ごちゃまぜ
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昔からよくオリジナルのナイフを大量に注文していくお客さんがいた。父はその度にヴァリアー幹部の方に使って頂けるとは鍛冶屋冥利に尽きると嬉しそうに語った。私はその人のことを見たことはなかったので、どんな人なの?と聞いたことがある。
「お前と同じくらいの年齢だが、ヴァリアーで天才と呼ばれている人なんだぞ」
「ゔぁりあー?」
「そうだなぁ、お前にはまだ難しいか」
王子様のような人だ。
そう父は言った。王子様かぁ。会ってみたいなぁ、王子様。きっと素敵な人なのだろう。そう夢見たあの時から8年。私もすっかりお年頃。王子様の存在なんて忘れかけた頃のことだった。
「いらっしゃいま…せ」
「あり、新入りじゃん?」
父の頼みで渋々店番をしているところへ、前髪で目を覆い隠した同い年くらいの男の子が入ってきた。口元に笑みを浮かべコートのポケットに手を突っ込みブーツをかつかつと鳴らして歩いてくる。
「いつもの、取りに来たんだけど」
「あっ、えーと、お名前は、」
「ししっ、王子の名前わかんないとか笑える」
王子。この人が父が言っていた王子様なのか。確かに綺麗な金髪にティアラを乗せている。でも王子様というより、黒いコートに身を包んだ彼は、
「おい、聞いてんの?オレを無視とかやるなお前」
「あっ、ごめんなさい!今持ってきます」
悪魔みたいだ。そう思ったが頭から消し去った。父の大切なお得意様なのだ。出来上がっていたナイフを持ち彼の元へ急いだ。
「お待たせしましたっ」
「相変わらず良いセンスしてんな」
ナイフを確認する彼を見つめるが前髪が長くて表情が全然わからない。ついガン見してしまっていたらしい。彼は、「なに?」と呟いた。
「すみません…。髪、長くて見えるのかなって思って」
「ふーん」
興味なさげに呟いた彼は顔を上げ、ナイフを手から離し、その手で私の顎をクイッと持ち上げると上から私の顔を見下ろした。
「ヨユーで見えてっし。だってオレ、王子だもん」
チラッと見えた彼の挑戦的で涼しげな瞳が私の心臓をドクンと打ち鳴らした。彼はパッと手を離すと、「コレ、貰ってっから」と言い、何処にナイフをしまったのか手ぶらでドアへと歩き出した。
「オレ、ベルフェゴールだから。王子の名前ちゃんと覚えておけよ、新入り!」
ししし、と独特な笑い声とともに消えた王子様は私の心を一瞬で奪い、あの前髪の隙間から見えた彼の表情を忘れられない呪いをかけていった。そのベルフェゴールという名前の通り、彼は悪魔だったらしい。
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