「……うーん、やっぱり多少動きが鈍ってるわね。
でもここからが踏ん張りどころよ。他の忍者達から学ぶか、自主練に励んでみなさい」
「はいっ! 山本シナ先生!」

うん、いい返事ね。
そう言いながら山本先生は裏山に走り去る私を見送ってくれた。

この世界を骨の髄までしゃぶり尽くして堪能してやるためには、私も最強のくノ一になってやろう!
私はこの間、そう決意したのだ。

・

「はぁ……さ、さすがに疲れた」

走りすぎか、足の筋肉がパンパンになっているのを感じる。
帰れるだけの体力はあるけど……休憩した方が良さそうだ。


森の中は危険がいっぱいだ。

死が待ち受けてない危険に意味はない。
木に乗り移りながらとにかく広い道に出よう……。


広い道に出るためのルートを考えていると、何やら大勢の気配がしてきた。


……しかも、なんだか不穏な雰囲気だ。
どうやらかなりの数の山賊とうちの六年生が競っているらしい。


これは気配を消さなきゃ私も巻き込まれそうな……。
でも先人から知識を得るのも手段の一つと先生は言っていたし……。

忍たま知識で知っている先輩はいないのだけど、それでも先輩の戦いは参考になるだろう。


「ぐぅ、あッ……!」

山賊の一人が槍で心臓を突き刺され辺りに血の飛沫が散り、その一部が私の顔面に付着する。



…………おっ、おええっ!


始めて見るけど、覚悟はしていた。それでも、あまりにも酷すぎる……。

そもそも私に人が殺せるのだろうか……?
少なくともああやって直接危害を与える武器で戦うのは無理だ。
この時代だから許されるけど、現代では立派な犯罪行為だし。


今こうして考えている合間にも、ここは血で塗れている。


そしてよく効く鼻に鉄の匂いと、嗅いだことのなかったおそらくあの匂いが充満している。

「……まずい、これは」


その後私は心置きなく吐きまくって気を失い、血みどろの先輩に抱えられながら忍術学園に帰った。