私は他のみんなより食堂にひと足早くついた。
そこには天女様がおり、他の上級生はまだあまり来ていないようだった。

「こんばんは。天女様」
「あっ、真島くん……!」


日中は情けない姿を見せてしまい申し訳ございませんでした。

そうやって照れて笑ってやると、
「仕方ないよ、綾部くんの罠だもん」と妙に間延びした口調でフォローされてしまった。


……綾部、天女様のお気に入りなんじゃ……?


確かひなちゃんも綾部のこと好きって言ってたなぁー。
……私としては、もっとイタズラにうろたえてくれると嬉しいんだけど。

かわされた数々のイタズラ……。あぁ、なんて儚き人生……。


なんて頭の中で悲劇を演じつつ涙を貯めていたところ、天女様は私の腕に絡みついた。


「真島くん、今日私の隣に座って?」
「その、申し訳ないのですが、今日は四年生の歓迎会がありまして……」
「だ、だめなの……!?」

涙目で縋られてしまっては、断っちゃ男が廃るな。
……いや、男じゃないんだけどね?


焦った様子で天女様に了承すると、天女様は嬉しそうに笑った。


見覚えのある笑い方だけど……私の知り合いに、こんな子いたっけなあ。

周囲を見ると悔しそうに歯を食いしばっている者が大半で、綾部だけはただ怠そうに手いじりをしていた。