没頭していた先輩方に負けるなどありえない』


……三郎は凄いなぁ。
いつだって即断即決で、私はどちらかといえば雷蔵のように迷ってしまう方だから。


学園長が言ったように、この世界では死が絶えない。
一瞬でも迷ってしまえば、殺されかけないのだ。……だから、みんな迷わないんだ。


……話を戻すけど、わざわざ最悪の場合を例に出すとは舐められてるみたいで気に食わない。


きっと私を作戦に乗らすための売り言葉なんだろうけど、私はあえてその売り言葉を買うことにした。


『戦闘は自信ないけど、確実に対抗馬を減らしてみせるよ』


『ふふっ……まぁ、頑張れ。努力は報われる時もあるからな』


三郎の素の笑い声に十四という年齢が重なるが、
彼は、私よりずっと大人で残酷な世界を知っているのだと思い知った。