ナデシコ
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植物園でジェイドさんに出会った日から毎日同じ時間に植物園に通うようになった。ジェイドさんは結構マメな性格のようで、決まった時間に来ては育てている植物達のお世話をして立ち去る。その様子を隣で眺めるのが日課になっていた。何か会話をするわけでもなく、ただただジェイドさんの隣で過ごす時間が割と心地良くて好きだと思った。
「名前さんはゴーストなんですよね」
「…えっ、あっ、私もよくわからないんですけど、恐らくそのようです。ほら、何も触れないんですよ」
唐突に話しかけてきたジェイドさんに少しビクッとしたが、応えるように周りの物に触れてみせた。プランターに触れようとしたその手はスッと通り抜けてしまう。あぁ、こんなに綺麗な花に触れられないのはなんだか少し切ないな、なんて思いながらジェイドさんに向かって笑ってみせた。
「恐らく、というのは貴女がゴーストではない可能性も?」
「どうなんでしょうか…。私、何も憶えていないんです」
生まれた場所も家族のことも。何故ここにいるのかも。でも多分、こんな姿でここにいるんですから、私はもうこの世に存在しないんでしょうね。
ふふっ、と笑いながら自嘲気味にそう言い放つと、ジェイドさんは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。彼はこんな表情もするのか。学園で見かける時も植物園にいる時も飄々としていて、楽しそうではあるけれど、彼といつも一緒にいる同じ顔の男と比べてあまり感情が表に出ないクールな人だと思っていた。
「申し訳ありません。出過ぎた事を聞いてしまいましたね」
「いえ!いいんです。今のこの気ままな生活も楽しんでます」
その後は眉をハの字に寄せ申し訳なさそうにするジェイドさんといつも通りの時間を過ごしたのだった。