「今日後輩の孫兵に話しかけられたと思ったら、〝ジュンコを見つけてくれたのは感謝しますが
くのたま長屋に入って何をしていたんですか?〟ってじとっとした目で言われたんだ……」

一瞬の静寂を破り、笑いに包まれる食堂。私もつられて盛大に笑う。


「それだけじゃない……! 急に腕を掴んできて匂いを嗅いだと思ったら、〝臭っ〟と言われたんだ!」


え、それは知らない。一瞬にして真顔になった私に、なんで笑わないんだよそこは、と文句をつけられた。

「そもそも竹谷はくのたま長屋になんで行ってたんだ?」
「いや、俺はくのたま長屋になんて行ってないぞ」


静まり返る食堂。

「ということは誰かが竹谷に変装して、くのたま長屋でジュンコを見つけた、と孫兵に声をかけ、イタズラしたのではないか?」

冷静に推理を進める兵助に、いの一番に疑われたのは三郎だ。
他のみんなも三郎ならありうるという顔つきで頷いている。

……普段の行いというやつか、そうかそうか。


「いやいやいや、私も本気で知らないぞ! ……そうだ、もう一個の方の詳細はないのか!?」
「いや、もう一個の方は竹谷がただ単に臭いだけじゃないの……?」

あまりにも三郎が必死すぎて、笑いを堪えつつ私はそう言うと、
竹谷が俺ってそんなに臭いか……と不安げに見つめてきた。