『はあ? それで許されると思うなよ。
図書室に潜入してみろと言ったのは確かに私だが、雷蔵に抱きつきたいだけで私に変装するな。
男色だと思われるだろ!?』

男色……は、確か端的に言うと同性愛者のことだったっけか。
確か昔の日本、この時代くらいには流行していた気がするけど、どうやら三郎はそうでもないらしい。


『というか、お前軽すぎじゃないか? もう少し鍛えろ。任務に支障が出るだろ』


思わずありがとうと返したけど、褒めてるわけじゃないと一蹴されてしまった。

でも矢羽根で話しているから、傍から見たら突然私が叩かれている感じになっていて、
そっと物陰から心配そうに長次?先輩が覗いていた。


それに気付かないまま、矢羽根での会話は続く。

『……ごめん、あの、色々と当たってた、んだけど……本当にごめん。
……三郎が潜入しろと言ったのか、仮にも学級委員だしバレたときの責任を負うのは全部きみだよ?』

『確かに千鶴は変装の修行を始めたばっかりだが、こいつの成長速度は半端じゃないんだ。
だからそう簡単にバレやしないんだよ、私の変装は下手くそだけどな!』


……どうしよう、三郎に褒められてるのか貶されてるのか分からない。


雷蔵に関してはむしろこっちが申し訳ないというか、
もういっそわざとだよ、とかそんなことを言ったらどんな反応を示すのか見たくなってきてしまった。

……いやそんなことしたら三郎にぶん殴られそうだからやめよう。


そうして私はこれから雷蔵に口封じをし、図書室で勉強することになった……。